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オールドメディアが伝えない海外のニュース

【連載】エプスティーン事件Part 5:どの国の諜報機関とつながっているのか?

エプスティーン事件Part 2」で報じたように、先週、電撃的な辞任発表を行った労働省長官のアコスタ氏は、2008年当時、マイアミの地方検事としてエプスティーンの量刑を大幅に減刑した人物。そのことがきっかけで、今回の辞任劇となった。

エプスティーン事件Part 1」を読む。

エプスティーン事件Part 2」を読む。

エプスティーン事件Part 3」を読む。

エプスティーン事件Part 4」を読む。

 

2017年にトランプが大統領に就任する際、彼の政権移行チームが、労働省長官の候補者として彼に面接を行なったとき、「エプスティーンの事案は、(労働省長官の指名に関する上院公聴会において)問題になるか?」とアコスタ氏に質問している。その時、アコスタ氏はこの質問を深刻に捉えることなく、「私はエプスティーンが諜報機関に所属していると聞かされた。そのため、彼の事件には触れるなとも言われた」と回答し、政権移行チームも納得していた。

 

フロリダ州の地方検事であったアコスタ氏が、誰からエプスティーンが諜報機関に所属しているという情報を聞かされたのか、そして誰から「彼の事件には触れるな」と言われたのか、本人は明らかにしていない。

 

しかし、2018年5月マイアミのヘラルド紙が重要な情報を突き止めた。2008年1月23日、アコスタ地方検事とFBIがワシントンDCで面会しており、エプスティーンの事案に関してFBIが司法省と直接関わっていたことが明らかになっている。

 

この事実から、地方検事を説得するだけの根拠のある情報を提供した情報源は、FBIである可能性が非常に高い。しかし、FBIとエプスティーンがどのような関係にあるのかは依然として不明である。

 

イスラエルのスパイ機関モサドの協力者?

 

元CIA職員で、スパイ対策および軍事諜報の専門家であったフィリップ・M・ジラルディ氏もまた、エプスティーンが諜報機関の代理人であったという説を唱えている人物である。しかも、具体的にイスラエルの諜報機関モサドがエプスティーンの背後で支援していたのではないかと推定している

 

CIAやロシアのスパイ機関FSBも可能性としてはあるが、エプスティーンのような人物をエージェントとして抱える特別な動機がないとジラルディ氏は言う。彼は次のように分析する:

 

そうすると、残るはイスラエルのモサドとなる。イスラエルは、欧州および米国で影響力を発揮できるような、権力者たちに近いハイレベルのエージェントを長期間にわたって抱えることに強い関心があることで知られている。エプスティーンとイスラエルの諜報機関とをつなげる人物は、ギスレーン・マックスウェルである可能性が現実的である。彼女は、エプスティーンが若い女性たちを見つけ出すのに主要な役割を果たしたと言われている人物(詳しくは「エプスティーン事件Part 4」に掲載)。

 

ギスレーン・マックスウェルは、ロバート・マックスウェルの娘である。ロバート・マックスウェルは、1991年に起きた不可思議な状況で死亡、もしくは暗殺されている。彼はアングロサクソン系ユダヤ人のビジネスマンで、経歴はエプスティーンのように非常に国際的だった。数百万ドル(数億円)の資産規模があり、モサドと持続した関係があると言われ非常に論議を呼ぶ人物であった。彼の死後、イスラエル政府は彼を国葬にしており、その葬儀にはイスラエルの諜報機関の現職および過去のトップを務めた6名が参加しただけでなく、当時の首相イツハク・シャミールが「彼は、今日私が語ることができる以上に多くのことをイスラエルのために成し遂げた」と弔辞で褒め称えている。

 

* * *

 

エプスティーン事件Part 1」でも報告したように、エプスティーンは「ブラックブック(黒い手帳)」に交友関係のある人物らの連絡先を記録していた。彼の「ブラックブック」の中身は、エプスティーンの使用人であった人物が密かにカメラで撮影していたことが判明しており、捜査官はそのコピーを入手している。エプスティーンの「ブラックブック」に記録されていた連絡先は、報道されているだけでも次のような有名人ばかりである:

 

  • トランプ大統領と関係ある14名(元妻イヴァナ、娘イヴァンカ、現在の妻メラニアを含む)
  • サウジアラビアのバンダー(Bandar)皇太子
  • トニー・ブレア元英国首相
  • ジョン・ハンツマン(実業家であり政治家。現在、駐ロシアの米国大使)
  • テッド・ケネディー元上院議員
  • ヘンリー・キッシンジャー
  • デービッド・コック(大富豪。かつて副大統領候補として立候補した)
  • エフード・バラック(イスラエルの政治家、元軍人)
  • アラン・ダーショウィッツ(米国の弁護士で大学教授)
  • ジョン・ケリー(米国の大物政治家。大統領選にも出馬。国務長官を歴任)
  • ジョージ・ミッチェル(米国の弁護士、実業家、政治家。元上院議員)
  • デービッド・ロックフェラー(ロックフェラー一族の第3代目。チェース・マンハッタン・コーポレーションのCEOと会長を務めた)
  • ダスティン・ホフマン(俳優)
  • エリザベス女王
  • サウジアラビアのサルマン国王
  • エドワード・ドゥ・ロスチャイルド(フランスのロスチャイルド家の一員)

 

 

元CIA職員のジラルディ氏は、さらに次のように推測する:

 

エプスティーンが持っていた、こうした欧米の上層階級に広がる交友関係を、モサドは活用したいと考えて当然である。そのために、モサドはエプスティーンと協力し、彼が上層階級の知人を連れてプライベート・ジェットで世界を旅し、彼らを豪華な食事とワインでもてなし、女性をあてがうといった手配を行っていたと考えられる。そしてもし彼らが(モサドに)協力することを拒めば、未成年の少女らとの性行為の写真や動画で脅迫するのだろう。

 

エプスティーンの背後にある闇社会が、どこまでアメリカの司法機関の手で捜査され、明るみになるのか興味が尽きないところだが、元CIA職員のジラルディ氏はその期待は裏切られる可能性があると言う:

 

クリントン元大統領やトランプ大統領のようなトップの政治家たちを守ろうとする活動は行われるだろう。また、イスラエル政府の関与についても捜査されることがないよう動き回る人たちがいるだろう。これは通常営業の範囲内だ。(略)しかし今回、もし、それが本当にイスラエル政府の行なった諜報活動だとしたら、この事件をもみ消すことは難しいかもしれない。というのも、幼児性愛趣味の側面が世間にばれてしまい、民主共和問わず世間全体が怒り心頭だからである。

 

チャック・シューマー上院議員は、自分のことを米上院議会でイスラエルを守る「プロテクター」と呼んでいる。そしてアコスタ労働省長官の辞任を声高に叫んだ人物である。しかしもしイスラエルがこの事件の黒幕であると判明すれば、彼は態度を豹変させることになるだろう。

 

 

試されるアメリカの司法

 

元CIA職員のジラルディ氏が懸念するように、アメリカの司法がエプスティーンの闇、つまり彼と交友関係にある世界の指導者の罪にどこまで切り込むことができるのかが最大の焦点となる。もちろん、闇から闇へと葬られてしまう可能性は十分ある。

 

すでに、エプスティーンがこれまでに取った行動の中には不可解なものがあり、アメリカの司法がエプスティーンの庇護者らと「手打ち」を決めている証拠なのではないかと指摘されている。

 

疑問1:なぜエプスティーンはパリからアメリカに戻ってきたのか?

 

エプスティーンは7月6日に、なぜ数週間も滞在していたパリからニューヨークに戻ってきたのか?彼がニューヨークに戻ってくる3日前、ニューヨークの連邦控訴裁判所は、エプスティーンが行なってきた行為に関する2000ページにのぼる裁判記録を公開するよう命じた。これら裁判記録は、2008年にアコスタ地方検事(当時)が量刑を減刑した時のものではなく、2015年にバージニア・ロバーツ・ジフレが、エプスティーンと彼の共犯者とされるギスレーン・マックスウェル、アラン・ダーショウィッツ、そしてアンドリュー王子に対して起こした訴訟に関するものである。

 

この2015年に起こされた訴訟は、起訴したジフレに有利な形で2017年に円満解決した。しかしこの時に法廷に提出された文書は全て非公開となっていた。それに対して、マイアミの地方新聞のヘラルド紙が、「司法の背徳(Perversion of Justice)」と名付けられた調査プロジェクトを行なっている中で、今年1月これら文書を公開するよう法廷に訴えた。下級裁判所は、ヘラルド紙の訴えを退けたが、控訴裁判所が一転して訴えを認め、文書の公開を命じた。

 

これら文書には、エプスティーンとマックスウェルが未成年の少女らをリクルーティングして国際的な売春ビジネスを行なっていたことを示す証拠が含まれていると考えられる。その文書を公開する裁判所命令が下りた3日後に、エプスティーンがニューヨークに戻ってきた理由は何か?この裁判所命令が下りたことは、エプスティーンも弁護士から聞かされて知っていたはずだ。つまり、彼は逮捕されるとわかってニューヨークに戻ってきたことになる。パリから、カリブ海のプライベート・アイランドや、アメリカの司法権が及ばない別の国に移動することもできたはずなのにそうしなかった理由は何か?

 

 

疑問2:なぜ証拠となるプライベートジェットを1ヶ月前に売却したのか?

 

エプスティーンが、自分が逮捕されることを事前に知っていたと思われるもう一つの証拠がある。それは、彼がクリントン元大統領などを乗せて世界を飛び回っていたプライベート・ジェットを、逮捕される1ヶ月前(2019年6月)に売却していたことだ。これは証拠隠滅に当たる。また、彼がパリからニューヨークに戻ってくる1ヶ月以上前に証拠となるプライベートジェットを売却していたということは、裁判記録が公開される命令が下りるよりもずっと前に、捜査の手が自分に伸びていたことを知っていたことになる。彼が政界や財界に持つ広い交友関係から、捜査情報が彼に伝わっていたことは十分考えられる。

 

もしかすると、クリントン元大統領の関係者から知らされた可能性もある。エプスティーンはクリントン元大統領を27回も自らのプライベートジェットに乗せていたことが明らかになっており、二人は非常に近い関係であったことがわかっている。

 

エプスティーンが、彼のプライベートジェット「ロリータ・エクスプレス」にクリントン元大統領と俳優のケビン・スペイシーらを乗せて、エイズ・プロジェクトのためにアフリカに飛んだ時のことを、ニューヨーク・マガジンが2002年に報じている。その中で、エプスティーンがいかにクリントン元大統領を神のようにあがめていたかがわかる:

 

彼の目には、クリントンは“ポリティカル・アニマル”が進化した果ての最高形態にある『種(しゅ)』を意味していた。彼がこのアフリカ・ツアーの間に彼をまじかに見ることができたことは、サファリで希少な獣を目撃することに近いことだった。アフリカから戻って、エプスティーンは知人にこのように話している。「もし君がダウンタウンの14ストリートのジムでボクサーをしていて、そこにマイク・タイソンが入ってきたとしたら、君はどのような顔をするだろうか。それは、部屋にクリントンが入ってきたときに外国の首脳が見せた顔と全く同じ表情をするだろう。クリントンは、世界で最も偉大な政治家だ」。New York Magazine

 

 

疑問3:11年も前に一度は結審したエプスティーンの性犯罪が、なぜ今になって蒸し返されているのか?

 

これには、一地方新聞のマイアミ・ヘラルド紙が、11年もたった今になってエプスティーンの事件について立て続けにスクープを連発していることと関係している。誰か事情を知る人物や組織が、マイアミ・ヘラルド紙に情報をリークし、スクープを書かせているような構図となっている。この件の「ディープ・スロート」は誰なのか?なぜ彼らは、エプスティーンの犯罪を今になって蒸し返そうとしているのか?

 

表には報じられない裏の世界で、エプスティーンを中心に権力者たちによる情報戦が行われているのは間違いない。

 

 

疑問4:エプスティーンの公判を担当する判事はクリントン大統領が指名した人物。これは偶然なのか?

 

クリントン元大統領は、エプスティーンのプライベートジェットに27回も搭乗していながら、それを合計4回しか乗っていないと先週、嘘の声明まで発表した。クリントン元大統領は、エプスティーンと最も近い交友関係にあった人物の中の一人であることは疑いようがない。

 

しかし、エプスティーンの公判を任された判事であるリチャード・バーマン氏は、1998年にクリントン大統領によって指名された人物である。これは偶然なのか、それともすでに仕組まれているのか、裏で手打ちが行われたのではと疑う人たちがいるのも納得だろう。さらに、エプスティーンを逮捕したニューヨークの検事の中には、コーミー元FBI長官の娘モリーン・コーミーもいる。親クリントン派の人物らが、捜査関係者そして判事にいる状況で、エプスティーンやクリントン元大統領への捜査が公平に行われるとは到底考えられない。

 

被害者の女性たちが証言することを申し出ていることや、数多くの写真の証拠が検察によって押収されていることからも、エプスティーンを有罪にするのは容易だ。しかし問題は、彼の交友関係の中で、上流社会の人物らをどこまで訴追できるかということだ。もしアメリカの司法がエプスティーン以外に誰も逮捕・訴追しないとなれば、これまで以上に司法に対する信頼は失墜する。

 

ニューヨークタイムズ氏の記者、マイケル・ゴールドバーグ氏は次のように報じている

 

月曜に提出された勾留記録の中で、連邦検察は土曜夜に行われたエプスティーンの自宅における捜査で押収されたいくつかの証拠を列挙した。その中には、何百もの(何千の可能性がある)写真とコンパクトディスクが含まれる。それら写真は未成年と思われる少女たちが性的に挑発的な格好で写っており、コンパクトディスクには手書きで「少女のヌード写真」といったタイトルや、「若い[名前]+[名前]」といった名前が書かれていた

 

当初は、エプスティーンがそのような重要な物証を、カリブ海のプライベート・アイランドの自宅ではなく、(アメリカの捜査当局の手が入りやすい)マンハッタンに保管していたことが不注意すぎて驚いた。しかし、これは彼がどれだけ守られていて安全であると感じていたことのサインなのかもしれない。(2003年にすでにエプスティーンについて報じたジャーナリストの)ヴィッキー・ワードは次のように言う。「私の頭の中にはずっとこの大きな疑問が残っている:ジェフリー・エプスティーンの力の根拠は何なのか?」もし私たちが真実を知ることがあれば、私たちはどれだけ私たちの指導者たちが腐敗しているかを知ることになるだろう。

 

 

トランプへ疑惑を誘導する民主党?

 

全米の主要メディアも、エプスティーン事件について連日報道しているが、クリントン元大統領ではなく、トランプ大統領とエプスティーンを関係づけようとする偏向報道が行われている。NBCなどは、クリントン元大統領が27回も「ロリータ・エクスプレス」に乗っている事実を無視し、クリントン元大統領がエプスティーン逮捕の直後に発表した声明を引用し、「彼は4回だけエプスティーンのプライベートジェットに乗ったことがある」と報道している。

 

エプスティーンは、ニューヨークとフロリダに豪邸を持ち、アメリカ東海岸の社交界に幅広い人脈を持っていた。もちろん、トランプとも古い知り合いで一緒に撮影された写真も残っている。大統領選挙に向けて、反トランプの民主党や主要メディアは、第2の「ロシアゲート疑惑」としてエプスティーン事件を利用した反トランプ・キャンペーンを行うことが考えられる。

 

NBC系列のケーブル・ニュース局MSNBCは、早速、トランプ氏とエプスティーンのつながりを示す動画を報じている。これは1992年に撮影されたもので、トランプ氏とエプスティーンがパーティー会場で女性の外見を品評している様子を撮影したもの。(記事冒頭の写真はこの動画から。)

 

 

さらに、ケイティー・ジョンソンという女性が、2016年6月、トランプ大統領に対する訴訟を起こしている。彼女の提出した訴状によると、1993年、エプスティーン主催のイベントで、トランプ氏に複数回レイプされたと訴えている。当時、彼女は13歳だったという。

 

2002年、ニューヨーク・マガジンはトランプ氏をインタビューし、そこでエプスティーンについて質問している

 

私はジェフを15年前から知っている。素晴らしいやつだ・・・一緒にいてとても楽しい人物だ。私と同じくらい美しい女性が好きだと言われている。彼の好みは、私のよりもずっと若い方だが。それは間違いない。ジェフリーは私生活を満喫している。

 

こうした過去のつながりや訴訟問題を元に、大統領選挙キャンペーンが進むにつれてトランプ降ろしのメディア・キャンペーンが繰り広げられる可能性は高い。しかし、トランプは、エプスティーンが2008年に有罪判決を受けた3年後の2011年に、彼の会員制リゾート施設「マー・ア・ラゴ」からエプスティーンを追放している。もしエプスティーンが、トランプを恐喝できる材料を持っていたとしたら、そう簡単に彼を追放することはできなかったはずだ。

 

「エプスティーン事件」の闇はどこまで深いのか、そしてその闇が全て暴かれることはあるのだろうか。トランプ降ろしに躍起になっている民主党や主要メディアには全く期待できない。しかし、アメリカの司法、政治、そして良心が試されている。

 

*この連載は本記事で一旦終了いたします。しかし今後も新たな展開があり次第、続報をお伝えします。

 

Photo via MSNBC

 

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