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全米で最大30%の住宅ローンが債務不履行に:Airbnbは債務超過のスーパーホストを救済へ

全米で最大30%の住宅ローンが債務不履行に:Airbnbは債務超過のスーパーホストを救済へ

Photo via Pixabay

2008年に起きた金融危機の原因は、信用力が低い借り手に多額の住宅ローンを貸し付けて起きた「サブプライム住宅ローン市場」のバブルが崩壊したことであった。このサブプライム・ローンが孕んだデフォルト(債務不履行)リスクを、数兆ドルもの債務担保証券(Collateralized Debt Obligation: CDO)や再々証券化(CDO squared)して化けさせ、目に見えない形にして売買していたため、高騰した住宅バブルが崩壊したときに連鎖的に大規模な金融危機が発生した。しかし今回、住宅ローン市場は、2008年のような複雑な金融商品がからんだものではなく、一般的な債務不履行リスクに直面しているーーただしその規模が普通ではないということをのぞいて。

武漢ウイルスにより都市封鎖と自宅待機命令が発令されたことで、全米ではすでに1000万人が失業している。所得を失った多くの住宅ローンの借り手は、ローンを返済できなくなるというリスクに直面している。そのため、住宅ローンの貸し手である金融機関は、史上最悪の債務不履行(デフォルト)の大津波がやってくることに身構えているとブルームバーグが報じた

米財務省は、ローンの支払いを猶予したり中小企業に特別融資を行うなどの救済策を打ち出しているが、政府が供給する流動性資金が末端の国民にまでスムーズに、そしてタイムリーに行き届くか疑問視されており、大規模な住宅物件の差し押さえ(フォアクロージャー)が起きる可能性が高まっている

Moody’s Analyticsの主幹エコノミストであるマーク・ザンディ氏は、住宅ローンを抱えているアメリカ人のうち最大30%(1500万世帯)が、この夏以降まで経済封鎖が続けば住宅ローンを返済できなくなるだろうと見積もっている。

また、ペンシルバニア大学ウォートンスクールのスーザン・ワッチャー教授は次のように述べている:

これは未曾有の出来事だ。・・・(2008年のときの金融危機と今回が異なるのは)当時の金融危機が数年かけて起きたのに対して、今回はものの数ヶ月、数週間の間に起きているということだ。

* * *

しかし住宅ローンの返済に苦しんでいるのは、一般的なホーム・オーナーだけではない。全米でも観光ブームと「ギグ・エコノミー」のブームの波に乗って、不動産物件を複数購入しAirbnbなどのサイトで短期滞在者用に貸し出すビジネスが盛んとなっていた。

Airbnbのブライアン・チェスキーCEOは、武漢ウイルスにより宿泊の予約がキャンセルされた家主に対して2億5000万ドルの救済を行うと記す書簡を3月30日に発表した。救済の対象となるのは3月14日〜3月31日にチェックインする予定だった予約であり、キャンセル規約により家主側が受け取るはずだった手数料の25%をAirbnbが支払うというもの。支払いは4月から順次行われるとこの書簡は記している。

さらにチェスキーCEOは、これとは別に1000万ドルの「スーパーホスト救済基金」を立ち上げるとも記している。

自宅を貸し出している「スーパーホスト」の中で住宅ローンの返済に助けが必要なホストたち、そして長年の賃貸経験がある(優良な)ホスト(がこのスーパーホスト救済基金の対象である)。当社の社員たちが自腹で100万ドル分の寄付を行いこの基金を始めた。そしてジョー、ネイト、そして私が個人的に残りの900万ドルを寄付している。4月から、ホストたちは最大5000ドルまで補助金申請を行うことができる。この補助金は返済される必要がない。

さらに興味深いのは、世界に400万人いるとされるAirbnbのホストのうち、10%が「スーパーホスト」とされ、その多くが複数の短期賃貸物件を購入するために自宅を担保に貸し付けを受けているということだ。

旅行業界がフリーズしている中、こうしたスーパーホストの多くにとって3月の家賃収入は激減した。彼らの多くが、この先数ヶ月間以内に住宅ローンの返済ができなくなる可能性がある。AirbnbのチェスキーCEOがスーパーホストたちの救済を行わざるを得ない理由は、こうしたホストの中にAirbnbで複数の物件を貸し出すためにレバレッジをかけ多額の借金をしている人たちがいるためだ。

このように自宅を二番抵当に入れるなどして多額の借金を抱えたスーパーホストたちこそ、今年、住宅市場のバブルを崩壊させる引き金を引く最初のドミノになる可能性がある

スーパーホストは、一軒の物件しか所有していない場合もあれば、複数の物件を購入し運営している場合もある。その場合、かなりのレバレッジがかけられた投資を行っているのが一般的だ。観光客が激減し、家賃収入が途絶える場合、彼らは難しい決断を迫られることになる。それは、住宅ローンの返済を焦げ付かせるか、返済の延期を申請するか、もしくは物件を清算して手元資金を厚くすることだ。こうした決断を、全米のみならず世界に散らばっている数万人のAirbnbホストたちが同時発生的に行うことになる。そしてこのことは、この先数ヶ月以内に住宅市場で物件が強制的に清算される引き金を引き、そのことで住宅市場で買い手がつきにくくなるという、不動産の現金化が困難になる状況を生み出す可能性がある。

こうした恐怖のシナリオが、すでにツイッター上ではささやかれ始めている。

https://twitter.com/realwillmeade/status/1244772639903809539

【訳】Airbnbバブル。

一人の人物が暴露:「私の近所の人はAirbnbのスーパーホストだ。彼女は他のホストたちとフォーラムで語っている。彼らの多くが10件以上の住宅ローンを抱えている。(しかし)彼らの物件に宿泊予約をしているのは0人。彼らは現金不足に陥っている」

https://twitter.com/mattstratford/status/1244939913331724293

【訳】複数の物件を持っているAirbnbのスーパーホストに同情するのは難しい。少なくとも英国では、住宅価格はとても高騰しており普通の所得の人々にとっては手が届かないものになっている。価格調整の時期にきている。

【訳】シカゴのダウンタウンにある湖を見下ろす多くのマンションについて知っている。(これら物件は)高級なビジネス旅行者向けにAirbnb物件となっている。

毎月の管理費が700ドル〜1000ドルもかかり、そのうえに高額な固定資産税がかかる。そのため、たとえ彼らが住宅ローンの支払い延期を行ったとしても、彼らは依然としてとても不利な立場に置かれている。

2008年のサブプライム住宅ローン危機がそうだったように、家賃収入が途絶えた家主たちも住宅ローンの支払いに困りサジを投げざるをえない状況に追い込まれた。過剰なレバレッジのかかった物件を抱えるAirbnbのスーパーホストたちも12年前の家主たちと同じである。そして当時から、誰も何の教訓も学んでいない。AirbnbのチェスキーCEOが発表した書簡により、奇しくも次に不動産市場を暴落させることになるのは、物件を投げ売ってでも手元資金をかき集めないといけないAirbnbのスーパーホストたちであるかもしれないということが今回明らかとなった。

【訳】もしあなたがAirbnbのスーパーホストであり、その所有する物件について住宅ローンをまだ支払っている場合、あなたは一生に一度の財政的打撃を受ける一歩手前にいる。

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