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連銀による「治療」は病気そのものよりも事態を悪化させるリスクがある:ジム・ビアンコ氏による解説記事

【解説記事】連銀による「治療」は病気そのものよりも事態を悪化させるリスクがある:ジム・ビアンコ氏

トランプ大統領(左)とパウウェル連銀議長(右)(Photo courtesy of Bloomberg)

金融市場とマクロ経済について、的を射た解説をすることで知られるジム・ビアンコ氏が、連銀(FRB)が発表した無期限の量的緩和政策について解説する記事をブルームバーグ通信に寄稿した。ビアンコ氏は、米国シカゴを拠点にする調査会社ビアンコ・リサーチの設立者兼主幹ストラテジスト。

今月初め、ビアンコ氏へ行われたインタビュー記事についてはここで紹介している

* * *

連銀による「治療」は病気そのものよりも事態を悪化させるリスクがある

アルファベットの頭文字を取った略称ばかりが並ぶ、新たな資産買い入れプログラムは、金融市場の大部分を本質的に国有化することになる。そしてその結果、深刻な事態を招くことになる・・・

今日の経済議論は、経済封鎖という「治療」がウイルスによる病気そのものよりも事態を悪化させるかどうかについてだ。同様に、連銀(FRB)がこれほど多くの社債、アセット・バック証券、コマーシャル・ペーパー(CP)、そしてETFを購入するという「治療」が、この病気が金融市場を襲うことよりも事態を悪化させるかどうかについて問う必要がある。おそらくそうなるだろう。

過去数週間という短期間に、連銀は金利を150ベーシスポイント引き下げ、ほぼゼロにした。そして2008年の金融危機のときに行ったことを手本に、また同じ対応をしている。ただし、それだけでは今回の市場を落ち着かせるには十分ではなかった。そのため、中央銀行(FRB)は、1日1兆ドルにのぼるレポ取引を発表し、無期限の量的緩和政策も発表した。これには、1週間に6250億ドルの債券を購入しそれを継続するという、理解し難い内容が含まれている。このペースで買い入れを続ければ、連銀は1年で国債市場の3分の2を保有することになる。

しかし、特別に注意しなければいけないのは、アルファベットの頭文字を取った略称ばかりが並ぶ新たな資産買い入れプログラムである。これらは、連銀の機能や金融市場における資本配分にとって、深刻な長期的影響をもたらす可能性がある。

新たな資産買い入れプログラムとはこれらのことである:

  • CPFF (Commercial Paper Funding Facility) – 「コマーシャル・ペーパー資金拠出ファシリティー」– 発行元からコマーシャル・ペーパーを買い入れる
  • PMCCF (Primary Market Corporate Credit Facility) – 「プライマリー・マーケット社債ファシリティー」– 発行元から社債を買い入れる
  • TALF (Term Asset-Backed Securities Loan Facility) – 「ターム物アセットバック証券ローン・ファシリティー」– アセットバック証券を買い支えるための資金拠出
  • SMCCF (Secondary Market Corporate Credit Facility) – 「セカンダリー・マーケット社債ファシリティー」– 社債および債券ETFをセカンダリー・マーケットで買い入れる
  • MSBLP (Main Street Business Lending Program) – 「一般ビジネス向け融資プログラム」 – 詳細は追って明らかとなるが、条件を満たす中小企業に対して融資を行う。中小企業庁による政策を補完。

ずばり言えば、連銀はこれら政策のどれも実施することが許可されていない。中央銀行は政府保証がある証券に対して、それを購入もしくはそれを担保に融資することだけが許可されている。これには、国債、エージェンシーMBS、そして(連邦住宅抵当貸付公社である)ファニーメイとフレディ・マックが発行する債権を含む。これに地方債も含むことができるという議論もあるが、上記のリストに含まれている金融商品はどれも対象外となっている。

彼らは何を根拠にこれを実施することができるのか?連銀はこれらの金融政策を実行するために、各プログラムに対応した「SVP」と呼ばれる特別目的媒体(資産買取を行う機構)に資金拠出する。為替安定化基金(Exchange Stabilization Fund)を運営している米財務省は、各特別目的媒体「SVP」に株式投資を行い、「ファースト・ロス」のポジションを取る。これが意味することは何か?突き詰めると、連銀ではなく、財務省がこれら全ての証券を買い入れ、ローンの買い支えを行っているということである。連銀は、銀行員として立ち振る舞っているだけであり、資金調達(サービス)を提供しているにすぎない。そして連銀は、これら証券を買い入れるために(世界最大の民間資産運用会社である)ブラック・ロックを雇っており、これら証券の所有者である財務省の代理人としてブラック・ロックが各特別目的媒体(SVP)の運営陣を管理する。

つまり、連邦政府が金融市場の大部分を国有化しようとしているということになる。連銀は、それを実施するための資金を提供し、ブラック・ロック社はその取引を実行する。

このスキームは、本質的に連銀(FRB)と財務省を一つの組織に統合する。そのため、新たな連銀議長は(大統領である)ドナルド・J・トランプということになる。

 

2008年、似たようなことが行われたが、ずっと小さな規模であった。ほとんど誰もそれについて理解していなかったため、ブッシュ政権とオバマ政権は、これらアルファベットの頭文字の略称で呼ばれる金融政策の完全なコントロール権を、当時の連銀議長であったベン・バーナンキに譲った。彼は最初にその機会が訪れたときに、これら金融政策の緊張を解いた。しかし現在、当時から12年が経過し、我々はこれら(金融政策)がどのように機能するかずっとよく理解できるようになっている。そして今の大統領は、中央銀行の関係者たちがその与えられた大きな権力を使ってNYダウ平均株価を少なくとも1000ポイント上昇させてこなかったことに対して、非常に明らかな不満を表明してきた。大統領は、パンデミックが起きる以前、このことについて何度も不満を口にしていた。

連銀は、現在機能障害を起こしている債券市場に正しく不安感を抱いたときに、ようやく彼らは行動に移る必要があると感じた。これは正しい判断だった。しかし、こうした「民間の」市場を安定化するための権限を得るには、中央銀行の関係者たちは財務省に対してこれら市場を国有化することに合意させる必要があった。そうすることで初めて、中央銀行の関係者たちはそれを行うための資金を提供することが可能になる

連銀が持つ紙幣を刷るという機能に対して、連銀は事実上、財務省にそのアクセス権を与えることになった。これが意味することは、極端な場合、政権が大統領選挙に向けて金融市場を吊り上げるために、連銀を無視してこれら特別目的媒体(SVP)をコントロールする能力を自由に使うことが可能だということである。この能力を使えば、政権は連銀に対して追加資金を刷るよう指示し、それを使って証券を買い入れ、ローンを提供することができる。これで終わりになるはずがない。もしトランプが再選すれば、連銀や他の誰もが拒否しても、トランプの気分次第でダウを1万ポイント上昇させようと思えば、これら特別目的媒体(SVP)を使ってそれを試みることができる。

これらアルファベットの頭文字を取った金融政策を、私が説明したように悪用すれば、実際、適切な評価が保証する以上に市場を強制的に上昇させることができうる。自由取引が行われている資本市場であれば、資本を効率的に配分する助けとなる市場のシグナルというものが存在するが、(このように悪用されれば)投資家たちにとって必要な市場のシグナルが奪われることになる。そうなれば、非効率な投資がはびこることになる。また、政府による巨大な手が「操作された」市場を非経済的でもうからないものにするため、民間セクターの市場参加者たちを市場から追いやることになる可能性もある。このことは、すでに米国のフェデラル・ファンド市場(銀行同士が即日利用可能な短期資金を無担保で取引する市場)と日本の国債市場に起きてしまっている。

パウウェル連銀議長は、彼が処方した「治療」が病気そのものよりも事態を悪化させないよう、慎重に物事を進めることが求められている

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