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中国銀行の6万人以上の個人投資家が阿鼻叫喚|原油価格の暴落により約1000億円の投資資金を失い、さらにその数倍の借金を背負い込むことに

中国銀行の個人投資家が阿鼻叫喚|原油価格の暴落により約1000億円の投資資金を失っただけでなく、その数倍の借金まで背負い込むことに

4月20日のWTI原油先物価格が史上初のマイナスをつけた(Chart via Bloomberg)

4月20日、史上初めて原油価格がマイナスに転じたことで、米国最大の原油ETFであるUSOに投資していた投資家たちは数十億ドル(数千億円)にものぼる損失を被った。しかし大損をしたのはアメリカの投資家だけではない。チャイナ国内で原油関連商品に投資していた個人投資家にも多額の損失が発生している。しかも、これら個人投資家の多くが、商品の特性を知らずに投資していたため、投資資金の元本を失っただけでなく、銀行に対して借金を背負う羽目に陥っている。

中国四大商業銀行の一つである中国銀行が、全国のデータを統合して行った最新の見積もりによると、米国の原油先物に連動した金融商品の暴落により、自行の顧客である個人投資家に発生した損失額は当初の見積もりの11倍に増加し、70億人民元(約1058億円)以上に達するとブルームバーグが報じた。中国銀行は、先週半ば、国内の個人顧客に発生した損失はわずか6億人民元(約90億円)と見積もっていたが、1万以上ある同行の小売窓口からの情報を集約した結果、この損失額の見積もりを大幅に増加することとなったと情報源の人物は語った。しかしこの損失額の見積もりも最終的な数字ではなく、今後、中国銀行が自行の支店から集約したデータを精査するに伴い、修正・変更される可能性が残っている。最終的な損失額は、70億人民元(約1058億円)よりもずっと大きくなる可能性が高い。

中国銀行の個人投資家に発生した損失は、米WTI原油先物の期近5月物が発生源となっている。中国銀行は、アメリカの原油先物をベースにした金融商品を扱っており、そのままずばり『原油宝(原油寶)』という商品名がつけられている。期近5月物をベースにした『原油宝』が、4月20日、アメリカの原油価格の暴落と連動して1バレルあたりマイナス37.63ドルまで大幅に下落した。

原油価格が暴落する前に、米WTI原油先物の期近5月物の契約を翌月に「ロールオーバー(繰り越し)(*)」する手続きを行わなかった(行えなかった)中国銀行は、自行の顧客に大損を発生させてしまった。それだけでなく、顧客の中には中国銀行から借り入れを行いそれを投資に充てる「マージン取引」を行なっていた顧客もいるため、銀行に対して負債が発生しているケースもある。数百人にものぼる投資家たちは、インターネット上で抗議活動を行なっており、中国銀行が行なっていた原油先物契約のロールオーバー(繰り越し)の手続きに過失があると追及しており、銀行も損失額の一部を肩代わりするべきであると要求している。

(*)「ロールオーバー」については先週掲載したこの記事を参照

中国銀行は、2018年1月に『原油宝』を販売開始して以来、その運用資産残高や実績について情報を公開していない。しかし4月20日にアメリカの原油価格が歴史的な暴落を記録した翌日、『原油宝』の取引を一時停止している。中国建設銀行や交通銀行といったチャイナ国内の他の大手銀行についても、似た金融商品の販売を一時停止している。これら金融商品は、値動きの激しい原油を投機的売買の対象にする個人投資家たちの間で人気が高まっていた。

財新は、6万人以上の顧客が中国銀行の『原油宝』に投資していたと報じており、これら投資家たちはマージン取引で42億人民元(約635億円)の損失を出したため、中国銀行に対してさらに58億人民元(約877億円)の支払い義務が生じている報じている。中国銀行は、先週水曜、投資家たちは依然として月曜につけたWTI清算値で投資ポジションを清算する必要があると語っており、同銀行はすでに全ての5月物の契約を清算したとも語った。

一方、多額の負債を負った投資家たちの中には、彼らが負った損失をそのまま銀行の責任にしようと、その後数日間で蒸発した人たちもいるのではないかと報じられている。インターネット上で出回っている文書によると、1人の投資家はこの商品に390万人民元(約5890万円)を投資し、920万人民元(約1億3900万円)の損失を負ったと財新は報じている。この投資家は、原油価格の暴落により、投資の元本を失っただけでなく、さらに530万人民元(約8000万円)の借金を背負ってしまったことになる。

先週末の土曜、ブルームバーグは、全財産を『原油宝』に投資し、一瞬のうちにそれを全て失ってしまった個人投資家にインタビューを行った記事を掲載している

アシアン・チェンさん(26歳)は、彼女の携帯電話の画面上で次々と起きる出来事に信じられず愕然とそれを眺めていた。数週間前、彼女とそのボーイフレンドは、2人の全財産である約1万ドル(約107万円)を、国営銀行である中国銀行が『原油宝』として販売する商品に投資していた。

夜が更けるにつれ、アシアンさんはその全額を失ってしまうかもしれないことに心の準備を始めていた。深セン市の夜10時(ニューヨーク時間の午前10時)、彼女は就寝する前に最後にもう一度だけ彼女の携帯電話をチェックした。その時の価格は11ドルだった。彼女たちの貯金の半分が吹き飛んでいた。

2人が眠りについた頃、一層深刻な値崩れが起きていた。矢継ぎ早に史上最低価格が更新された――1990年代のアジア通貨危機以来の最低価格、1970年代の石油危機以来の最低価格、史上初のマイナス価格。

そして20分間隔で金融市場の歴史上ありえないようなことが次々と起こり、価格はほとんど誰も現実にはあり得ないと思っていたレベルにまで下落した。世界中で、サウジの皇太子たちやテキサスの石油試掘者(ヤマ師)、ロシアの新興財閥たちは、世界で最も重要な商品がこの日マイナス37.63ドルで取引を終えたことを恐怖で見守った。この値段は、手元から1バレルの原油を誰かに引き取ってもらうためにあなたが支払わなければいけない金額だ。

* * *

大手ブローカーであるエネルギー・グループのCompagnie Financiere Tradition SAで代表取締役社長を務めるキース・ケリー氏は次のように語っている。「これはショッキングな出来事だった。目の前に見ているものがちゃんと見えているか?目の錯覚が起きているのか?」と。

原油に強気の投資をしていたアシアンさんは、翌朝目を覚まし、貯金が全額なくなっていることに気がついた。この日朝6時に、中国銀行からテキストメッセージが届いた着信音で彼女は目を覚ました。そのメッセージには、彼女とボーイフレンドがこれまで貯めたお金の全額を損失したことに加えて、2人が銀行に対して借金を負った可能性があることが記されていた

彼女はブルームバーグのインタビューに次のように語っている:

私たちは、原油価格が急落し始めたのを見た時、私たちのお金を全部失ってしまうかもしれないということに心の準備をしました。・・・(でも)海外の先物価格に注意しないといけないことや、契約のロールオーバーということが何かすら、全然知らなかったのです。

当然、原油価格がマイナスに転じることを想像していた投資家など誰1人としておらず、その商品に銀行から借金をしてロング・ポジションの投資をしていた人たちは怒り狂っている。しかし複数の銀行のトレーダーたちは、十分前もって清算日は設定されていたと財新の取材に語っている。1人の銀行トレーダーは、今回の出来事が「この上ない状況で取引の仕組みが極限状態に直面した事態」と語った。

何人かのトレーダーは、財新の取材に対して、投機的に原油取引を行っている投資家たちの中には、原油価格が1バレル20ドルを下回ったときに「下値(下げ相場)で買う(buy on the dip)」という投資手法をしようと試みたため、暴落に巻き込まれてしまったと語った。彼らは、原油価格がマイナス価格にまで落ち込むことがあり得ることを考えていなかった。その結果、原油商品にレバレッジをかけてマージン取引していた投資家たちは、銀行に多額の借金を背負うことになってしまった。

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