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富豪のヘッジ・ファンド・マネジャー、ポール・シンガー氏が次の市場暴落へのヘッジ取引を開始

Paul Singer

ヘッジ・ファンドであるElliott Managementの創業者でCEOでもあるポール・シンガー氏は、次に来る市場暴落に備えて投資家たちから追加資金を集めているとフィナンシャル・タイムズ(FT)紙が報じた。同氏は市場暴落が目前に迫っていると予想しており、市場が暴落したタイミングで大量の買いを行うチャンスがあると読んでいる。シンガー氏自身もビリオネアーの富豪。

 

Elliott Managementは383億ドルの資産をアクティブ運用している。今夏、キャッシュ(現金)を積み増す作業を行い、8月には共同投資していた20億ドルのファンドを閉鎖して複数の企業を未公開企業へと戻している。

 

そして現在、シンガー氏は、景気サイクルが変わる前に、新たな資金調達ラウンドにおいて追加で50億ドルの資金を集めようと奔走しているとFT紙は報じている。

 

「彼のヘッジ・ファンドは『資金引き出しストラクチャー(drawdown structure)』を活用し、メインのファンドへ資金を注入しようとしている。これは、プライベート・エクイティ企業がよく使う手法であり、アクティブ運用するファンド・マネジャーの間でますます人気が高まっている」と事情に詳しい複数の人物は語った。

 

 

『資金引き出しストラクチャー(drawdown structure)』により、投資家らは、資金をElliott Managementに前払いする必要がなく、代わりに投資機会が発生するたびに資金の支払いが要求される仕組み。

 

Elliott Managementは同様の仕組みを、市場が下落した2017年にも活用していた。これにより資金調達を行い、株を底値で買い入れていたようだ。当時、シンガー紙は、投資家に宛てた書簡の中で、同社は投資家らの手持ちの流動性が枯渇する前に、資金を調達したいと申し入れていた。

 

FT紙は、Elliott Managementがキャッシュ(資金)を調達するのに奔走していることは、「シンガー氏が市場の暴落を予期している」サインだと報じている。自身もビリオネアーの富豪であるシンガー氏は、グローバル金融市場が現状に満足してしまっていることに積極的に発言を行っている。最近では、世界経済が「過去最高のリスクにより重大な下落」に向かっていると予見している。

 

「グローバル金融システムは、負債という観点から最高リスクの先端に向かっている。世界の負債総額は過去最大であり、デリバティブも過去最大である。そして今日、我々がいる現状に到達するために、(世界の中央銀行が行っている)金融緩和で注ぎ込まれた巨額の資金全てが使われた」と7月に行われたApen Ideas Festivalのパネル討論で語った。

 

一方、国際決済銀行(BIS)の財政および経済部門トップであるクラウディオ・ボリオ氏は先週日曜、1本の報告書を公開した。その中で、マイナス金利がますます受け入れられている状況は、「漠然とした不安(vaguely troubling)」レベルに達していると警告している。

 

さらにボリオ氏は、財政政策の効果は深刻に減衰しており、次に起きる世界規模の経済停滞に対抗できないかもしれないと同報告書に記している。

 

財政政策の作戦が行える余地はさらに狭まっている。もし経済停滞が実現のものとなれば、財政政策は、とりわけ行動を起こす余裕(訳者注:まだ金利を下げる余地)が残されている国々が堅実に財政政策を実施するという手助けが必要となるだろう。

 

「中央銀行のための中央銀行」と言われている国際決済銀行(BIS)は、アメリカのFRB、欧州中央銀行のECB、そして中国人民銀行が最近行った金融緩和により、世界中で金利が押し下げられていると指摘しており、これによりマイナス金利の取引可能債券が17兆ドル以上にまで膨れ上がっている。この現象は「日本化(Japanification)」と揶揄されている。

 

ボリオ氏は社債市場についても警告を発している。特に、「ローン担保証券=CLO(collateralized loan obligations)」と呼ばれるレバレッジのかかったローンが非常に不安定であり、これがグローバル金融システムにとって「明らかな脆弱性を示している」と指摘している。

 

中央銀行の「親玉」である国際決済銀行(BIS)が、世界の金融市場が「漠然とした不安(vaguely troubling)」レベルに達していると報告書で発表しているのは、ビリオネアのヘッジ・ファンド・マネジャーに対してのみならず、個人にとっても心穏やかにはいられない警告だ。

 

シンガー氏が現在、キャッシュをかき集めて準備金を積み増ししているのは、アメリカ国内においてローン担保証券(CLO)により脆弱性が高まっている社債市場が暴落したタイミングで買いを入れるためのようだ。

 

ブルームバーグが行ったシンガー氏へのインタビュー動画は以下で視聴できる:

 

Screenshot via Bloomberg

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