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債券投資はかつてないリスクに直面している:資産運用会社DoubleLineのグンドラック氏が債券市場、レポ取引市場、2020年大統領選挙の行方について語る

債券投資は最大のリスクに直面している:資産運用会社DoubleLineのグンドラック氏が債券市場、レポ取引市場、2020年大統領選挙の行方について見解を語る

ジェフリー・グンドラック氏 Screenshot via CNBC

ロサンゼルスが拠点の資産運用会社DoubleLineのCEO兼創設者であるジェフリー・グンドラック氏は、年末に投資家向けにウェブ・セミナーを開催した。その中で、主に同社の主力投資信託商品である『ダブルライン・トータルリターン・ファンド(DoubleLine Total Return Fund:DBLTX)』に比重を置いて語っているが、その他にも債券市場が直面している重大な問題や、2020年の大統領選挙の行方について、グンドラック氏は独自の見解を語っている。(このウェブ・セミナーで使われたスライドは、本文末尾に掲載している。)

 

まず、社債の信用力が、債券投資を行っている投資家達が心配すべきナンバー・ワンのリスクであると語っている。グンドラック氏は、アメリカ企業が利用しているレバレッジの規模や、そしてそれら企業が発行している社債に対してつけられている非現実的なほど楽観的な格付けについて、最大の警鐘を鳴らしている。

 

モーガンスタンレーが行った調査を元に、グンドラック氏は世の中の全社債の39%は「ジャンク債」の格付けを受けるべきであり、またさらに10%の社債は「B」もしくはそれ以下の格付けを受けるべきであると語っている。

 

「(社債の)格付けが下がる可能性は非常に高い」とグンドラック氏は語り、外国人投資家達が保有する債券を売却し始めドルが弱まると、さらにその可能性は増幅することになると予言する。

 

「これは債券への投資家達が直面している最大のリスクだ」と同氏は語っている。

 

 

アメリカの政治について、グンドラック氏は、民主党から立候補している候補者達はあまりに混沌とした状態であるため、トランプが再選されるだろうと語った。グンドラック氏は、2016年のトランプ大統領の当選を予言していた数少ない人物であることでも知られている。ただし、グンドラック氏はトランプ大統領へも、その他のどの候補者たちへも支持を表明していない。

 

 

レポ取引市場で起きた大混乱について

 

グンドラック氏は、2019年末に起きたレポ取引市場での混乱について、「オーバーナイト資金調達市場での騒動(overnight funding dust up)」と呼んでいる。しかしその呼び名の軽い響きとは異なり、グンドラック氏は事態をかなり深刻に受け止めている。「私たちが普通だと考えていた状態に、果たして私たちは戻ることができるのだろうか」とますます懸念が高まっていると語っている。特に、マイナス金利から逃れられている世界の債券市場に対して懸念が高まっているという。米国を除くと、バークレイズ・グローバル総合インデックス(Barclay’s global aggregate index)の34%はマイナス利回りの債券である。これは2019年初旬に比べて2倍以上に増えていると同氏は指摘する。

 

「長引くマイナス金利が、欧州における(投資家の)態度と行動を変えてしまったのは明白である。・・・人々は、資産配分する際の投資候補先の中から債券を排除するべきか迷っている」とグンドラック氏は語っている。その理由は、(多くの)債券がマイナス利回りであるためである。グンドラック氏が最近欧州を訪問した際、投資家に向けて債券を保有しないよう次のように提言している:

 

「連銀議長のジェイ・パウウェルは、アメリカでマイナス金利を導入すれば『世界の金融システムにとって壊滅的になる』ということを理解している。(そうなれば)金融システムは、長くはもたないだろう」とグンドラック氏は語っている。

 

また、グンドラック氏は、レポ取引市場で起きた混乱は、税金を納めるために現金が必要になるという「タイミング上のニーズ」にも原因があったと語っている。しかし、納税は毎年同じタイミングで行われているため、9月17日以前の段階でそのニーズはすでに知られていた。レポ取引市場での混乱は、「非常に悪いサイン」であり、レポ取引市場で必要とされる流動性が不足していることを明らかにしたのは間違いない。

 

このオーバーナイトのレポ取引市場で起きた問題は、流動性が不足していることの前兆である」とグンドラック氏は語っている。

 

この問題に対処するため、レポ取引市場の準備金としてニューヨーク連銀が資金を積み増ししたことにより、連銀が達成しようとしていた量的引き締め(QT)の40%を逆戻りすることになってしまっている。

 

 

ドルおよび世界的な「利回りへの渇望」

 

米国は、次に起きる経済不況に対してマイナス金利で対抗する計画はないと、連銀のパウウェル議長の発言を引用してグンドラック氏は語っている。しかし、2019年始めに4回の金利引き上げを約束していたにもかかわらず、連銀は量的引き締め(QT)を停止し、形を変えた量的緩和(QE)を再開してしまったことなど、グンドラック氏は連銀による金融政策を批判している。連銀は、景気が悪化する場合に大規模な資産の買い入れを計画しているため、投資家にとっては連銀による資産の買い入れが行われる直前に投資を行う機会を得ることが可能であるとグンドラック氏は語っている。

 

次に景気が悪化する場合、長期的には金利は引き上げられるだろうとグンドラック氏は予想している。彼は、3ヶ月〜10年のイールドスプレッド(*)の過去データを基にこれを予想している。

 

(*)イールドスプレッドとは

イールドスプレッド(英語:Yield spread)とは、債券同士や債券と株式を比較して、どちらが割安かを示した指標のことです。イールドは「利回り」、スプレッドは「金融取引における差」という意味なので、利回りの差から割安をはかる指標です。引用元:イールドスプレッドとは 

 

連銀が債券を買い入れ経済を刺激しようとする第1弾の量的緩和(QE1)を行った際、イールドスプレッドはスティープ化(急勾配な右肩上がりを)した。QE2とQE3が行われた際も、イールドスプレッドは同様な動き方をした。一方、量的引き締め(QT)が行われた際、イールド曲線は平らになったとグンドラック氏は言う。レポ取引市場に資金が拡大投入されたことで、イールド曲線は再びスティープ化していると同氏は語る。

 

グンドラック氏は、「ドルは『重要な高値圏』をつけている」とも言う。最後にドル高をつけたのは2017年1月である。2019年、ドルは「信じられないほど安定していた。(しかし)連銀が量的緩和を行っているため、ドル安が進むと予想する」と語っている。これまでドルが強かった理由は、世界で「高い利回りへの渇望」があったからである。外国人投資家たちは、その高い利回りに惹かれて米国の債券を購入せざるを得ない状況であるが、投資資金を自国通貨へ換金する際に、通貨リスクをヘッジすることができず、実質利回りがマイナスとなってしまう。こうした海外の投資家たちは、リスクヘッジしない「ネイキッド」の米国債券を購入しなければいけない。このことがドル高要因となっていると同氏は指摘している。

 

一方、グンドラック氏のDoubleLineの運用実績を見てみると、新興市場の債券は2019年、アルゼンチン債がマイナス70%のリターンであったにもかかわらず、総リターンは12%と良い投資先であった。高利回り債は12.6%のリターンであり、投資適格債券はさらに14.2%という投資リターンを達成した。米長期国債は7.2%のリターンであった。

 

グンドラック氏は過去のデータを使い、ドル安が経常収支と財政赤字と相関関係にあることを示している。経常収支と財政赤字を合わせたものがGDP比で増加すると、ドル安が進むと同氏は指摘する。「財政赤字が膨らみ続けるに従い、(ドルは)それと『連動』しさらに弱くなる」と言う。しかし、ドル安を強く押し下げる政策を行うには、米国経済が弱含みであるという条件が必要になると同氏は言う。

 

グンドラック氏の今回のウェブ・セミナーに共通したテーマは、米国の負債残高が1940年以来、爆発的に増えているということだ。企業債務は「ターボチャージャー」が付けられたようにかつてないほど急加速している。連邦政府レベルでも同様に財政赤字が急拡大していることについても同氏は警鐘を鳴らしている。(政府の)財政赤字を削減するような大統領候補者が民主党から出てくるという希望はないと同氏は辛口の見解を述べている。

 

次の不況が起きるときには、財政赤字はGDPの13%にまで達するだろうとグンドラック氏は考えている。そのため、より利回りの高い債券が供給されることになるだろうと同氏は予想する。

 

前回のウェブ・セミナーで、グンドラック氏は2020年末までに不況が起きる確率は65%であると予想していた。しかし現在、ともにプラス圏内で(上昇傾向に)ある消費者信頼感と景気先行指数(LEIs)を基に考えると、2020年末までに不況が起きる確率は35%であるという。この確率は、アナリスト全体の予想とも一致しているという。

 

社債が抱える問題

 

短期的には、イールド曲線は上向きであり、連銀が大規模の資産買い入れを実施する決定を行うまでイールド曲線はスティープ化する見込みだと同氏は言う。

 

グンドラック氏によると、金銅比(ゴールドカッパーレシオ)は、10年物(国債の利回り)は約2%であるべきであることを示している。10年間の名目GDPとドイツ国債利回りを基にすると、10年物の利回りの予測値は、次に発表される名目GDPに拠って、1.76%〜1.9%の間であるという。

 

10月末、パウウェル連銀議長は、金利を引き上げるためには、インフレ率に大きな急上昇が見られる必要があると語っていた。「連銀は、金利を引き上げる検討を行うには、持続する本物のインフレ率(の上昇)を必要としていると基本的には言っている。おそらく、連銀は金利を引き下げ、金利を引き上げることは行わないだろう」とグンドラック氏は語っている。

 

外国人投資家たちはアメリカの資産を購入しているが、それは安定的ではないとも語る。経済が弱含みとなれば、これらの投資家たちは米国を脱出したいと考えるだろう。大規模な「売り」が起きる可能性があるとグンドラック氏は予想する。米国以外のブローカー・ディーラーたちは、米国内にあるのと同じような価格の急落を防ぐための安全装置による規制を受けていない。

 

米国の社債市場では、ディーラーが保有する社債在庫は「ゼロ」であるとグンドラック氏は指摘する。社債の質は過去30年間で大きく下落してしまった。1998年時点で、市場において「A」以上の格付けを受けていた社債は全体の68%であった。しかし、それが現在ではわずか40%となっている。投資適格格付けの最低ラインである「BBB」に格付けされる社債が増えたことでこの差が生まれているとグンドラック氏は語る。

 

これは次に不況が起きるときに本当の問題になる。これら社債はジャンク債に近いものになる」とグンドラック氏は語っている。

 

企業債務は、過去10年間で、GDPの40%から47%へと増加している。歴史的に、この比率は不況が起きると急落するとグンドラック氏は語る。「それ(不況)が起きると、そこ(債務)から抜け出すのは非常に困難になる」という。

 

グンドラック氏は、過去の不況時において、格付けが引き下げられた社債の数は、引き上げられた社債の数の2倍であったと語っている。

 

投資適格債券および高利回り債券(コモディティは除く)と各企業のEBITDAとの比率を基にした企業のレバレッジは、歴史的に見て「非常に高い」とグンドラック氏は指摘している。もしコモディティもその比率の計算に含めると、「それはさらに一層悪化する」と語っている。

 

 

政治的な見通し

 

民主党から選出される大統領候補になる可能性ついて、ジョー・バイデン元副大統領には「その可能はない」とグンドラック氏は語っている。彼の行動を見てきた人であれば、彼に投票する人は皆無だろうと同氏は言う。特に、バイデン氏は高齢であり文章をまともに発言できないことは致命的であると指摘する。

 

エリザベス・ウォーレンは、完全に「消滅傾向」にあるとブックメーカー(PredictIt)のデータを引用しながらグンドラック氏は予想している。ウォール街は、ウォーレン議員が大統領選に当選し、経済成長を阻害するような(極左の)経済政策を導入するという可能性を完全に排除しているという。

 

ピート・グテジッジ市長は「実に素晴らしい」候補者であり、ロナルド・レーガン以来の最高の大統領候補者であるとグンドラック氏はベタ褒めしている。しかし、彼はまだ若干37歳であり、「21歳に見えるという(見た目の印象の)障害を彼は乗り越えることはできない」と分析している。

 

バーニー・サンダース議員は、ウォーレン議員の支持者たちからの支援が受けられれば、民主党からの候補者として選出される可能性はあるが、依然として彼が民主党の指名候補争いに勝つ可能性は低いとグンドラック氏は見ている。

 

マイケル・ブルームバーグ氏が民主党の指名争いに勝つとはグンドラック氏は考えていない

 

民主党の中で最強の候補者はヒラリー・クリントンであるとグンドラック氏は語る。ブックメーカー・サイトで、彼女へ賭けている人は10%にのぼる。これはブルームバーグ氏と同率である。しかし彼女が大統領選に参入することに、同氏は非常に懐疑的である。

 

「基本ケースでは、トランプが再選されるだろう。なぜなら、民主党はゴタゴタ状態に陥っているためである」とグンドラック氏は言う。また、トランプは弾劾プロセスによって辞任に追い込まれることもないだろうと同氏は予想している。

 

 

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