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破綻したアルケゴスはなぜ詐欺疑惑のあるチャイナ企業に次々と多額の投資をしていたのか?——ドキュメンタリー映画『チャイナ・ブーム』は米国に上場しているチャイナ企業の8割が「裏口上場」であることを暴露

破綻したアルケゴスはなぜ詐欺疑惑のあるチャイナ企業に次々と多額の投資をしていたのか?―ドキュメンタリー映画『チャイナ・ブーム』は米国に上場しているチャイナ企業の8割が「裏口上場」であることを暴露

映画『チャイナ・ブーム』のポスター(Image courtesy of The China Hustle)

3月末、アメリカのアルケゴス・キャピタル・マネジメントが、巨額の追証(マージンコール)に応じられず突然破綻した。それから1ヶ月以上が経過した今もなお、アルケゴス破綻の余波は収束していない。

 

アルケゴス破綻により生じた損失は最大100億ドル(1兆円以上)とJPモルガンが試算し、クレディスイスやUBSなどの欧米の投資銀行だけでなく、日本の野村HDや三菱UFJ証券も巨額の損失を被った。

 

アルケゴス(アーキゴス)が失敗した「証券FCD(差金決済)取引」は、2008年金融危機と同じ隠れたシステミック・リスクを孕んでいるとも言われている。

 

しかしアルケゴスの投資担当者ビル・ホワン氏が引き起こした、この金融史に残る巨額損失事件は、異常なまでにレバレッジがかけられていたということの他にも特異な点があった。それは、ホワン氏が投資先に選んだ企業である。ホワン氏は、過去に空売り投資家たちによって標的にされたことがあるいわく付きの銘柄数社にロング・ポジション投資をしていた

 

例えば、GSX Techedu Inc.(跟谁学)のようにホワン氏が投資していた銘柄のいくつかは、空売りに狙われた後、数ヶ月間にわたって激しい「コール買い」が行われていた。こうした誰の目に見ても明らかに不自然な取引により、GSX社の株価は数倍に押し上げられていた。ホワン氏が、これらの疑わしい銘柄のオプション取引に関与していたかは不明だが、同氏が投資先に選んでいた銘柄のいくつかは不自然であると、メディアも注目を始めている。

 

サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)紙は、「アルケゴスは、不正が指摘されているチャイナ企業へ多額の投資を行っていた」と5月3日に報じている。このSCMP紙の記事は、ホワン氏が引き起こした巨額損失は、2017年公開のアメリカのドキュメンタリー映画『チャイナ・ブーム(原題:The China Hustle)』があぶり出した問題の「続き」ではないだろうかと疑問を投げかけている。

 

2018年当時、大紀元(エポックタイムズ:日本語版)はこの映画について次のように報じている:

米上場中国企業の8割が裏口上場 米映画「チャイナ・ブーム」が暴露

 

8割の中国企業は「裏口上場」

 

同映画では、問題のある中国企業にスポットを当てた。中国企業は国内での業績や財務状況を粉飾した後、経営不振の米国上場企業を買収することで、正当な上場企業に変わっていく、いわゆる裏口上場(back door listing)の実態を明かした。

 

裏口上場の手法は「逆さ合併(reverse merger)」とも呼ばれる。非上場企業の株主が投資銀行の仲介で、上場企業を買収し経営権を掌握した後、同上場企業を通じて非上場企業の資産などを吸収合併し子会社化することで、非上場企業が間接的に上場し目的を果たす。

 

映画によると、2006年~12年まで、約400社以上の中国企業が米株市場に上場した。そのうちの8割が裏口上場だという。市場規模は500億ドルを超えている。上場後、いずれの企業も株価は数倍値上がりした。・・・

 

この状況について、米国の投資家には全く知られていない。株の配当どころか、元本さえ、手元に戻らないだろう」。・・・

(太字強調はBonaFidr)

 

「チャイナ・ハッスル」の予告動画(英語版)

 

SCMP紙は、この映画の中で主人公となった空売り投資家たちと、アルケゴスのホワン氏とを重ね合わせている。というのも、この映画の主人公たちが不正を疑っていたチャイナの企業の多くが、ホワン氏の投資先ポートフォリオにも含まれていたからだ。GSX (跟谁学)社の他にも、iQiyi(爱奇艺)社や Vipshop(唯品会)社といった銘柄がホワン氏のポートフォリオ企業には含まれており、この映画の中でも、空売り投資を行うMuddy Waters Research や J Capital Research、Citron Researchが、これらチャイナの企業は詐欺だと指摘していた。

 

しかし、GSX社をはじめとする不正を指摘されたチャイナ企業の多くは、必死にその不正を告発した人たちの努力もむなしく、不思議なことにその疑惑をはね除けて株価は上昇していった。

 

ここまでが2017年公開の映画『チャイナ・ブーム』で取り上げられた内容であるが、それから4年が経過し、ホワン氏のアルケゴスが破綻した。

 

SCMP紙の記事では、ホワン氏の投資先ポートフォリオ企業の株価がいかにして次々と下落していったかを紹介している。そのきっかけとなったのはバイアコムCBS【VIAC】だった。同社の株価は1年足らずの間に600%も上昇するという、アナリストたちが過大評価されていると考える株高状況を利用して、バイアコムCBS社は自社株を売却した。その後、ホワン氏が保有する銘柄の株価が次々と下落していった。

 

そしてホワン氏の投資先ポートフォリオが抱えていた「微妙に均衡を保った爆弾」がついに暴発した現在、チャイナの大手資産運用会社である中国華龍資産管理(China Huarong Asset Management)に注目が集まっているとSCMP紙は指摘している:

(中国華龍資産管理は)その220億米ドルの債券でマネタイズされた不良資産ポートフォリオを持ち、それらは米国の投資家によってレバレッジがかけられている。・・・パニック売りの後、フィッチは親切にもこの債券の信用格付けを「A」からジャンク債の1ランク上となる「B」に格下げした。

(太字強調はBonaFidr)

 

アルケゴスのホワン氏が引き起こした巨額損失事件は、金融業界が抱える問題を明らかにしたというよりも、逆により多くの疑問を残している:

 

1.なぜ ホワン氏は、詐欺だと非難された企業の多くをその投資先ポートフォリオに組み入れていたのか?

2.ディスカバリー・コミュニケーションズ【DISCA】やバイアコムCBS【VIAC】のようなホワン氏の投資先ポートフォリオ企業のいくつかは、なぜ急激に株価が上昇したのか?ホワン氏はこれら銘柄のオプション取引に参加していたのか?

3.中国華龍資産管理は次に巨額破綻を引き起こす「爆弾」となりうるか?

 

金融市場を揺るがしたアルケゴスの破綻は、資産運用会社ARK社(アーク・インベストメント)が提供するETFにも波及しくすぶり続けている

 

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