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【オピニオン】ソフトバンクGによる「資金の還流」スキームに関与したグリーンシル・キャピタルが破綻——金融市場に波紋を起こすシステミック・リスクの懸念あり

【オピニオン】ソフトバンクGによる「資金の還流」スキームに関与したグリーンシル・キャピタルが破綻——金融市場に波紋を起こすシステミック・リスクの懸念あり

レックス・グリーンシル氏(Photo via Flickr)

ベン・ハント筆|2021年3月9日|Epsilon Theory掲載(太字強調はBonaFidr)

 

銀行強盗を行うベストな方法は銀行を所有すること。

 

先週起こったグリーンシル・キャピタル(Greensill Capital)の破綻には、多くのシステミック・リスクが内包されていると私は考えている。特に、グリーンシルとその主要出資者——ソフトバンクとクレディ・スイス——の間における詐欺的な取引が明るみに出るにつれて。しかも、これにはグリーンシルの二番手にあたる出資者——General Atlanticと英国政府といった組織——を考慮に入れなくてもだ。これら組織は全て、本当に危険な状況に置かれている。

これは2019年にバッキンガム宮殿に招かれたレックス・グリーンシルだ(上の写真)。彼はチャールズ皇太子から大英勲章第3位(CBE)を授与された・・・授与の理由は・・・「英国経済への貢献」だ。爆笑だ。

そしてこれが元英国首相のデービッド・キャメロン。この写真の中で彼はポジティブな視線を送っている。彼が友人であるレックス・グリーンシルの会社に「特別アドバイザー」として参加すると2018年に行った発表のために、彼の広報担当がこの写真を選んだ。彼は、同社のミッションであるサプライチェーン・ファイナンスを「民主化」し、「ビッグデータとAIで建設金融を変える」ことを支援することに熱意を抱いていると発表していた。ホワイトペーパーにそう書かれていたのだから、間違いないはずだ。

 

今朝起きて、デービッド・キャメロンは英国の新聞にこんな大見出しを目にしている:

【訳】

英国とオーストラリアで数千もの鉄鋼関連の仕事が失われる危険に グリーンシルの借金に関する紛争の最中

 

英国の起業家サンジーブ・グプタのGFGコングロマリットは、この破綻した金融会社から借金している約40億ドルを慌てて借り換え

 

レックス・グリーンシルが持っている4機のプライベート・ジェット機にただ乗りしてきた人たちは全員、その価値があったことを私は祈るよ。デービッド・キャメロンも含めて。(ちなみに、これらプライベート・ジェット機は全て、グリーンシル・キャピタルが保有するドイツの銀行子会社が購入し、レックスにリースしていた)。

 

これは、ユニコーン企業の市場における「マドフ*の瞬間」なのだろうか?正直に言って、もし数週間前に私がこれを聞かれていたら、決まったストーリーしか報道せず、悪口を言わない2021年という市場の世界で、私は「マドフの瞬間」はあり得ないと答えていただろう。しかし今の私には確信がない。いずれ判明するだろうが、私はこれ(グリーンシル・キャピタルの破綻)は長期化する事態になると考えている

(*バーナード・ローレンス・マドフは、元ナズダック会長でありながら、史上最大のネズミ講投資詐欺<ポンジー・スキーム>を働いた犯人。)

 

どう考えても、グリーンシル(シティグループとモルガンスタンレーの元銀行員であるレックス・グリーンシルが2011年に立ち上げた同名の投資銀行)は、2019年に眉間を撃たれるべきだった。それは、彼らの「サプライチェーン・ファイナンス」による融資(この場合は、英国における「鉄鋼の救世主」であるサンジーブ・グプタの鉄鋼およびエネルギー会社への融資)が、スイスの資産運用会社GAMの110億ドルの旗艦ファンド「アブソリュート・リターン・ボンド・ファンド(ARBF)」を吹き飛ばした年である。

 

これは資本市場と同じくらい古典的な話である・・・グリーンシルはグプタに大金を貸し、グリーンシルはARBFのポートフォリオ・マネージャーであるティム・ヘイウッドを豪華な食事で接待したりプライベート・ジェットで豪遊させた。そして当然、ヘイウッドはグリーンシルがオリジネート(発行)したローンを可能な限り購入した。ARBFの純資産価値の12%に達する金額。爆笑。当然、ローンはその見かけとは異なった。グプタの会社は発表されているほど堅実ではなく、GAMは結局ヘイウッドを解雇し、GAMの株価は暴落した。GAMのCEOは解雇され、多くの人が大金を失った・・・グリーンシルもこれで終わったと思うだろう。いや、これで終わりではなかった。

 

ソフトバンクの孫正義CEOが登場する。彼は、2019年にソフトバンクを通してグリーンシルに15億ドルを投入し、追加で15億ドルをビジョンファンドを通してグリーンシルに投入した。これで彼はグリーンシルの最大の投資家となり、それまで最大の投資家であったGeneral Atlanticの出資比率を15%から7%へと希薄化した。それからお楽しみが始まった。

 

この2019年における救済以降、グリーンシルは何十億ドルもソフトバンクとGeneral Atlanticの関連会社(ほとんどがソフトバンクの関連会社であったが、General Atlanticもかなり匂う報道がここで行われている)に貸している。そしてこのローンは、次にクレディスイスのファンドが購入し、グリーンシルのドイツの銀行子会社がそれを洗浄した。ここで、私が「洗浄した」という場合、私は比喩的に言っているのではない。ドイツの銀行および市場の規制当局である「ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)」は、グリーンシルの銀行免許を一時停止し、刑事訴追のためにこの事件を照会した。

 

この詐欺がどのような仕組みで行われたか、1件の事例がここで紹介されている。繰り返すが、これは資本市場と同じくらい古典的な話だ。2020年初旬、グリーンシルはソフトバンクのポートフォリオ企業であるKaterraに4億3500万ドルを貸した。この企業は・・・えー・・・運用上の問題に直面した。そしてソフトバンクは、昨年12月、2億ドルの追加資本を決済した。グリーンシルは、4億3500万ドルのローンを帳消しにする代わりに・・・(Katerraの)普通株式の5%を取得した。爆笑。Katerra社に対する90億ドルの企業評価は(私がでっち上げているのではなく)、もちろんソフトバンクが決定したものだ。そしてグリーンシルのドイツの銀行子会社は、そのバランスシート上ですべてが順調であると報告した。売上債権を担保にした4億3500万ドルの優先貸出金(シニアローン)は、破産した会社の5%の株式と交換され、損失は報告されなかった。もちろん公明正大に見える!(当然、皮肉で)。

 

常に、銀行強盗を行うベストな方法は銀行を所有することだ。

 

その次にベストな方法は、あなたがオリジネート(発行)したゴミのようなローンを、全て買い取ってくれる巨大銀行を探すことだ。ここでクレディ・スイスが登場する。2019年初旬のGAMの大暴落の後、グリーンシルが何年も前からクレディ・スイスに売っていたローンが、GAMに売っていたローンと同じように胡散臭いものであったことに疑問の余地はなかった。しかしそれでもなお、クレディ・スイスは何もしなかった・・・。実際には、この説明はクレディ・スイスにとってフェアではない。彼らはグリーンシルから証券化されたローンをこれまで以上に購入していた。そして彼らは、自分たちのファンドをこれまで以上に熱心に売り込んだ。

 

ソフトバンクは、2019年にグリーンシルに投資をした後、クレディ・スイスにも5億ドルを投入したことは、単なる偶然だろう。

 

グリーンシルが4ヶ月前に70億ドルの企業評価を得て数億ドルの新規資金を調達した際に、クレディ・スイスがグリーンシルの主要アドバイザーを務めたのは単なる偶然だろう。

 

クレディ・スイスとグリーンシルが、日本のソフトバンクの友人である東京海上という保険会社を見つけ、そこがグリーンシルの貸出ファシリティを(中身がわからないように)包んでくれるおかげで、クレディ・スイスはこのグリーンシルの融資制度を・・・家にいるかのように安全なマネー・マーケット・ファンド(公社債投資信託)として売り出すことができたのは、単なる偶然だろう。

 

フィナンシャルタイムズ(FT)紙は、この100億ドルのクレディ・スイス・ファンド・ファミリーに投資している投資家の重要な言葉を引用している:

私は、仲間の投資家全員が純粋な金銭的利害関係を持つ、独立した協定を結んでいると思っていた。しかし、実際には共同投資家の一部が、自分自身に資金を還流していたことを後で知るという状況を想像してみて欲しい

 

本当に、そのような状況を想像してみて欲しい。私が言うように、これは資本市場と同じくらい古典的な話だ。面白い事実がある。クレディ・スイスは、2009年以降、違約金や和解金として90億ドル以上を支払っていることをご存知だろうか?

 

しかし、その後、砂上の楼閣は崩壊した。東京海上は何かに動揺している(彼らは現在、「詐欺的な引受会社(アンダーライター)」に責任があるとしている)。そしてひとたび保険の包装が剥がれると、クレディ・スイスはショックを受けたと告白した・・・ショックだって!・・・彼らはこれらファンドからの償還を停止し(爆笑)、そしてどうしてこのようなことが起こり得たのかを解明するために、厳しい内部調査を行うと発表した。きっと詐欺的なポートフォリオ・マネージャーを見つけてくれるだろう。次に、クレディ・スイスは、ドイツの銀行規制当局であるBaFinに密告をした。ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)は、ワイヤーカード(Wirecard)の大問題の後、自分たちが完全に腐敗した無能な存在ではないことを示すことに明らかに躍起になっていた。

 

そしてこうなった。欧州中央銀行(ECB)は今、事態が「収束」したかどうかを問うている

 

事態は収束するだろうか?このまますべてが隠蔽されてしまうのだろうか?恐らく。(アメリカの資産投資会社大手の)アポロ(Apollo)は、グリーンシルの取引プラットフォームの残骸を1億ドル以下(数ヶ月前の70億ドルという価値から下落)で購入し、これを可能な限り地中の奥深くに葬り去ろうとしているようだ。レックス・グリーンシルの弟を含めて、グリーンシル社の取締役のほとんどがすでに辞任しており(取締役の席に家族を据えたいと思うのはイーロン・マスクだけではないようだ)、彼らはコメディーテレビ番組の「ホーガンの英雄」に登場するシュルツ軍曹の弁明(「私は何も見ていない!私は何も知らない!」)を主張した。そのため、今週、欧州中央銀行や他の銀行規制当局から、状況は実際に「収束している」という話を聞くことになると私は確信している。

 

また、今期のソフトバンクの決算発表では、孫正義氏がグリーンシルの「投資」を説明するために力いっぱい手を振り力説するという、またしても吐き気を催す決算発表が行われると私は確信している。以下は、昨年のウィーワーク(WeWork)騒動後に、名人芸レベルにでっち上げられた物語(ソフトバンクGがプレゼン資料で描いた夢物語)から、個人的に気に入っているものをいくつか紹介しよう。

 

仮説に基づく収益性の説明図

 

仮説に基づくEBITDAの説明図

 

コロナウイルスの谷

 

私たちの旅に変更はない

 

そして話を戻すと・・・レックス・グリーンシルは、かつての友人であるソフトバンクやGeneral Atlantic、あるいは英国政府に見捨てられたと感じているのかもしれない。もしかしたら、グプタのGFG鉄鋼事業や、ソフトバンク/ビジョンファンドのポートフォリオ企業のいくつかは、グリーンシルとの甘い取引に代わる短期融資を見つけることができず、多くの人が職を失うかもしれない。もしかしたら、クレディ・スイスに都合の悪いメールがあるかもしれない。都合の悪いメールは常にあるものだ。

 

結局、この件は隠蔽されないかもしれない。そして、もし隠蔽されなければ・・・

 

史上最大のネズミ講投資詐欺を働いたバーナード・ローレンス・マドフ

 

この13年間で私が目にした大規模な不正行為の中で、金融市場にシステミック・リスクの影響を与えるほどの規模と知名度を持ったものは今回の事件が初めてだ。バーナード・マドフ以来だ

 

(ベン・ハント氏による記事はここまで。)

 

* * *

 

【追加情報】

 

欧州中央銀行は、欧州大陸における各銀行が金融取引大手グリーンシルの破綻にどれほどエクスポージャーを抱えているかを慌てて評価しようとしているとFT紙が報じている

 

 

 

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