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米最高裁、国勢調査に米国籍を問う質問を含むことを却下−トランプ大統領は国勢調査の延期を指示

アメリカの憲法では、10年に1度、国勢調査を実施しアメリカの全人口を集計することを国の義務と規定している。そのために国勢調査局(US Census Bureau)という連邦政府の特別な機関も存在している。

次回の国勢調査は2020年に実施されることが予定されている。トランプ政権は、米国籍を保有している市民かそうでないかを質問する項目を次回の国勢調査に含めることを要求したが、今週木曜、アメリカの最高裁判所がこの要求を却下する判決を下した。

背景: なぜこのニュースが重要かを知るには、この国勢調査の結果がどのように利用されるかを理解する必要がある。この国勢調査は、アメリカ人の全人口を数える調査であり、その結果は政府の正式な人口動態調査として採用される。そしてこの結果に応じて、連邦政府予算が各州に割り振られたり、各州が選出する連邦議員(下院議員)の人数が割り当てられる。人口が多いカリフォルニア州やニューヨーク州は、人口が少ないアラスカ州やモンタナ州などに比べて、当然、国会(連邦議会)に送る議員数が多くなる。

そして国勢調査の結果が、その先10年間の議員数の割り当て人数や連邦予算の割り振りの根拠として利用されるため、米国の政治を左右する非常に重要な問題となる。

トランプ政権が要求しているのは、その国勢調査に、アメリカに居住する外国人がカウントされるのはおかしい、だから国勢調査を行うときその人が米国市民かそうでないかを質問する項目を含めるべきだと主張している。

一方、それに反対する民主党は、国勢調査に国籍を問うのは「差別的」で「非人道的だ」と主張している。しかし民主党が多数派を占めるニューヨーク州やカリフォルニア州には、移民が多く住む大都市がある。大都市に住む移民の中には、米国籍を持たない不法移民が多いという現実がある。民主党は、不法移民を国勢調査にカウントすることで、国政に送る議員数を水増ししようとしているようにも見える。

これは、アメリカの国会議員は国民だけの代表か、それとも外国人も含んだ全住民の代表か、という議論になり意見が分かれる。もちろん、国会議員を選ぶための投票権は米国民にしか与えられていないが、今回の最高裁判決により、国民の代表である国会議員の議員定数の配分を決めることに、外国人が影響を与えることになる。

今週木曜の最高裁判所の判決を受けて、トランプ大統領は次のようにツイートしている:

(訳)我が政府、まさに我が国が、非常にコストのかかる詳細で重要な2020年の国勢調査に、国籍を問うという基本的な質問を行えないということは、全く馬鹿げている。複数の弁護士に、どれくらい時間がかかろうとも、、、

 

(訳)、、、米国最高裁が、この非常に重要な問題について最終的で決定的な判決を行えうる追加情報を与えられるまで、弁護士に国勢調査を遅らすことができないか指示した。素晴らしい国として、我々は市民であるかどうかを質問することができないなど信じられるか?そんなのはアメリカだけだ!

米国最高裁は、今回の判決を下した理由として、トランプ政権の論拠は「無効(invalid)」としている。

今回の訴訟は、トランプ政権の商務省対ニューヨーク州の間で争われた。ニューヨーク州が、国勢調査に国籍を問う質問を含めようとするトランプ政権を訴えていた。この訴訟で、最高裁判事のジョン・ロバーツ判事がリベラル派の判事らに賛同し、5対4でトランプ政権側の主張を却下した。

トランプ政権は国籍を問う質問を含むことは投票権に関わる法律をより遵守するために必要であると主張したが、反対派は、国籍に関する質問は不法移民がいる世帯に対して、彼らを国勢調査に回答させないようにする脅しだと主張している。また、国籍を問うことで、国勢調査の結果が共和党に有利に働くとも主張している。

With fewer people filling out the census, legislative seats are more likely to garner Republican Congressional districts through gerrymandering. –RawStory

(訳)より少ない人々が国勢調査に回答することで、ゲリマンダーのように国会議員の議席が共和党の地盤に有利に働く可能性が高い。RawStory

トランプ政権は、国籍を問う質問を含めることについて大統領特権があると主張しているが、最高裁判事のロバーツ判事はそれは不十分であるという考えである。

一方、ゲリマンダー問題については、最高裁は各州に委ねる判決を下している。ロバーツ判事は、「党派心があらわなゲリマンダーの主張は、政治的な問題を呈しており連邦裁判所の管轄を超えたものであるという結論に至る(”We conclude that partisan gerrymandering claims present political questions beyond the reach of the federal courts.”)」と述べている。

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