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欧州中央銀行(ECB)で内部告発:ドラギ総裁の金融政策は異常と関係者らが書簡を発表

Mario Draghi

アメリカではCIA職員がご乱心を起こして、現政権に対するいわゆる「内部告発」を行なっているが、ヨーロッパでは中央銀行の元職員たちが欧州中央銀行(ECB)の間違った金融政策を内部告発する書簡を発表した。

 

先週金曜、欧州中央銀行(ECB)の元幹部らが、ECBによるタガが外れた金融政策を批判する書簡を連名で発表した。それによると、ECBは、「誤った診断に基づいて」おり、その独立性を終わらせるリスクがあると主張している。この書簡は、先月ECBが行なった一連の大規模な緩和政策に対する批判となっている。その緩和政策には、「上限がない量的緩和(open-ended QE)」が含まれており、同中央銀行の上層部の間でかつてない反対意見を招いている。その結果、ドイツ、フランス、オランダが主導する「反対派閥」がECB内部で生まれている。一方マリオ・ドラギ総裁はEU圏内で財政破産した周辺国のための中央銀行を代表する存在になっていることが鮮明化している。彼が導入したマイナス金利政策は、欧州のレガシー金融システムを崩壊させてしまっていると批判されている。

 

ファイナンシャル・タイムズ(FT)紙は、ECBでこうした内部告発が行われるのは稀であるとし、今月末にマリオ・ドラギ総裁の後任として就任することが決まっているクリスティーヌ・ラガルド氏が、もしEU経済圏の経済減速を受けてさらに金融政策を緩和する決断を行えば、この内部対立を引き継ぐことになると報じている

 

One River Asset Managementの創業者で同社のCEO兼CIOであるエリック・ピーターズ氏(ここでも紹介した)は、ドラギ総裁の金融政策は混乱した社会主義的な要素があり、一部の人々はそれを大歓迎して「伝説的」な金融政策と称える者もいるが、ヨーロッパの労働者階級を貧困に陥れたのは、まさに彼の金融政策であると指摘する。さらに、ドラギ総裁に対して起こされた過去稀にみる反逆について、まさにこれは終焉を迎える前の救済を求める「内部告発」の試みであるとコメントしている。その終焉が何を意味するのかについて、「その他の中央銀行と同様、ECBは資本(マネー)を生み出すコントロール機能の終焉を迎えるという脅威にさらされている」と内部告発者らは説明している。

 

さらにエリック・ピーターズ氏は次のように語っている:

 

これは勇気がいる行為だったし、愛国心がいる行為だった。彼らは陰で行動しながら、事実を検証し、彼らが正式そして非正式な立場で目にしてきた様々な会話、テキストメッセージ、行動パターンを様々な角度から観察し、隠蔽しようとする試みを検証した。彼らは主要機関の歴史、その委任内容、チェック・アンド・バランスの制度について過去を振り返り、過去の前例を調べた。そして彼らはこの書簡を執筆した。当然、彼らは世間の反発や組織による反撃を予想していた。どんな内部告発者もこうした反撃を予想する。たとえ証拠がどんなに説得力があっても、人々は自分たちが見たいものしか見ないし、聞きたいことしか聞かないし、信じたいものしか信じない。

 

しかし時代が経つにつれ、内部通報者というのは最も楽観主義的であり、権力や世論に逆らい、それにより生じる結果を受け入れるようになっている。透明性こそが救済のための前提条件であることを知っているからだ。

 

「元中央銀行職員そして欧州市民として、私たちはECBが継続して非常事態にあることや懸念が高まっていることを目撃している。私たちが抱く懸念は、特に次の金融政策に関する側面と関係している」と6名の元ECB幹部らは金曜に発表された書簡の中で記している。そして続けて、良かれと思ってECBが行なっている様々な政策が、実は公共の利益を害し、公共の信頼を裏切っていると説明している

 

「過去数年、ECBは、たとえば1.5%というインフレ率が受け入れられないと考え、物価安定の当初の定義をデファクトから変更してしまった」と内部告発者らは記している。さらに、彼らが主導するのではなく奉仕すべき社会が、彼らに対して設定している委任内容を変更してしまうことで、(これら市民による選挙で社会の代表者として)選ばれているわけではない中央銀行職員が、欧州を脅かしていると警告している。

 

ここから、この内部告発者たちはECBによる行動がもたらす予期せぬ結果について詳細を記している。それは、最終的にヨーロッパの経済を弱体化し、企業のダイナミズム、生産性、平等性、社会をも侵食してしまうということだ。

 

「これらが起きるということは、中央銀行の独立性(それが法律で定められたde jureであるか、事実上のde factoであるかに関わらず)に対しても高いリスクを示す」と内部告発者たちはその書簡の中で結論付けている。彼らは、道を見失ってしまったECBという組織を救いたいと考えており、彼らの告発に対して反撃があることにも準備している。(太字強調は訳者)

 

エリック・ピーターズ氏が出演したこのポッドキャストはここで聞くことができる

 

 

これらECBの元幹部たちが行なった内部告発の書簡は、ブルームバーグが最初に報じた。原文(英語)はここで閲覧することができる

 

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