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米経済が連続成長記録を更新:格差社会が一層鮮明に

7月になり、米国経済は連続成長した期間として史上最長を記録した。2009年の景気後退が終わって以来、米経済は連続して121ヶ月目の成長に突入した。(全米経済研究所NBERによると、2009年の景気後退は2009年6月に終焉した。)これまでの最長記録である連続120ヶ月間という記録(1991年3月〜2001年3月)を塗り替え、史上最長を更新している。2001年3月は、ドットコムバブルがはじけ連続記録が終わっていた。

しかし、この歴史的な経済成長の記録は、一見したほど輝かしいものではないとロイターが報じている。ロイターによると、この連続した経済成長により、富裕層はより金持ちになる一方で、中産階級はその圧迫を受けて苦境に立たされている。ロイターによると、米国における10億ドル以上の資産を持つ超富裕層は、2008年の267人から、2018年には607人と2倍以上に増えている。

UBS銀行の個人資産管理・超富裕層部門のトップ、ジョン・マシューズ氏は、「金持ちはより金持ちになり、さらにより早いスピードでより金持ちになっている。金持ち相手のモノやサービスへの消費意欲が高まっている」と語っている。

その一方、低所得者層の間における困窮や低迷のサインが表れている。全米でトップ20%の富裕層は、全米の個人資産の88%を保有している。これは2008年に起きたリーマンショック以前よりも高い割合となっている。それに対して、連邦政府からフードスタンプ(食料配給権)を受給している国民は3900万人を記録している。これはピークを記録した2013年よりは低下しているものの、2008年から40%の上昇となっている(同期間における全米の人口の成長率は約8%)。これは、米国の何百万人もの中産階級が没落し低所得者層へと転落したことを表している。

10年前、このような経済成長率は不可能と思われていた。アメリカの金融システムは、リーマン・ブラザーズやベアスターンズの倒産により風前の灯火となっていた。人々は、これら巨大金融機関の倒産により、資本主義そのものが永遠に機能しなくなるのではないかと恐れていた。しかし現在、前回の不況を乗り越えた富は増殖のスピードを早めている。

 

米国における富の所有比率の推移

青線:上位1%、紫線:次の9%、灰線:下位90%

(グラフ:ロイターより)

 

ロイターの報道では、アメリカで貧富の格差が広がっている例として次を挙げている:

 

カリフォルニアにある高級レストランFrench Laundryでのディナーは、10年前の一人240ドルから、35%アップして一人325ドルに値上がりした。これは同時期のインフレ率の約10%をはるかに上回っている。

アイビーリーグの一つコロンビア大学での学部生の授業料は、2008年には年間3万9000ドルであったが、現在は6万ドル。

米国株式市場のS&P 500は、過去10年間で3倍になった。

ヘッジファンド経営者のケン・グリフィン氏は、ニューヨーク市セントラルパーク近くの「ビリオネアー通り」にあるペントハウスを2億3800万ドルで購入し、米国の家屋購入価格として史上最高を記録した。

 

こうした価格の高騰が進む中、ニューヨークなどの家賃も、賃金の上昇率の2倍の速さで高騰が進んでおり、低所得者層をますます圧迫している。ニューヨークではホームレス・シェルターで寝泊まりする人口が、10年前より70%も上昇している。

民主党から出馬している大統領候補者たちの間でも、広がる格差社会は政策を討論する上での議題になっている。FRBが金利を上げはじめ、米中貿易戦争が続く中、最も苦しむことになるのは低所得者層であると多くが不安を抱いている。

しかし、FRBのパウウェル議長はマクロ経済を心配するものの、低所得者層の現状については全く気に止めていないようだ。パウウェル議長は次のように発言している:

 

「この長期間の経済回復は、これら(低所得者層)コミュニティーが何年も感じてこなかったような恩恵を受けるレベルにまで達している。かつては職を維持するのが難しかったような多くの人々は、新たにより良い人生の1ページを加える機会に恵まれている。これら全て、いかにこの経済成長を維持することが重要であるかということを明確に示している」

 

米国の中央銀行FRBの議長は、米国民の間では実際には格差が広がり、中産階級が低所得者層へと転落していることを全く無視した金融政策を進めているようだ。

 

Photo courtesy of FederalReserve.gov

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