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ボーイング社、737 MAXのソフトウェア開発を時給9ドルのエンジニアに外注していたことが発覚

737 Max

ボーイング社の新型機737 Maxは2度の墜落事故を起こし、パイロットたちによる集団訴訟や米司法省による捜査が行われているが、同737 Max機の主たる事故原因と報じられているソフトウェアの開発が、時給9ドル(約1000円)の外部エンジニアに外注されていたとBloombergが報じた

737 Maxのソフトウェアを開発している時期に、ボーイング社は熟練したエンジニアたちを解雇し、彼らの代わりに、低い人では時給9ドルという安価な外部エンジニアに発注していたとBloombergは報じている。

コスト削減のために、ボーイング社は同ソフトウェアの開発および試験を、下請け企業に依存していた。これら下請け企業の多くは、航空機産業に深いノウハウのないインドのような国の企業であった。

ボーイング社は、同社のシアトルにあるBoeing Fieldの向かい側にあるビルで、下請け企業であるインドのソフトウェア開発企業HCL Technologies Ltd.から派遣された新卒エンジニアを勤務させていた。このビルでは、737 Maxに関するフライト・テストを行うグループが勤務していた。HCLから派遣されたプログラマーたちはボーイング社が設定したスペックに基づいて作業していた。しかし、元ボーイング社のソフトウェア・エンジニアであるマーク・ロビン氏は、「ボーイング社の社内エンジニアがプログラミングするよりもずっと非効率であるため、(外部エンジニアを使うことは)物議となっていた。・・・コーディングが正しく行われなかったため、なんどもやり取りを往復しなければいけなかった」と語っている。

インド系企業を採用することは、ボーイング社にとってコスト削減以外にもメリットがあったようだ。それは、インド系企業を下請け企業として契約することの引き換えとして、2017年1月、ボーイング社はインド軍およびインドの商業利用向けの航空機として220億ドルの契約を受注していた可能性が指摘されている。この契約には、737 MAX 8を100機発注することが含まれており、これはインドの航空会社からボーイング社が受注した契約として過去最大である。インドは、これまでエアバス社に発注することが慣習となっていた。

HCL社のエンジニア達が737 Maxのフライト表示ソフトウェアの開発およびテストに関わっており、別のインド系企業Cyient Ltdがフライト・テスト機材に関するソフトウェアを担当していた。2011年、ボーイング社はCyient社(当時Infotech社という社名)を優れたサプライヤーとして「サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」の1社として賞賛している。

HCL社のとある社員が、インターネットに次のコメントを投稿している:

「737 Maxのフライト・テストを遅延させる可能性がある製造上の問題に対して、それを解決するための迅速な回避策を提供した(各フライト・テストに遅延が発生することは、ボーイング社にとって非常に多額の費用が発生することになる)」

しかしボーイング社は、10月と3月に発生した墜落事故に関与していると言われるMCAS (Maneuvering Characteristics Augmentation System)システムの開発に関して、HCL社のエンジニアに依存した事実はないと述べている。事故後に明らかになった、コックピットの警告ライトにあった問題についても、ボーイング社はインド系企業に依存していたことはないとしている。

一方、HCL社は、「顧客企業に関する個別の作業案件についてはコメントしない。737 Maxに関わるいかなる継続中の問題についてHCL社は無関係である」と発表している。

米連邦航空局(FAA)が最近実施したシミュレーション試験では、737 MAXに搭載されたソフトウェアの問題は、当初考えられていた以上に深刻であることが示されている。ボーイング社は8年前から同型機の開発を始めたが、エンジニアらは同社の管理職から、開発期間を延長したりコストを高める原因となる変更を行わないようプレッシャーを受けていたことを明らかにしている。

ボーイング社の元フライト制御エンジニアで、2017年に解雇されたリック・ルーディック氏は、次のように述べている:

「ボーイング社は、コスト削減のために想像できるあらゆることを行なっていた。プージット・サウンドで勤務する我々の人件費は高コストだっため、そこで行われていた作業を移動させた。会社経営の観点に立ってみればとても理解できることだ。時間が経つにつれて、徐々にプージット・サウンド勤務の設計者達の設計能力は劣化していったように思える」

先に登場した元ソフトウェア・エンジニアのマーク・ラビン氏は、シニア・ソフトウェア・エンジニアたちが集められ、ボーイング社の製造能力は成熟しているため彼らは必要ないと会社から言われたことを記憶している。「数百人の人員が一つの部屋に集められたことがあり、そのほとんどがシニア・エンジニアだったのだが、我々は必要ないと言われ、とてもショックだった」と語っている。

いかなる航空機も、数百万個にのぼる部品と数百万行にのぼるプログラミングから構成されている。ボーイング社は、往往にして大部分の作業をサプライヤーや下請け企業に外注する。これらサプライヤーや下請け企業は、ボーイング社の描いた青写真に従って作業することになる。しかし、2004年の787 Dreamlinerから、ボーイング社はざっくりとした上位レベルのスペックだけを提供し、サプライヤー自身がより多くの部品を設計するよう発注することで、さらなる利益を追及するようになった。

ボーイング社はまた、2005年にエア・インディアから受注した110億ドルの契約の引き換えに、17億ドルをインドの企業に投資する約束を行なっている。この投資は、HCLとその他のソフトウェア開発企業に対して行われた。

787型機に関して、さらにHCL社はボーイング社が拒否できない価格、つまり無料という「価格」を提案した。HCL社は、787型機の開発に関して前払いを受け取らず、何年も後に機体が販売されてから費用請求を開始していた。

Rockwell Collins社はコックピットのディスプレイ開発に関してボーイング社から受注し、そのフライトテスト機材の試験を行う作業の一部をHCLのエンジニアとCyientの契約エンジニアを使っていた。

同社でフライトテスト設備の設計エンジニアであったチャールズ・ラブジョイ氏は、「我々はインド人チームと作業するのに困難に直面した。彼らは要件を満たすことはできたが、作業の質は低かった」と語っている。

Photo courtesy of Boeing

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