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【逆オイルショック】サウジアラビアが米国に仕向けた「原油爆弾」:今後その大打撃を受けることが予想される世界8カ国

【逆オイルショック】サウジアラビアが米国に仕向けた「原油爆弾」によりNY原油先物は史上初のマイナス価格:今後その大打撃を受けることが予想される世界8カ国

Photo via Pixabay

 

4月20日(月曜)、史上初めて原油価格がマイナスに転じた。その主な原因は、コロナ・パンデミックによって原油の需要が下がる中、供給側の産油国が減産に応じず、原油がだぶついているいためと報じられた。過剰に原油が生産され続けた結果、原油の貯蔵スペースが満杯近くになっているため、先物取引の満期直前になって買い手がつかないという珍現象が生じた。それにより、物理的に原油を引き取ることができない投資家たちが、費用を払ってでも原油を投げ売らざるを得ない状況が発生した。(これについてはここで詳細を報じた。)

 

 

■ サウジアラビアが仕掛けた「原油爆弾」

 

しかしパンデミックと景気後退で原油の需要が激減していることに加えて、原油市場をさらに混乱させている要因がある。それはサウジアラビアとロシアだ。ロシアがサウジアラビアとの間で開始した原油の価格競争は、プーチン大統領による自作自演、というのは以前ここで報じた。そしてサウジアラビアも、アメリカのシェールオイル産業を潰すために意図的に市場を混乱させるよう仕掛けている

 

その証拠に、サウジアラビアはこの先数週間で5000万バレルにものぼる原油を米国に送りつけている。これは一般的な1ヶ月分の輸出量の7倍である。このニュースは、ロイター通信とMarineTrafficが報じた。

 

輸送データによると、20隻以上のスーパータンカー(1隻で200万バレルの石油を積載できる容量がある)が、米国の港湾(特にメキシコ湾岸)に向かっている(以下はそれを示した地図)。これらのスーパータンカーに加えて、サウジアラビアがチャーターした3隻のタンカーが、現在メキシコ湾に停泊中である。

 

(Image from MarineTraffic)

 

この報道を受けて、ヘッジ・ファンド投資家のカイル・バス氏は、怒りに満ちた次のツイートを投稿している。

 

【訳】サウジアラビアとロシアは、アメリカのシェール・エネルギー企業に対して宣戦布告した。彼らは、アメリカが自立してエネルギー供給できることに不満だったようだ。貯蔵スペースは満杯・・・歴史上最大の過剰供給・・・サウジは、我々に5000万バレルの原油爆弾を送りつけている。期近6月物の原油価格はどれくらいのマイナスになるだろうか?

 

(引用部分)

 

実際は24隻の巨大スーパータンカーが、合計5040万バレルを積載している。これらは48日間にわたって輸出され、日量平均105万バレルが出航した。

 

マダガスカルからブラジルの間に見える全て(の点)は、5月に(米国に)到着予定である。

 

 

こうした到着予定の大量の原油の一部を貯蔵するため、すでに米国内の貯蔵スペースは予約で埋まりつつある。そのため、アメリカWTI原油先物の期近5月物に買い手がつかなくなった。

 

こうしたサウジアラビアが仕掛けた「原油爆弾」は、アメリカ政府をも激怒させた。早速、アメリカ政府関係者は、サウジからの原油タンカーを入港拒否するか、それらの原油に対して関税をかけることを検討していると語っている

 

テッド・クルーズ上院議員は、今週火曜、ツイッターでサウジ宛に次のメッセージを投稿している。

 

【訳】サウジの原油を4000万バレルも積んだ20隻のタンカーが、米国へ向かっている。これは一般的な1ヶ月の量の7倍である。それと同時に、原油先物は暴落しており、数百万件ものアメリカの雇用が危険にさらされている。私からサウジへのメッセージ:タンカーをとっとと反転させろ

 

こうした米国の反応を受け、2人の情報源とされる人物は、もし米国がサウジアラビアから原油の輸入を一時停止した場合、サウジアラビアはタンカーを別の最終目的地へと航路変更することを模索していると語っている。

 

欧州とアジア市場で原油取引を行っているトレーダーたちは、もし米国が輸入禁止措置を取った場合、サウジアラビアはタンカーを他の市場へ回すだろうと語っている。そうなると、今度は欧州やアジア市場で原油の貯蔵スペースが満杯になる圧力が一気に高まることになり、これら地域における原油の基準価格を押し下げる要因になる。

 

石油取引を行う国際貿易会社は、ロイター通信に対して次のようにコメントしている:

 

欧州市場は満杯のようだ。しかしもしサウジが本当に安い価格レベルで提案をすれば、買い手は引き受けるだろう。・・・貯蔵スペースが空いているところはまだいくつかある。もしくは、一定期間、タンカーに貯蔵したまま(港湾に)停泊させておくところがあるかもしれない。

 

先月、多くのタンカーが予約された際、1隻あたりのレートは、1日あたり25万ドル(約2600万円)だった。しかし予約が殺到したことでそのレートは1日30万ドル近くにまで高騰していた。ただし、今週そのレートは落ち着き、1日15万ドルにまで下がっている。いずれにしても、貯蔵スペースが満杯になり、タンカーに原油を積んだまま待機しないといけない状況になれば、日々多額のコストがかさむことになる。サウジアラビアがアメリカのシェールオイル産業に仕掛けた「原油爆弾」は、サウジにとっても大きなギャンブルとなっている。

 

ロイター通信によると、サウジアラビアからの原油を買い取る大手米国企業のほとんどは、米国西海岸に位置している。エネルギー情報局(EIA)によると、米国がサウジアラビアから輸入する原油の半分は、西海岸が最終目的地である。4月10日時点で、西海岸の貯蔵スペースはすでに65%が埋まっており、現在ではほぼ100%が埋まっている。アメリカ国内でサウジアラビアからの原油が2番目に多く到着するメキシコ湾岸では、2週間前の時点で約55%が埋まっていた。

 

>2ページ目を読む

「原油価格は再び暴落しマイナス40ドル以下へ」

 

 

 

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