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自由市場資本主義には二度と戻れない|米資産運用会社大手グッゲンハイムのマイナード氏が投資家向けの書簡で予言

自由市場資本主義には二度と戻れない|米資産運用会社大手グッゲンハイムのマイナード氏が投資家向けの書簡で予言

スコット・マイナード氏(Photo via Guggenheim Investments)

 

人々は経済を崩壊させた責任を互いになすりつけ合う一方で、全米の失業率は最大30%にまで高まり、年末まで二桁の失業率が続く可能性があるとマイナード氏は記している。

 

実際、ホワイトハウスの経済アドバイザーであるケビン・ハセット氏も、今週CNBCに出演し、今期の失業率は約16〜17%にまで高まるだろうと発言しており、第2四半期のGDPは「大恐慌以来最低のマイナス値」になり、マイナス20〜30%の範囲内になる可能性があると語っている(以下はそのインタビュー動画)。

 

 

 

 

さらにマイナード氏は次のように記している:

 

失業率が(2008年の)世界金融危機以前のレベルにまで戻るのに10年近くかかった一方、現在の雇用市場を襲った衝撃は当時よりも3倍〜5倍も深刻になる可能性がある。

 

一方、全米の国民の半数が500ドル(約5万円)以下の貯金しかない状況であるため、消費者心理も大打撃を受けている。

 

(経済が再開され)すぐに自動車を購入し映画館へ行くような人はほとんどいないだろう。各世帯が被ったダメージはあまりに深刻であるため、この先10年近く生活水準を損なうことになるだろう。

 

零細企業および大企業を救済しようとする試みも失敗するだろうとマイナード氏は記している。その理由は、ワクチンが安全かつ広範に配布されるまでのコロナウイルスが経済にもたらすマイナス効果が考慮に入れられていないためである。

 

私は連銀を責めることはできない。彼らは危機的状況の中、真面目に彼らに与えられた権力を全て使ってあらゆることを行おうとした。

 

ただし、連銀は財務省と協力し、経済的に採算の合わないゾンビ企業や、10年近く借金をしてまで自社株買いを行い企業幹部や投資会社といったインサイダーに富を与え続けた大企業を税金で救済する政策を実施している。これに対して、米国民からは大きな非難を浴びている

 

国民の生活水準が下がることに加えて、解雇される人たちの大部分が、こうした預貯金のほとんどない半数の人口にあたるということが状況をさらに悪化させることになるとマイナード氏は記している。

 

時給の低いサービス産業に従事する若年層の労働者たちは、経済的な痛みの矢面に立っている。こうした人たちは、収入が途絶えることにもっとも準備ができていない人たちでもある。消費がさらに急激に落ち込み、解雇される人々が増えると、その経済的痛みはさらに複合的に増幅することになるだろう。

 

一方、あらゆる場所で企業のキャッシュフローも途切れがちになり、収益の回復は(産業によって異なり)均一には回復しないだろう。すでに過剰な借金を背負った法人部門では、企業はさらなる借金を蓄積するよう促されているため、債権(クレジット)にはほとんどプラスの成果はないだろう。こうした失敗が、最終的な経済回復を阻害し、さらに経済回復を不均一なものにするだろう。

 

 

賃金の低い労働者たちは経済危機の矢面に立たされる

世帯別の実質的正味財産における累積増減額。純資産の%分布毎の比較

ー上位1% ー次の9% ー次の40% ー最下位50%

 

* * *

 

再び連銀について、マイナード氏は次のように記している;

 

中央銀行は、平時に戻ることは決してないだろう。連銀のバランスシートはわずか約1ヶ月間で4.5兆ドルから6.6兆ドルまで拡大した。まもなく9兆ドルを超えるだろう。

 

 

マイナード氏は、この点についてツイートでも投稿している。

 

【訳】我々の中央銀行は、平時に戻ることは決してないだろう。連銀のバランスシートは、わずか約1ヶ月間で4.5兆ドルから6.6兆ドルまで拡大した。まもなく9兆ドルを超えるだろう。

 

しかしこの点についてアメリカの連銀(FRB)のみが量的緩和を行なっているわけではない。独立系の投資銀行顧問会社であるEvercore ISIのエド・ハイマン氏も次のようにまとめている。

 

G7の中央銀行は全体として、3月の金融危機の際、1.4兆ドルの買い入れを行った。年率17兆ドルという規模は、前回2009年4月に打ち立てられた月間記録の5倍近くにものぼる。

 

そして我々はいさかい(recrimination)の時代に突入する。それは幅広い政治的かつ社会的な意味合いがあるとマイナード氏は言う。

 

死者数が増えるに従って、それは格好の政治的な餌として利用されるだろう。「これらの人々は、政権が犯したミスによりコロナウイルスで死亡した」と言うことは効果的な戦術だ。アメリカ南北戦争の後、政治家たちは血染めのシャツのイメージを使い、戦死した北軍兵士を称えるよう有権者に呼びかけ、共和党に投票するよう要求した(訳者注:当時、北部側が共和党の地盤であり現在とは逆の状況だった)。当然の報いか否か、現在の共和党政権はこの議論をかわすのに苦労するだろう。フーバー政権が1930年の経済崩壊の結果を抱え込んだように、今回のパンデミックは政権の失敗であると見られることになるだろう。

 

マイナード氏の結論は、つまり連銀(中央銀行)が米国内の血なまぐさい対立の原因を作っているということである。

 

最終的に、現在横たわっている所得と富の巨大な不平等を解消するために、ポピュリストによる反乱が起きるだろう。まもなく、健康保険や雇用保障といった社会のセイフティー・ネットを下支えするよう、政策立案者たちに対する圧力が高まるだろう。もしくは(生活水準を維持するのに必要な最低限の)生活賃金を法制化するような圧力が高まるかもしれない。私の唯一の懸念は、長期的な成長にとって生産的ではないような方法でそれが行われるということである。こうした政策は、全体的な生産性を下げてしまうインセンティブを生んでしまう。そうではなく、政策立案者たちは、経済成長を回復し不平等を減らすよう、経済における抜本的な改革を行うべきである。

 

 

確かに政治家たちはそうするべきである。しかし彼らはそうしないだろう。マイナード氏の議論は正論ではあるが綺麗事でしかない。彼は自分がため込んだ莫大な資産を、どれほど庶民に分配しても良いと考えているのだろうか?

 

マイナード氏はさらに次のように記している。

 

(量的緩和やCPの買い入れなどの)政策の中には、効果を発揮するものもあるだろうし、そうではないものもあるだろう。しかしこうした政策は、何らかの形で永遠に持続されることになるだろう。

 

本当にそうだろうか?中央計画経済を行っていたソビエト連邦は結局崩壊した。形を変えた中央計画経済に突入した米国も、永遠に持続しないのは歴史が証明している。

 

そしてマイナード氏による「予言」は、CP(コマーシャル・ペーパー)や社債の購入を増額し、国債の買い入れ上限を撤廃し無限に買い入れる発表を行なった日銀など、全て日本の状況に置き換えて読むことができる。

 

マイナード氏による書簡の全文はここで公開されている

 

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