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トランプはまだ弾劾訴追されていない:ハーバード大学ロースクール教授が弾劾手続きを規定した米国憲法を説明

トランプはまだ弾劾訴追されていない:ハーバード大学ロースクール教授が弾劾手続きを規定した米国憲法を説明

ナンシー・ペロシ下院議長 Screenshot via C-SPAN

今週、日本の報道機関はこぞって「トランプ大統領は弾劾訴追された」と報じている。しかし、これは大誤報に終わる可能性がある。厳密な憲法解釈によると、トランプ大統領はまだ弾劾訴追されていないからだ。

アメリカのトランプ大統領が、ウクライナ疑惑をめぐる権力の乱用と議会への妨害で弾劾訴追されましたアメリカ史上、弾劾訴追された大統領は3人目で、これを受けて有罪か無罪かを決める弾劾裁判が年明けにも議会上院で開かれることになりました。―NHK

(太字強調は筆者)

ペロシ下院議長は下院における弾劾訴追結果を上院に提出することを焦らしていることを考えると、トランプは弾劾訴追されずに終わる可能性がまだ残されている。つまり、NHKをはじめ、「トランプ大統領は、弾劾訴追された大統領として全米史上で3人目」と報じた日本の大手メディアは、大誤報を流した可能性がある。

ハーバード大学ロースクール教授のノア・フェルドマン氏は、ブルームバーグに掲載された論説記事の中で次のように説明している(フェルドマン教授は、今月初旬、下院司法委員会で弾劾手続きについて専門家の立場から証言を行っている):

下院がその弾劾審議の結果を上院に伝えなければ、それは実際にはまだ大統領を弾劾していないことになる。もし弾劾条項が(上院に)提出されなければ、トランプは自分が全く弾劾されていないと合法的に宣言することができる。

その理由は、憲法下における「弾劾」とは、下院マネジャー(下院議員が担当)が上院議会に立ち、大統領は弾劾されたと発表するという行為によって、下院がその可決した条項を上院へ送ることを意味しているためである。

下院が(弾劾審議を)可決した後のニュースの見出しが「トランプは弾劾された(Trump Impeached)」と報じていることに関して、それらはメディアによる(事実を)簡潔に縮めた表現であって、厳密に正確な法的声明ではない。これまでのところ、下院はトランプを弾劾する(未来形)ことを可決した。(しかし)弾劾条項が上院に届けられ、下院議員メンバーがそのメッセージを伝えるまで、彼は弾劾されている(過去形)わけではない

一方、ペロシ下院議長は、彼女が「公平である」と考える裁判を上院が開くまで、弾劾条項を上院に送る計画はないと今週木曜に記者団に語っている。

【訳】ペロシ下院議長が弾劾手続きについて語る:「私たち(下院)が、彼ら(上院)が用意したもの(つまり「公平な」裁判)についてわかれば、私たちは誰を何人(弾劾条項を伝える下院マネジャーとして上院に)送るか判明することになる」

アメリカ合衆国憲法の起草者たちは、イギリスの弾劾手続きをおおまかなモデルにしており、憲法第2条において、「弾劾の訴追権限は下院に専属する」一方、第3条で「すべての弾劾を裁判する権限は、上院に専属する」と規定している

そして憲法第4条では、大統領は「反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪につき 弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれる」と規定している。

フェルドマン教授はさらに次のように述べている:

しかし、私たちは自信を持ってこう言うことができます。上院における裁判の公平性を判断する権限は、上院にのみ与えられていると。これこそが「すべての弾劾を裁判する権限は、上院に専属する」が意味していることです。

もし下院が「弾劾」する議決を行い、しかしその弾劾条項を上院に送らなかったり、そのメッセージを伝えるために下院マネジャーを上院に送らない場合、それ自体は憲法の文言に直接違反はしていない。しかし、下院は、憲法で規定された弾劾についての暗黙の論理に反して行動していることになる

真に弾劾された大統領は、憲法上、上院の前で自身を弁護する機会を与えられなければいけない。このことは、弾劾の憲法上の論理に組み込まれており、職を罷免される前に裁判を要求している。

もし下院がその弾劾条項を上院に送らなければ、上院で裁判を開くことはできないことになる。これが、「弾劾の訴追権限は(下院に)専属する」が意味していることだ。

この論説記事の結論として、フェルドマン教授は次のように締めくくっている:

もし下院が(弾劾)条項を送らなければ、トランプは強力な正当性をもって、彼は実際には弾劾されていないと主張することが可能だ・・・それは必ずしも民主党議員たちが発信したいと考えているメッセージではないだろう。

* * *

一方、共和党のリンゼイ・グラム上院議員は、下院で可決された2つの弾劾条項を上院へ送ることを保留すると発表したペロシ下院議員議長に対して、それは「信じられないほど危険」なことであり、上下院の権力の分離を定めた法律を無視していると非難している。

ペロシ下院議長は、木曜に行われた定例記者会見で次のように語った:

我々(下院)にとって次は、上院が設定する(弾劾裁判)プロセスを、我々が知ることだ。それから、我々が進め、選定しなければいけない(上院に弾劾訴追を伝える)下院マネジャーを何名にするかを我々は決めることになる。・・・

しかし、いずれにしても、我々に準備はできている。我々が(上院が設定する裁判手続きについて)知ることになれば、我々は誰を何人送るか判明することになる。

これに対して、グラム議員は次のように反論している:

立ち止まって考えて欲しい。下院で弾劾条項を可決したが、下院議長が好むように上院で裁判を指定するまで、その弾劾条項を上院に送ることを拒否している。・・・我々が権力を分離しているのには理由がある。あなたは、下院議長であると同時に、上院で過半数の党首であることはできない

【訳】リンゼイ・グラム上院議員:「彼らが提案していること(つまり、処分条項を下院で可決したにもかかわらず、それを上院に送らないこと)は、信じられないほど危険なことだ」

共和党のマルコ・ルビオ上院議員もこの批判に加わり、ペロシ下院議長は「もてあそんでいる」と非難している。

【訳】条項を上院へ伝達することをもてあそぶ行為では、上院に対して邪魔をし、影響力をおよぼすことはできない。しかし、それはある種、党派心があらわな政治妨害であり、下院民主党議員らにより実行されたプロセスの信頼性をさらに傷つけるものである。

* * *

一方、下院民主党議員による弾劾手続きに対して、多くのアメリカ国民の反応は冷ややかである。

今月行われた最新の12件の世論調査のうち、「トランプ大統領への弾劾を支持し、彼は罷免されるべき(Yes/Remove)」と回答した人の割合が、「支持しない(No)」と回答した人の割合を上回ったのは3件だけとなっている。残る9件の世論調査では、いずれも最大多数派が大統領への弾劾に対して「No(賛成しない)」と回答している。

これら複数の世論調査を集計した総合グラフ(以下)でも、今月になって弾劾に「反対する(No)」が「賛成する(Yes/Remove)」を上回っている。

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