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WeWorkの社員4000名が解雇に直面:12億ドルの「退職金」を得たニューマン氏に対して高まる不満

Lord & Taylor

WeWorkの前CEOアダム・ニューマン氏は、IPO前に自社株を売却するなどして7億ドルを手にしていたが、今週報道されたSoftBankによる救済策により、さらに12億ドルを手にすることになった。彼の後任として就任した2人の共同CEOたちとも、数百万ドルの退職金を支払うことで合意に至ったと報じられている。

 

フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の報道によると、今週、WeWorkの経営権を取得したSoftBankは、抜本的なビジネス改革の一環として最大4000人の社員を削減する計画である。このSoftBankの経営再建策を直接知る複数の人物らによると、WeWorkが世界に抱える約1万4000名の社員のうち3分の1未満にあたる人数を削減する計画である。そのうちの約1000名は清掃員などのスタッフであり、WeWorkは今後、これら業務を外注していく計画である:

 

「その通り。何名になるかは分からないが解雇は行われるだろう。また、フリーキャッシュフローをポジティブにし収益を出すために、我々は事業規模を適正化しなければならない。

 

しかし、会社を去る人たちは、尊敬と威厳、公平性をもって扱われることを約束する。そして会社に留まる人たちは、将来にわたって価値創造を行うために、全員が確実に適材適所に整理されそのミッションを共有することを約束する」と(WeWorkの新会長である)クラウアー氏はFT紙が入手した社内向けメールの中で記している。

 

クラウアー氏の社内向けメールはCNBCがここで全文を掲載している

 

これまでにもWeWorkやSoftBankのビジョンファンドに対して辛辣なコメントを発表してきたニューヨーク大学ビジネススクールのスコット・ガロウェイ教授は、次のツイートを発信している:

 

【訳】これは大惨事であり、私たちがビジネススクールでこの先何十年も教えることになる事例だ。何千人もの従業員たちがいそいそと大惨事の後始末を行わなければならない一方、イノベーターを狂信的に崇拝する者たちは彼ら(創業者に)何十億ドルという退職金を支払う。従業員たちの2人に1人は解雇される可能性があるというのに。

 

しかしガロウェイ教授は、WeWorkの社員の間でどれほど怒りが湧き起こっているか知らないようだ。ニューマン氏によって取り残された社員たちは、大量解雇および会社の存続すら危ぶまれるという危機的状況に直面しており、「冗談だろ(”You’ve got to be kidding me.”)」と憤りを露わにした反応をしているとブルームバーグ紙は報じている

 

今週火曜に出勤したWeWorkの社員は、ニューマン氏が「世界の意識を高める(elevating the world’s consciousness)」という崇高な目的の道半ばにして、12億ドルもの退職金を受け取り同社の会長職を去ることになったニュースを知り、社内コミュニケーション・システムのSlackに様々なコメントを投稿している。先程のコメントも、社内システムに投稿された実際の社員によるコメントである。

 

さらに「数十人の社員たちが社内のSlackシステム上で同僚たちに対して憤りを露わにしたメッセージを投稿している」とブルームバーグ紙は報じている。しかし解雇の対象になることを恐れ、これら社員たちは匿名を条件にブルームバーグ紙のインタビューを受けている。

 

確かにニューマン氏は、そのカリスマ性とベンチャー・キャピタル(VC)などによる何十億ドルにものぼる投資資金のおかげでWeWorkを世界的な不動産企業に育て上げたのは事実である。しかし、それがニューマン氏にしかできなかったことかと問われると、大きな疑問符がつく。結局、ニューマン氏は1ドルを50セント以下で売っていたようなものだからだ。今年だけを見ても出した利益を運転資金(コスト)でほぼ使い果たすという財務状況である。

 

これまでWeWorkに投資してきたSoftBank、Benchmark、その他のVCたちは、ニューマン氏の「魔法」にだまされてかけられてしまい、WeWorkの「成功」を実現してきた。しかしこれまで170億ドル以上をWeWorkに投資した結果、同社の企業価値はたった80億ドルである。つまり、投資家たちは投資資金1ドル当たり50セント以上を損失している計算になる。WeWorkというベンチャー企業投資で成功したのは、結局、約20億ドルを手にして同社を去るニューマン氏だけということだ。

 

「世界の意識を高める(elevating the world’s consciousness)」というような、高尚で利他主義的な言葉を発してきたニューマン氏は、そのカリスマ性と神秘性が、「ヒト」と「お金」を惹きつけてきたとも言える。しかし4000名近い社員が解雇されるかもしれないという状況に直面し、ニューマン氏がこだわったのは、結局自分のエグジット・プランだけだった。

 

ここ数週間、WeWorkの経営幹部たちも大脱出ラッシュとなっていることに加えて、コスト削減策が進められ、社内のやる気はすでにかなり低いレベルにまで下がってしまっている。特にサテライト・オフィスでは、多くの社員が出社するのを止めているという。そして今週、ニューマン氏の「プラチナ・パラシュート」とも言える退職金に関するニュースが報じられ、社内の雰囲気はさらに最悪になったと1人の社員は語っている。

 

アメリカでは、業績不振などの理由で企業幹部が解雇もしくは自ら退社する場合でも多額の退職金を受け取る。そのことを「墜落しかかる飛行機から1人だけパラシュートを背負って飛び降りる姿」に例えて、退職時に受け取る多額の退職金パッケージが、「ゴールデン・パラシュート(金のパラシュート)」と呼ばれている。今回、ニューマン氏の退職金がさらに桁外れであることから、この社員は彼の退職金一式を「プラチナ・パラシュート」と命名している。

 

今週火曜、このニューマン氏の「プラチナ・パラシュート」を報じたニュース記事へのリンクがWeWorkの社内コミュニケーション・システムSlackに投稿されると、そこには100件以上の「サム・ダウン(thumbs down)」が社員たちによって投じられている。数名の社員たちは、SoftBankが多額の退職金をニューマン氏には支払うのに、社員たちの給料を支払う余裕がないというのは皮肉だと投稿している。とある社員は次のように投稿している:

 

「私たちは社員に退職金を払えないほど破産している。だけどアダム(ニューマン)には2億ドル(*)が支払われた?」

 

(*)ニューマン氏の退職金は12億ドルと報じられている。

 

また別の社員は、チャールズ・ディケンズの名作「オリバー・ツイスト」の映画作品から孤児の写真を投稿し、そこに「孫正義さん、どうか私も幾らかの退職金をいただけないでしょうか?」というメッセージを加えている。しかし、孫社長自身も「ゴールデン・パラシュート」が必要になる可能性がある。現在、金融市場に充満している流動性バブルが崩壊すれば、マージンコールが発動され孫社長自身も無傷ではいられない。

 

* * *

 

さらに、WeWorkはニューヨークの本社をブライアント・パーク近くのLord & Taylorビル(記事冒頭の写真)に引っ越す計画を実行する予算がないとニューヨーク・ポスト紙Crain’s New York Business が報じている。

 

Lord & Taylorビルを8億5000万ドルで丸ごと一棟買いするプロジェクトに、当時CEOだったアダム・ニューマン氏自身も個人投資家として参画していた。そうしたニューマン氏が一部個人所有するビルの唯一のテナント企業としてWeWorkが入居する契約となっていた。今年初旬、このビルのオフィス・スペース全66万平方フィートを、1平方フィートあたり105ドルという高値でWeWorkが長期契約することが締結されていた。ニューヨーク・ポスト紙によると、このビルの側にある他の物件は、通常、高くても1平方フィートあたり80ドルで契約されている。

 

WeWorkのリース事業で勤務している社員によると、同社はもともとデパートが入居していたこのビルをWeWorkの本社にする計画を破棄する方向だという。同社は、この物件をとにかく早急に貸し出そうとしていると情報源である社員は語っている。

 

「彼ら(経営層)はそれが理にかなわないことを知っている。このビルを本社にするには、ニューヨーク市内にある約10箇所のオフィスを閉鎖しそれらを統合しなければいけない」と情報源である社員は語った。

 

また別の情報源である人物は、Lord & Taylorビルの買収案件が「ニューマン氏のお膝元で行われた案件の中で最も厄介なものの一つ」だと語る:

 

「アダムは過半数を牛耳るオーナーであったため、彼はあらゆることを強行した。誰も彼にノーとは言えなかった。不動産を買い取る資金は、事業会社(としてのWeWork)にとって大きな利害衝突を引き起こしている。それは不採算事業の裏で、アダムが(個人的に)利益を上げるやり方だった」と同社に近い人物は語った。

 

Photo via WeWork

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