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沈みゆく船SoftBank:ムーディーズによる2段階の格付け引き下げにより孫会長は持ち株の40%を銀行の担保に入れる

沈みゆく船SoftBank:ムーディーズによる2段階の格付け引き下げにより孫会長は持ち株の40%を銀行の抵当に入れる

Photo via FT

シェアオフィス企業WeWorkとUber(ウーバー)のIPOが悲惨な失敗に終わった後、昨年10月、シード企業に大金を注ぎ込んではそれを「溶かす」ことを繰り返すSoftBankグループについて、「ITバブルの申し子SoftBankは絶好の空売り対象か?と本サイトでも報じていた。

それから、当時は誰も予想していなかった出来事が次々と起き、世界経済はフリーズし、ソーシャル・ディスタンス(他人と一定の距離を保つこと)が日常の風景となってしまった。SoftBankグループの投資先企業の多くが「シェアリング・エコノミー」を基にしていたため、その多くのビジネスが頓挫してしまっており、すでに持続不可能なまでに資金を食い潰す状態だったのが、さらに異常な不採算レベルにまで到達してしまっている。

この事態を解消するどころか悪化させたのが、1ヶ月前、物申す投資家として知られるポール・シンガー氏が正式にSoftBankと会談を開き、同社の株価を上げるよう要求したことだ。これを受け、今週月曜、孫会長は同社の有望資産を4兆5000億円(410億ドル)分、売却する計画であると発表した。売却する資産には、チャイナのeコマース大手アリババの140億ドルにのぼる株式が含まれている。この売却資金を使って、自社株の価格を吊り上げるために巨額の自社株買いを行うとも発表した。

昨年2月、SoftBankグループは10.3%の株式を自社株買いすると発表して以来、同社の株価は上昇していたが、最近は株価の暴落が続いていた。

しかし政府に救済を求めるまで資金繰りが悪化しているボーイング社の事例から、孫会長は何も学んでいないようだ。ボーイング社は過去10年間、借金をしてまで650億ドルにものぼる自社株買いと株主配当を行い、富を株式を保有する投資家や企業幹部たちに還元してきた。その「ツケ」を国民の税金に頼ろうとするボーイング社の姿勢に、全米では大きな批判が起きている

一方、良いニュースは、巨額の自社株買いを行う発表をしたことで、SoftBankグループの株価は55%も爆上げしていることだ。先週、同社が抱える巨額の負債エクスポージャーに対してパニックになった投資家たちが売り込んだため、同社の株価は4年来の最安値をつけていた。

そして悪いニュースは、SoftBankグループが長期的な成長力を犠牲にしてまで現在の株価を吊り上げようとする最近の試みに対して、格付け会社が問題視していることだ。今週水曜、格付け企業のムーディーズは、SoftBankグループの格付けを2段階引き下げると発表した。これにより同社の格付けはどっぷりジャンク債レベルに沈むことになった。

 

欧米の格付け会社VS日本の格付け会社

ムーディーズは、SoftBankグループの格付けをBa1からBa3へと引き下げる決定を行った理由について、同社による「強引な財政方針」にあるとし、武漢ウイルスによるパンデミックの渦中にあって市場のボラティリティが高まっている最中にeコマース大手アリババや米国の携帯通信企業Sprintという収益の大きい所有権を売却する場合、SoftBankグループのポートフォリオ価値は圧縮されてしまうだろうと述べている。

ムーディーズのシニア・クレディット・オフィサーであるヤナセ・モトキ氏は、次の声明を発表している:

バリュエーションが下落し(投資家が)安全資産へ逃避するという現在の低迷する金融市場において資産売却を行うことは、困難を伴うだろう。

しかし孫会長は、世界最大のベンチャー・キャピタル・ファンドを抱えるSoftBankグループに対して「王様は裸だ」と真実を指摘する人々に対して激怒しており、ムーディーズに対してSoftBankグループの社債格付けを全て排除するよう要求している

ファイナンシャル・タイムズ紙は、次のように報じている:

ムーディーズによる格付け判断は、市場環境に関して過剰に悲観的な想定に基づいており、SoftBankグループが十分な検討を一切行わずに資産を性急に売却するだろうという誤解に基づいて行われていると(SoftBankグループは)信じている。

しかし格付け引き下げの影響はすでに現れている。格付けが2段階引き下げられたことにより、SoftBankグループが抱える550億ドルにのぼる借金の借入コストは急激に上昇している。同社の(償還期限のない)永久債の利回りは、今週水曜朝の取引で売り込まれた後、11%以上に上昇している。

同社史上最大の自社株買いを行うことで、投資家の善意を買収しようと期待していた孫会長であるが、その計画はさっそくポシャってしまった。今回は、いくつかの格付け機関が目をつむることを拒否し、SoftBankグループがその最も有望な資産のいくつかを売却してまで自社の株価を吊り上げようとしている無謀な試みに対して声を上げたことがその理由となっている。

しかし日本の格付け機関は依然として腐敗している。欧米の格付け機関がSoftBankグループの「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」をジャンク債クラスと判断しているのに対して、地元日本の日本格付研究所(JCR)は、いまだに同社に対して投資適格格付けを行っている。SoftBankグループに対していまだに投資適格格付けを与えているのは、唯一、日本格付研究所(JCR)だけである。アメリカでは、「この投資適格格付けを受けるために、孫会長は日本格付研究所(JCR)にどれほどのキックバックを払っているのだろうか?」と不審がる声があがっている。

大博打に出る孫会長

しかし話はここで終わりではない。

SoftBankグループに対する包囲網が狭まり、その成長能力に対してますます疑問の声が上がる中、過去2週間の間に孫会長が個人で所有しているSoftBankグループ株を追加で1010万株、融資元へ抵当に入れていたことが判明した。今週金曜、規制当局に対する提出書類で明らかとなった

この最新の提出書類で、孫会長は現時点でSoftBankグループの株式を合計2億2700万株、抵当として入れるコミットをしており、その市場価値は約80億ドル(約8800億円)にのぼる。また、孫会長はSoftBankグループの27%の所有権を保持しているが、この抵当に入れた株式はそのうちの約40%にあたる。

今回新たに抵当に入れることが約束された株式は、金曜の終値で約3億6000万ドルに相当するとブルームバーグは報じている。また、ブルームバーグ・ビリオネア指数では、孫会長の純資産は120億ドルとなっており、これには抵当に入れる約束をした株式の価値は含まれていない。しかし今年に入って、孫会長の資産は36億ドル目減りしてしまっている。孫会長の運命は、ますますSoftBankグループと運命共同体の様相を呈している。2013年以降、孫会長がSoftBankグループの担保として抵当に入れた個人資産は3倍以上に膨れ上がっている。

そしてもし孫正義会長がSoftBankグループという船とともに沈み行く場合、UBSや野村證券といった彼のパーソナル・バンカーたちもまた同じ運命をたどるとブルームバーグは報じている。

次に何が起きるのか?

もしSoftBankグループ株の売却(セルオフ)が続けば、次にマージン・コール(追証)が発動されることになる。

世界の株式市場が大暴落したため、ビリオネアたちの中には抵当に入れている株式に対してマージン・コールが発動されたケースがいくつか報じられている。マージン・コールに世界のビリオネアたちが慌てて応じる中、孫会長は抵当の追加を行ったとブルームバーグは指摘している。例えば、インド最大級の石炭輸入業者アダニ・エンタープライゼスのガウタム・アダニ会長とその家族は、今月、未返済の負債に対して追加で14億ドル分の株式を担保として抵当に入れている。また、超富裕層の顧客にプライベート・バンキング・サービスを提供しているUBSやクレディ・スイス銀行は、クライアントたちに対して追加担保を抵当に入れるよう要請している。これにより、さらに株式が強制的に売却され、清算のスパイラルが永続化している。

しかし最悪のシナリオは、孫会長の自己破産ではない。レバノンに逃亡した富豪と同様、孫会長もまた巨額の個人資産をタックスヘイブンのオフショア銀行に保管しているだろう。それよりも、SoftBankグループという船が沈む時、最も被害を受けるのは個人投資家たちだ。

SoftBankグループは、先に言及した日本格付研究所(JCR)が発表する、(他の欧米の格付け機関による評価よりも)高い格付けを巧みに繰り返し活用することで、個人投資家たちから安く資金を調達してきたとファイナンシャル・タイムズ紙は記している。昨年、SoftBankグループは、日本の素人個人投資家たちへ最も多額の社債を販売した企業となった。昨年3月時点で、企業や金融機関が個人投資家向けに発行した全社債の半分以上をSoftBankグループの社債が占めている。

つまり、今回のITバブル期に「絶好の空売り対象」となっていたSoftBankグループがついにその巨額負債の重みに耐えられず破綻する時、最も被害を受けるのはまたもや個人投資家ということになる。「ババ」を引くのはいつの時代も個人投資家たちということだけは変わらない。

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