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オランダ検察がABNアムロ銀行を捜査:反資金洗浄法およびテロ資金対策法に違反の疑い

ABN Amro

過去2年間にわたってヨーロッパの金融機関の間では資金洗浄に関するスキャンダルが後を絶えない。各金融機関が定めているコンプライアンスの抜け穴を悪用したスキームや、EU全体の規制枠組みを悪用した資金洗浄犯罪が報じられ、こうした法制度の抜け穴が元ソ連の犯罪者などに悪用されていることが報じられてきた。中には各国の首脳陣らが悪用している可能性もある。例えば、ロシアのウラジミール・プーチン大統領の家族と関係のある人物らが関わっていると報じられている資金洗浄疑惑もある。

 

そしてヨーロッパでまた新たに資金洗浄疑惑が報じられたのがオランダのABNアムロ銀行だ。ABNアムロ銀行は長年にわたって業績悪化に苦しんでおり、2008年の金融危機の際にオランダ政府が救済して以降、いまだに株式の過半数をオランダ政府が保有している。ABNアムロ銀行は、反資金洗浄法およびテロ資金対策法に違反した疑いで犯罪捜査を受けていることを発表したとブルームバーグが報じた。具体的には、オランダ国内の反資金洗浄法とテロ資金対策法に違反した可能性があるとして捜査を受けている。

 

本日木曜、アムステルダムの取引所が開けると、ABNアムロ銀行の株価は最大10.3%急落し直近の3年間で最大の下げ幅を記録した。同行の社債も下落している。

 

Via MarketWatch

 

今後数週間、あるいは数カ月間にわたってABNアムロ銀行の株は投げ売りが加速する可能性がある。KBWのアナリストであるジャン・ピエール・ランバート氏は、捜査を取り巻く不確実性は、今後ABNアムロ銀行の株価に重くのしかかり続ける可能性があると指摘する。ダンスケ銀行を震源地にして欧州全体を揺るがせている資金洗浄疑惑のように、捜査員たちはまだ公開されていないが怪しい資金の流れを発見したと報じられている。それが単なる脱税なのか実際の資金洗浄が行われた証拠なのかは不明である。

 

「株主にとって非常に多くの不確実性が横たわっている。大きな疑問は、この案件において実際に資金洗浄行為が行われたのかどうかということである。検察による捜査は、まさにその点について事実を明らかにすることに注力しているのだろう」とKBWのアナリストであるジャン・ピエール・ランバート氏は電話でのインタビューに語った。

 

この捜査は、まだ不明な点が多いようだ:

 

オランダ検察による捜査は、特に北ヨーロッパの金融機関の間で行われている一連の資金洗浄捜査に新たに加えられた事案であり、不法資金の流入に対抗しようとする同地域の活動に脆弱性があることを改めて明らかにした。エストニアのダンスケ銀行の元トップが、今週月曜に自宅から行方不明になっていたが、死亡していることが見つかった。同銀行のエストニア支店は2200億ドルの資金洗浄疑惑の渦中にある。火曜日、ドイツ国内にあるドイツ銀行AGは、この疑惑において同行が果たした役割に関して捜査当局による訪問を受け入れている。

 

今週木曜、オランダの検察官は、ABNアムロ銀行は疑わしい取引を報告することを怠り、顧客の身元を十分に確認することを怠った容疑で捜査対象となっていると語った。一方、ABNアムロ銀行も、オランダの反資金洗浄法およびテロ資金対策法に関する捜査を受けていることを別途発表したが、それ以上の詳細については公開していない。

 

ABNアムロ銀行は、オランダ当局による制裁金が課される可能性を警告しているが、制裁金がどれほどの金額になるか予測することは不可能であると発表している。

 

しかし興味深いのは、この捜査案件においてオランダ政府にとって利益相反が起きていることである。もしABNアムロ銀行の株価が暴落すれば、オランダ政府が保有している56%にのぼる同行の株式を売却することは困難になる。4年前の2015年にABNアムロ銀行がIPOを果たした際、オランダ政府はなるべく迅速に政府が保有する同行の株式を売却することを約束している。

 

また、反資金洗浄法に違反したオランダの銀行は、ABNアムロ銀行が初めてではない。ABNアムロ銀行よりも規模の大きい競合先であるINGグループは、昨年、反資金洗浄法違反の容疑を示談で解決するため、7億7500万ユーロの制裁金を支払うことで合意している。ファイナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、この一件以来、オランダ国内の金融機関はコンプライアンスに費やす予算を増額する約束をしていた。ABNアムロ銀行も、「リテール・バンキング部門、クレジットカード部門、そして小規模事業者向けローン部門における運用プロセスを厳格化する」ために2億2000万ユーロを拠出すると発表していた。

 

しかし資金洗浄疑惑が明らかになるに伴い、ABNアムロ銀行の上層部は身の危険に晒される可能性がある。数年前にオランダ政府が行った同行の救済を受けて、ABNアムロ銀行の複数の行員らが立て続けに疑わしい自殺で死亡している。今週初めには、ダンスケ銀行エストニア支店の元CEOが、同行が関わる資金洗浄疑惑の最中、「自殺」しているのが発見されている。

 

ダンスケ銀行の元CEOが自殺:欧州を席巻中の大規模な資金洗浄犯罪の捜査が進む中

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