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イスラエルにあるワクチン接種率96%の病棟でデルタ株のアウトブレークが発生——ワクチン接種では集団免疫を獲得できないことを示す

テルアビブの海岸(Photo courtesy of Hemo Kerem via Flickr)

イスラエルのテルアビブ近郊にある大規模病院、メアー・メディカル・センター(Meir Medical Center)の透析病棟を中心に、今年7月中旬、病院患者と医療スタッフたちの間で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ株によるアウトブレークが発生した。このアウトブレークでウイルスに曝露した248人のうち、238人(96.2%)はワクチンを完全に接種し終えていた。

 

このアウトブレーク事例を研究した論文『Nosocomial outbreak caused by the SARS-CoV-2 Delta variant in a highly vaccinated population, Israel, July 2021(高ワクチン接種率の人々の間で発生したSARS-CoV-2デルタ型による院内感染、イスラエル、2021年7月)』が、査読済み医学ジャーナルのEurosurveillance9月30日号に掲載された。Eurosurveillanceは、欧州疾病管理センターが発行している「感染症の監視、疫学、予防、制御に関するヨーロッパのジャーナル」。

 

元ニューヨークタイムズ紙の科学担当記者で、今年8月にツイッターに永久利用停止にされたアレックス・ベレンソン氏が、10月3日(日曜)にこの論文を解説しながら紹介している

 

【概要】

 

▶︎ このアウトブレークでウイルスに曝露した248人のうち、238人(96.2%)はワクチンを完全に接種し終えていた。

 

▶︎ 完全にワクチン接種を終了していた238人のうち、39人(16%)が感染。ワクチン未接種者10人のうち、3人(30%)が感染。

 

▶︎  合計の感染者42人のうち、23人が病院患者、19人が病院スタッフ。

 

▶︎  ウイルスに曝露した人の罹患率は、病院患者で23.3%、病院スタッフで10.3%。

 

▶︎ 罹患した病院スタッフは全員回復したが、感染した病院患者のうち5人が死亡し、9人が重症または重篤な症状になった。死亡した患者と重症/重篤な患者は、全員が完全にワクチン接種を終えていた。ワクチンを接種していない2人の感染者(50歳代と80歳代)は軽症で済んだ

 

▶︎ このアウトブレークは、ワクチン接種では集団免疫を獲得することができないことを物語っている。また、ワクチン接種を受けた人は、ワクチンを接種していない人に比べて重篤で致命的な感染症に陥りやすい可能性を示唆している。

 

【アウトブレーク発生の経緯】

 

まず、発熱と咳の症状がある1人のワクチン接種済みの透析患者(性別不明)が、メアー・メディカル・センターに入院したことからこのアウトブレークは始まる。この患者(以下、「感染者1号」と呼ぶ)は症状が悪化したため、透析病棟に数日間入院した。感染者1号がCOVID-19の診断を受けるまでに、他の3人の病院患者を感染させた。感染者1号が受けたPCR検査のCt値は13.6であった。「これは軽度の感染者の約100万倍のウイルス量を示す、ほとんどあり得ないほど低い値」とベレンソン氏は指摘している。

 

また、熱と咳の症状があったにもかかわらず、ワクチン接種済みという理由で、この感染者1号の透析患者を、数日間、透析病棟に入院させていたことについて、ベレンソン氏は次のように指摘している:

ワクチンを過剰に売り込むことによる多くの問題点の一つは、今回のようなミスを引き起こすことだ。

 

そしてこの感染者1号がCOVID-19に感染していることが判明してから、この患者は新型コロナ病棟に移送されたが、透析病棟と新型コロナ病棟だけでなく他の病棟でも、病院患者や病院スタッフたちの間で急速にアウトブレークが広がった。感染者1号は、移送された新型コロナ病棟で死亡している。

 

この論文は次のように記している:

本情報では、いくつかのポイントを重視している。普遍的な高いワクチン接種率が集団免疫をもたらし、COVID-19感染症アウトブレークの発生を防ぐという想定に、これ(イスラエルの事例)は疑問を呈している。これは、野生型のSARS-CoV-2ウイルスの場合にも当てはまると思われるが、本論文で説明した今回のアウトブレークでは、曝露した人口の96.2%がワクチンを接種していた。

(太字強調はBonaFidr)

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