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巨額不正会計が判明したワイヤーカードの最高執行責任者(COO)がロシアに国外逃亡と報道

巨額不正会計が判明したワイヤーカードの最高執行責任者(COO)がロシアに逃亡と報道

ヤン・マルサレク前COOの3冊のオーストリア・パスポートの写真(Photo via bellingcat.com)

ドイツにおいて戦後最大の不正会計事件と言われるワイヤーカードのナンバー2である最高執行責任者(COO)のヤン・マルサレク氏(Jan Marsalek)が、ロシアに国外逃亡したと報じられた。

近年、ホワイトカラー犯罪者の国外逃亡が後を絶たない。マレーシアの公的基金が支援する政府系投資ファンド1MDBから45億ドル以上を抜き取っていた巨額汚職の主犯格で、実業家でもあるジョー・ロー被告は、チャイナに逃亡し中共政府の保護下にあったと報じられている。実際、1MDBの汚職事件について香港を拠点に報じていたウォールストリート・ジャーナル紙の数人の記者に対して、チャイナ政府のスパイは彼らへの脅しや監視まで試みていたと報じられている。

https://twitter.com/BFidr/status/1286626994009059329

最近の逃亡事件で世界を騒がせたのは、記憶にも新しい日産自動車の前会長であるカルロス・ゴーン被告である。

そして新たに、ワイヤーカードのヤン・マルサレク最高執行責任者がロシアに逃亡したと報じられた。同社の前最高経営責任者であるマーカス・ブラウン氏は、逮捕された後に現在は仮釈放されている。ヤン・マルサレク最高執行責任者は、一時停職となった数日後の6月22日に解雇されたと報じられている

ワイヤーカードが破産申請し、前CEOが逮捕されて以降、ヤン・マルサレク前COOの所在について様々な憶測が流れていた。

それから1ヶ月近くが経ち、ドイツの主要な日刊商業経済紙『ハンデルスブラット(Handelsblatt)』は、ヤン・マルサレク前COOがロシアにいると報じた。しかも同氏がロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の保護下にあると報じた。GRUはあらゆる悪事の張本人であると西側の諜報機関から名指しされており、米国の2016年大統領選挙においてヒラリー陣営のメールサーバーにハッキングを行ったことや、ロシアの元スパイであったスクリパリ氏と彼の娘を英国で毒殺しようとしたのもGRUであると報じられている。

ワイヤーカードのヤン・マルサレク前COOは、どのようにして巨額の資産を守りながら国外逃亡することに成功したのだろうか?

ワイヤーカードはいずれ破綻すると予見し、同社株の空売りを仕掛けていた投資家たちがいるように、ヤン・マルサレク前COOもまたワイヤーカードの破綻を予期していた。彼は、在職中から自己資産をビットコインに替え、ドバイに送金していた。『ハンデルスブラット(Handelsblatt)』はさらに次のように報じている:

ハンデルスブラット(Handelsblatt)は、起業家、裁判官、そして外交官たちの社交界から次の情報をつかんだ。かつて、マルサレク氏は、巨額の資金をビットコインでドバイからロシアに持ち込んだと噂されている。ワイヤーカード社は、ロシアで不審な業務を行っていた。

・・・(中略)・・・

彼が国外逃亡した6月18日、マルサレク氏は、チャーターされたエンブラエル・レガシー650機に乗ってオーストリアのクラーゲンフルトから、エストニアの首都タリンを経由してベラルーシ共和国の首都ミンスクへ飛んだ。ロシアの指導者層とベラルーシ共和国の独裁者アレクサンドル・ルカシェンコ大統領との間に政治的対立が存在しているため、マルサレク氏をこの隣国に残しておくことはリスクが高すぎるとおそらくGRUは判断した。そのため彼をロシアに連れてくるほうが良いと判断した

人々との何気ない会話の中で、マルサレク氏はしばしば自分が秘密諜報員であるかのように振る舞っており、シリアのパルミラを複数訪問したりリビアへの投資でGRUと緊密に協力したことを匂わせていた。40歳のマルサレク氏はロシアへもたびたび訪問しており、その際に6つのパスポートを使っていた。

ドイツの諜報機関がマルサレク氏について多くを知ることになったのは、ここ数週間のことである。6つのパスポートを持っていたマルサレク氏は、シリアおよびリビアにおける秘密工作であった投資案件の責任者と言われている。マルサレク氏は、ロシア政府の表看板(代理人)だったのだろうか?当然、EUは彼をそのようにみなすだろう。ロシア連邦保安庁(FSB)はマルサレク氏の行動を何年にもわたってモニタリングしていたと報じられている。マルサレク氏はオーストリア生まれであり、正式にはドイツ国民ではない。

彼は過去10年間にこの国(ロシア)に60回以上も渡航している。彼の移民ファイルは597ページにものぼる。過去5年間に我々が行ったことがある同類の調査で、どんな外国人をも凌駕する量だ」とBellingcat(*)の調査員たちは記している

マルサレク氏は、頻繁にチェチェンにも渡航していたと言われている。チェチェンは元ロシアの独立紛争共和国であり、犯罪と資金洗浄が横行していたことで悪名高い。Bellingcatによると、オーストリア人であるマルサレク氏のすべての渡航歴をモニタリングしていたロシア連邦保安庁(FSB)は、2017年にマルサレク氏が(ロシアを)出国することを拒否したことがあると言われている。

(*Bellingcatは調査報道を行っているジャーナリズム・ウェブサイト出典

ドイツ国内では、野党がメルケル首相と彼女の連立政権を攻撃する材料としてこうした報道を利用している。ドイツの国会議員らは、メルケル政権がワイヤーカードの不正行為を隠蔽するために積極的に関与したのか明らかにするために、議会による調査を要求している。

ワイヤーカードの不正会計事件は、単なる粉飾会計事件でも売り上げの水増しでもなく、政府当局による関与や外国の諜報機関を巻き込んだ根の深い問題となっている。そしてこの複雑怪奇な金融事件に、ロシア政府の関与という新たな要素が付け加えられた。

ダンスケ銀行やその他のスカンジナビア諸国や中央ヨーロッパの銀行が資金洗浄することに関わった何千億ユーロにものぼる資金は、すべてロシアの犯罪組織や集団投資スキーム(CIS)にたどり着くと噂されている。こうした西側諸国の銀行で洗浄された資金の一部は、プーチン一族の資産であるとの報道もある。

ドイツの金融規制当局であるドイツ連邦金融監督庁(BaFin)は、自国のフィンテック業界で「金の卵」であるワイヤーカードを守るために、同社の不正会計疑惑を調査し報道し続けたフィナンシャル・タイムズ紙のジャーナリストたちを、逆に株価操作の疑いで捜査対象にしていた。ドイツの政治指導者たちは、ワイヤーカードの不正を防ぐどころか助長させていた責任が問われることは必至であり、その責任をどのように回避しようかと相当焦っているはずだ。そこに今回、ロシア政府がマルサレク前COOをかくまっているとの報道が行われた。ドイツの政治家たちはこれを渡りに船とばかりに、ロシアをスケープゴートにしてワイヤーカードの不正の責任をロシアに押し付ける可能性が高い。

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