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オールドメディアが伝えない海外のニュース

【連載】エプスティーン事件Part 1:司法と政界を揺るがす全米史上最大のスキャンダルに発展か

Jeff Epstein

米国現地時間の7月6日(土)、大富豪のジェフリー・エプスティーンが、未成年者に対する性的搾取の罪で再逮捕された。もともと2008年にフロリダ州で有罪判決を受け結審していた事件が、11年も経ってニューヨーク州で蒸し返され、今週の再逮捕劇となった。(日本の報道では、Epstein氏の名前を「エプスタイン」と報じているが、アメリカでは「エプスティーン」と発音する。)

アメリカには「ダブルジェパディー(米国憲法修正第5条における二重危険条項)」という憲法上のルールがあり、一度結審がついた同じ罪で、二度裁かれることはないという決まりがある。なぜフロリダ州で刑期を全うしたエプスティーンを、米連邦検察は「ダブルジェパディー」のルールを無視して再逮捕したのか?しかもなぜ何年も経った今なのか?

彼の再逮捕の背景には、彼の秘密の「ブラックブック(黒い手帳)」をFBIが入手したことと関係があるようだ。この「ブラックブック」には、ワシントンDCの大物政治家、ウォール・ストリートの富豪、ハリウッドの俳優や大物プロデューサー、各国の王族などの名前や連絡先が記録されていると報じられている。

エプスティーンは、未成年の少女を雇い、こうした大物たちを相手に秘密の売春組織を運営していたと報道されている。しかも、単に大物に売春を斡旋していただけではなく、顧客と少女たちの行為を録画し、脅しに使っていた可能性が出てきた。つまり、エプスティーンのメインビジネスは、売春ではなく恐喝だったという新情報が出てきた。さらには、エプスティーンの背後には諜報機関が存在しており、エプスティーンの「恐喝ビジネス」でアメリカや世界の大物たちの弱みを収集し、諜報機関が政治的な駆け引きや策略にそのネタを使っていたのではないかという、それが事実ならば米国の司法制度や政治そのものを揺るがす重大事件に発展しそうなのだ。

アメリカ版「もりかけ問題」と言われるロシアゲート疑惑も、今週その捜査報告書である「モラー報告書」の矛盾点が裁判所によって認定され、トランプではなくロシアゲート疑惑を仕掛けた張本人たちの方が逮捕されそうな雲行きだ。こちらの大事件が収束するのを待たずして、アメリカでは、そのニュースをさらに上回るスケールの「エプスティーン事件」の新情報が立て続けに報じられている。

先週土曜、エプスティーン再逮捕の一報が流れると、早速、元大統領のビル・クリントン氏がエプスティーンとの深い関係を否定する声明を出した(しかしその声明の中に不正確な情報が指摘され、それが意図的なウソだと非難され炎上している)。

そして今日金曜、フロリダ州の地方検事として、エプスティーンと司法取引を行い、異例の軽い量刑しか科していなかった、現トランプ政権の労働省長官アコスタ氏が、突然の辞任を発表している。

日本でも、時事通信が「米労働長官が辞任=富豪との司法取引に批判と報じているが、表面的な報道に留まっている。

 

* * *

 

2008年のエプスティーン有罪判決

 

エプスティーンは、2002年〜2005年の間にニューヨーク州とフロリダ州で数十人の未成年者を含む女性らに対する性的人身売買ビジネスと性的暴行を行なった罪で、2008年に有罪判決を受けた。しかし当時、フロリダ南部地区の地方検察が要求した量刑は異例に軽い内容であり、エプスティーンの共犯者であるセレブの顧客や知人はその身元が公開されることなく誰も起訴されていない。

連邦法の下では、2006年以前に性的人身売買を行なった罪で有罪となった者は最長40年の禁固刑が言い渡される。しかし、エプスティーンは有罪判決を受けたものの、捜査協力に合意したという理由で刑期13ヶ月の禁固刑と大幅に減刑されている。

この時、エプスティーンに対して「捜査協力」という異例の理由で起訴を取り下げ、この手の性犯罪としては例外的に軽い13ヶ月の禁固刑という量刑を請求したのが、当時のフロリダ州地方検事で、現在トランプ政権で労働省長官を務めるアレックス・アコスタ氏である。

2007年〜2008年にかけて、FBIはエプスティーンが犯した8つの罪について彼を有罪にするため、53ページにのぼる起訴状を準備していた。しかしエプスティーンが雇った有力弁護士チームが、当時のフロリダ州地方検事であったアレックス・アコスタ氏と面会し、おそらくそこでエプスティーンが「諜報機関の人間」という情報が持ち込まれたのだろう。

その後、検察と弁護士との間で司法取引が行われエプスティーンに対する起訴は取り下げられ、13ヶ月という短い刑期が科されるだけの処分となった。しかも13ヶ月の刑期期間中、エプスティーンは自由に刑務所の外へ出て彼のオフィスで勤務することが許された。

さらにこの司法取引の中には、「いかなる共謀者たち」に対しても訴追免除の資格が与えられていた。そして最も重要なのは、連邦検事たちがエプスティーンの犠牲者たちにこの司法取引の内容を知られないよう秘密にする約束をしていたことだ。しかし、この約束は法律違反である。なぜなら、犠牲者たちにはそのような司法取引を知る権利が「犯罪犠牲者人権法(Crime Victims’ Rights Act)」で保証されているからだ。つまり、アコスタ司法長官は、法律に違反していたことになる。

2008年、エプスティーンに対する異例に軽い量刑が下されたのは、当時、フロリダ州の地方検事であったアレックス・アコスタ氏がエプスティーンの弁護士の一人と司法取引を行った結果であると、当然アメリカの主要メディアは一斉に非難した。これに伴い、民主党や主要メディアは、アコスタ氏を労働省長官に指名したトランプ大統領を責め始めている。そして現地時間の今週金曜、事態は急展開しアコスタ長官は辞任を表明した。

民主党の議員もアコスタ氏の労働省長官就任を議会承認していたのだが、その事実は完全に無視し、民主党やメディアはトランプ批判とアコスタ氏非難の大合唱を行なっている

民主党の大物議員、チャック・シューマー上院議院は、1990年代に複数回エプスティーンから数千ドル単位の寄付金を受け取っていた事実が報じられているしかし彼はその不都合な事実には触れず、アコスタ長官は辞任するべきだと要求し、トランプ大統領はエプスティーンとの友人関係について「回答」するべきと非難している。

さらに野党民主党と主要メディアは、トランプ大統領とエプスティーンを関係づけようと印象操作している。ロシア疑惑によるトランプ政権の追及が頓挫しそうなので、次はエプスティーン疑惑に舵を切ったようだ。

CNNの番組“OutFront“に出演した下院司法委員会議長のジェリー・ナドラー議院(民主党ニューヨーク州選出)は、トランプ大統領は労働省長官アレクサンダー・アコスタ氏のような「悪党」を容認していると非難している

 

エプスティーンの再逮捕

彼の違法ビジネスに関与していた人たちは、2008年の判決を受けてホッとしていたはずだ。これで自分たちに火の粉が降りかかってくることはないと。しかし、先週末になってエプスティーンが再逮捕された。

最近、エプスティーンが海外から自家用ジェットで米国に戻ってきた際、連邦検察局は彼を逮捕し彼の自宅の家宅捜索を行なった。そして彼を性的人身売買(sex trafficking)と共謀(conspiracy)の容疑で逮捕した

「ファンドマネジャーであるジェフリー・エプスティーンは、彼の富と権力を利用して数十人に上る若い女性を何年間にもわたって性的に搾取してきた。そうした行為はマンハッタンにある最も巨大な大豪邸の一つである彼の自宅で行われ、毎回現金で数百ドルを女性に支払い、そして彼女らが他の女性をエプスティーンに紹介するとさらに数百ドルの紹介料を支払っていた」と米検察官は発表した。

そして今月、連邦検事は、彼を性的人身売買(sex trafficking)と共謀(conspiracy)の容疑で起訴した。連邦検事は、エプスティーンを長期刑に処するつもりであり、彼のマンハッタンの自宅を没収するつもりだ。

この起訴状は、今週月曜になって一般公表された。その何日も前に、エプスティーンは海外から米国に戻ってきたところを連邦政府職員らに逮捕されている。その逮捕の数時間後には、連邦政府職員が彼のマンハッタンの自宅をバールでこじ開け家宅捜索を行なった」。

 

エプスティーンを起訴したのはニューヨーク南部地区担当の地方検察局。この地方検察局が起訴した事件の有罪率は90%と高い数字を誇っている。しかも興味深いのは、このニューヨーク南部地区担当の地方検察局の検察官として、元FBI長官ジェームス・コーミーの娘が勤務しているということだ。

「元FBI長官ジェームス・コーミーの娘、モーリー・コーミーが、小児性愛者として前科のあるジェフリー・エプスティーンに対するこの新たな犯罪事件を担当する検察官の一人だと報じられている。この詳細をCNNが報じた。情報源とされる人物は、「この事件に詳しい」人物と報じられている」。

 

司法界コミュニティーでは、誰もが各自の立場、意見、利害関係があり、それが彼らの判断や行動に影響してくる。当然、ニューヨーク南部地区担当の地方検察局も彼らなりの政治的意図があることが想像できる。

 

エプスティーン事件Part 2」へ続く。

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