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空売りの名手ジム・チャノス氏がワイヤーカード株の空売りで1億ドルの利益を確定|次に彼が空売りを仕掛けているのは今月トヨタの時価総額を抜いたあの新興企業

空売りの名手ジム・チャノス氏がワイヤーカード株の空売りで1億ドルの利益を確定|次に同氏が空売りを仕掛けているのは今月トヨタの時価総額を抜いたあの新興企業

ジム・チャノス氏(Photo via MARKETWATCH PHOTO ILLUSTRATION/BLOOMBERG)

「スターバックス・キラー」として人気を博していたチャイナのコーヒーチェーン大手Luckin Coffee(瑞幸珈琲)は、今年4月、粉飾会計処理を行っていることを認め、その後の6月29日、ナズダックから上場廃止となった。

この粉飾会計処理については本サイトでもこのように報じていた

ニューヨーク現地時間の4月2日、チャイナ国内で「スターバックス・キラー」として人気を博していたコーヒーチェーン大手Luckin Coffeeは、同社COOのジアン・ジウ氏と数人の社員が昨年第2四半期から粉飾会計処理などの不正行為を行っていたと発表した。この日、同社の特別委員会が取締役会にこの内部調査結果を報告した。この発表を受けて、同社の株価はこの日の午前中に85%下落した。

同社が水増ししていた売り上げは22億人民元(約330億円)にのぼると報じられている。

空売り専門の投資会社であるKynikos Associatesの創業者、ジム・チャノス氏は、すでにLuckin Coffeeへの空売りを仕掛けていたため、株価が大暴落した4月に手持ちのポジションを全て清算し巨額の利益確定を行っていたこともここで紹介していた

そして7月24日(金曜)、ジム・チャノス氏は、ドイツで戦後最大の粉飾会計事件と言われるワイヤーカードに対しても空売りを仕掛け、1億ドルの利益を出していたと報じられた。フィナンシャル・タイムズ(FT)紙がこれを報じた

空売り業界で有名人のジム・チャノス氏は、ワイヤーカードへの空売りポジションを昨年から買い始め、FT紙が同社の詐欺疑惑について報じるとさらに空売りポジションを買い増していた。FT紙はすでに昨年の時点でワイヤーカードが売り上げを不正に水増ししている可能性があることを指摘していた。

ワイヤーカードが破産申請して破綻したことは、ジム・チャノス氏やその他の数少ない懐疑派の人々にとっては大きな勝利となった。しかし、5年以上もワイヤーカードに対して深刻な疑惑が持ち上がっていたにもかかわらず、ほとんどの金融業界や金融系メディアの関係者たちはそれを本気に取り上げなかった。これと似たことが、現在とある企業に起きていることに気がつくだろうか?

ワイヤーカードについて5年以上も疑惑が報じられながら、ついに今年同社の粉飾会計が明らかになる瞬間まで、ほとんどのメディアや投資家たちはそれを否定し続けてきた。

ワイヤーカードを取り巻く過去5年間の報道を振り返ると、現在、飛ぶ鳥を落とす勢いであるEVメーカーのテスラ社との類似性に気づかざるを得ない。

実際、チャノス氏は、テスラ社に空売りをしかけていることを認めている。ただし、テスラはワイヤーカードとは異なると同氏は前置きをしている。テスラは、「アグレッシブな会計処理とその他の方法で、その業績をピカピカに磨き上げている」とチャノス氏はFT紙に語っている。

ワイヤーカードについて疑念を抱いていたのがチャノス氏だけではなかったのと同じように、テスラに懐疑的なのは彼だけではない。今週発表されたテスラの収益報告書について、アナリストのゴードン・ジョンソン氏が批判を行なっている。ジョンソン氏は、テスラが同社の四半期データを見栄えの良いものにするために「会計ゲーム」を行なっていると主張している。

ジョンソン氏は、テスラ社が今月、4四半期連続の黒字報告をするだろうと予想しその通りとなった。しかし、この黒字報告には会計トリックがある。CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を規制で売買可能とする「クレジット」を、もしテスラが4億2800万ドル分も売却しそれを売り上げに計上していなければ、同社の純利益はかなり異なる結果であったと指摘されている。

【訳】時価総額3000億ドル企業

$TSLAQ

グラフタイトル:テスラGAAP会計基準による純利益から自動車規制クレジットを差し引いたもの

(2019年第3四半期を除いて、直近の過去5四半期赤字)

そしてこうした「会計ゲーム」は、最終的にいずれは企業に悪い結果をもたらすことになる。

ここで振り返らなければいけないのが、ワイヤーカードの事例である。先月、ワイヤーカードが2019年年次報告書の発表を延期し、そして同社の監査法人であるアーンスト・アンド・ヤング(EY)が19億ユーロ(約2350億円)の現金残高を確認することができなかったと公表した直後に、ついにワイヤーカードの株価は大暴落した。

このとき、ワイヤーカードは次の声明を発表していたことが報じられていた:

「偽造された預金残高証明書が提出されたという兆候は複数あった。(そして偽造された残高証明書のおかげで)その(架空の)預金残高が存在しているという誤った印象を生み出し、もしくはワイヤーカードのグループ企業の利益をまとめた複数の銀行口座を保有しているという誤った印象を生み出していた。ワイヤーカードの管理委員会は、状況を明らかにするために監査人らと協力して集中的に取り組んでいる」と声明は記している。

この声明が発表された後、ワイヤーカードの前CEOのマーカス・ブラウン氏は逮捕され、同社は破産申請している。

FT紙が何度も報道してきたように、ドイツの金融規制当局は、ワイヤーカードによる粉飾決算を助長させるような行動を行っていたことが知られており、投資家たちに対してワイヤーカードの空売りをさせないよう妨げるようなことも行っていた。さらには、ワイヤーカードの不正会計を嗅ぎ回るFT紙の記者対して、インサイダー取引の疑惑をかけ彼らを捜査すら行っていた。

空売りの名手であるジム・チャノス氏が、引き続きテスラ株への空売りポジションを保有していることはそれなりの意味を持つ。なぜなら、彼ほど正確に企業の詐欺行為や不正会計を嗅ぎ当ててきた人物は金融業界の中でも多くはないからだ。

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