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「サウジ・サミット」でSoftBankの孫社長が講演するも会場はガラガラ:ビジョンファンドが投資するインドのホテル・グループOyoは第2のWeWorkか?

Oyo

「砂漠の中のダボス会議」と言われる、サウジアラビア最大のビジネス・フォーラム「サウジ・サミット」が今週開かれている。昨年、ワシントンポストにコラムを寄稿していたジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がサルマン皇太子の命令により殺害されたという疑惑が報じられた際、ウォール街の金融機関は一斉にサルマン皇太子から距離を置いた。しかしその1年後、あたかもそんな事件はなかったかのようにサウジ・サミットは満員御礼の盛況ぶりと報じられている。

 

しかし今週水曜、SoftBankグループの代表取締役会長兼社長の孫氏が4名のパネリストのうちの1人として参加したセッションの会場には、ほとんど聴衆がいなかったとブルームバーグが報じた。突然、企業価値が暴落してしまったWeWorkの影響を受けていることは明らかだ。

 

しかし、SoftBankとそのビジョンファンドは、WeWorkへの投資についてまだ匙を投げたわけではない。来月までに運転資金が枯渇すると報じられていたWeWorkを救済するために、さらに数十億ドルもの追加投資を行い、経営陣をすげ替えるために創設者のニューマン氏から経営権を取得した

 

SoftBankは10月22日遅くに、WeWorkを救済するための正式な資金供給パッケージの内容を発表した。その要旨は以下の通り:

● SoftBankは50億ドルの追加出資を行う。その内訳は、優先担保付き手形11億ドル、無担保手形22億ドル、そして信用状17億5000万ドル。

● SoftBankはさらに1株19.19ドルで、合計30億ドル分の株式公開買付を行う。

● また、すでに保有している15億ドル分の新株予約権の実行を加速させ、WeWorkの株式を1株11.60ドルでさらに買い増す。

● SoftBankのビジョンファンドとWeWorkの間で各地に設立されたジョイントベンチャー事業(日本国内は除く)は、1株11.60ドルでWeWork株と交換される。

● 親会社であるSoftBankおよびビジョンファンドは、すでに合わせて91億ドルをWeWorkに出資している。今回、新たに出資する資金は全てSoftBankからであり、ビジョンファンドからの追加資本はない。

 

WeWorkのずさんな企業運営がIPOを行う直前で明るみになったことや、UberなどSoftBankによるその他の投資先のIPOも大失敗に終わっていることが、孫社長の評判を大きく傷つけてしまった。そのことが、今回、改めて目に見える形で明らかとなった。

 

過去のサミットでは、大きな目玉の一つとして講演を行っていた孫社長であるが、今年は目立たない講演しか割り当てられず、人工知能と起業について少し話をする程度であった。もちろん、ビジョンファンドに出資しているサウジアラビアのPublic Investment Fundについては何も語らなかった。(Public Investment Fundは、ビジョンファンド2への出資からは手を完全に引いたと報じられている。)Public Investment Fundは、最初のビジョンファンド(総額1000億ドル)のうち、450億ドルを出資している。

 

ブルームバーグは次のように報じている:

 

孫氏がパネリストの1人を務めたセッションについて、参加者数が少なかったことは、彼のビジョンファンドについてのアイディアについてその魅力が下がってしまったことを明確に示している。たった2年弱前には、ビジョンファンドはサウジ王国にとって同国の経済を多様化するための最も大胆で巨額の賭けとして脚光を浴びていた。ビジョンファンドがシェア・オフィス企業のWeWorkに関して沸き起こった問題に対処せざるを得ない状況に直面し、その最大の出資者であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、ビジョンファンド2へ出資を行うか否かについて決定を保留している。

 

2年前に孫社長が同サミットで講演した際と比較し、今年との格差があまりに歴然としているとブルームバーグは報じている:

 

2年前、サウジアラビアで最も重要な投資カンファレンスであるFuture Investment Initiativeに孫氏が登場したときとの違いは目を引くものがある。当時、王国の権力者であるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と並んでパネル・ディスカッションの壇上に座り、同国が5000億ドルをかけて建造する未来都市ネオム(Neom)に参画することを確約していた時は、彼は常ににこやかに微笑んでいた。

 

WeWorkのIPOが大失敗に終わると、ゴールドマン・サックスやその他の金融機関はビジョンファンドへの貸出リスクを削減している。しかしSoftBankのビジョンファンドが投資しているスタートアップ企業で、実際の価値以上に根拠のない過剰なバリュエーション評価を受けているのはWeWorkやUberだけではない。

 

 

ビジョンファンドが投資しているインドのホテル・グループOyoでは、非現実的な事業拡大計画を立てた結果、従業員との雇用契約を実行できない状況が発生したため、従業員たちが大規模な反乱を起こしていると先週、報じられている。セールス担当の社員は、給料の40%がカットされたと訴えている。

 

Oyoは、当時19歳だったリテシュ・アガルワル氏によって2013年に設立された。OyoもWeWorkと同様、収益性を二の次にし、市場拡大を最重要目標にするという事業戦略を立てている。

 

Oyoに加盟しているインド(バンガロール)のホテル事業者たちの代理団体は、Oyoが毎月の売上から不明瞭な手数料を差し引いているとして警察による捜査を要求しているとロイター紙が今月報じている。毎月、加盟ホテルのオーナーたちはOyoから利益の明細書を受け取っているが、契約時に説明のない手数料が毎月の利益から差し引かれているという。Oyoはこの容疑を否定している。

 

Photo via REUTERS/Adnan Abidi

 

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