「リクナビ」が内定辞退率を企業に販売:監視社会の中国を笑えないシステムが構築されている
リクルートキャリアが、その就活情報サイト「リクナビ」で収集した登録ユーザの行動履歴をAIで分析し、就活生の内定辞退率を学生の同意なしに企業に販売していたことが大ニュースになっている。しかしこれはリクルートだけの問題ではない。シリコンバレーを拠点に世界展開するアメリカの大手IT企業は、すでにユーザのデータを分析し、個人を「格付け」する監視システムを構築し運用している。
これは独裁政権の中国共産党が行なっている監視社会を、我々は批判することができない事態である。ツイッターで話題になっている記事『リクルートが、日本人の人生すべてを握る「恐怖の企業」と化す可能性』でも、「ポテンシャルは中国共産党並み」と警鐘を鳴らしている。
奇しくもこのニュースが日本で報じられたのと同じタイミングで、今週、シリコンバレーの大手IT 企業でもユーザのデータを収集・分析して監視するシステムが運用されている実態を、雑誌Fast Companyが報じている。
Fast Companyは次の事例を報じている:
ニューヨーク州金融業務局は、今年初旬、生命保険会社はユーザがSNSに投稿した内容を元に保険料を決定することができると発表した。もしあなたが、イエローストーン国立公園でグリズリーベアをからかっている写真を投稿したとする。その写真で、あなたは手にマルティーニ・カクテルを持ち、もう片方の手には山盛りのチーズフライを持ち、そして口にはタバコをくわえていた場合、あなたの支払う保険料は高くなる可能性がある。逆に、ヨガをしている写真をフェースブックに投稿すれば、保険料は安くなるかもしれない。
Airbnb(エアビーアンドビー)は、同社が勝手に決めた任意の理由で、ユーザのアカウントを一生閉鎖することができ、その決定理由をユーザに伝えない権利を有している。同社の定型文のメッセージには、次のように記載している:「この決定は不可逆的であり、あらゆる重複アカウントや将来新たに作られるアカウントにも影響する。ユーザのアカウントに対して取られたアクションについて、我々は説明する義務を負っていないことをどうか理解してください」。部屋の家主が勝手に思い込み、泊まったゲストが宿泊中にしたことだと密かにAirbnb側に通報したことが原因で、そのゲストのアカウントの凍結・削除が行われる可能性がある。Airbnbの競合他社も、同様のポリシーを掲載している。
現在、Uber(ウーバー)では簡単にアカウントが凍結される事態になっている。ウーバーを利用し終わって下車すると、ユーザはドライバーを評価するようアプリからメッセージが届く。多くのユーザが知らないのは、ドライバーもまた乗客を評価するようアプリからメッセージが送られていることだ。5月に同社が発表した新たなポリシーは次のように記載している:もしユーザの平均評価が「一般的な評価よりも著しく低い」場合、Uberはそのユーザが同配車サービスを利用することを禁止する。
(フェースブック傘下のメッセージアプリ)WhatsAppでも、その他のあまりに多くのユーザがその人をブロックした場合、利用することが禁止される可能性がある。スパムメッセージや脅迫メッセージ、WhatsAppのアプリをハッキングしようとしたりリバース・エンジニアリングしようとした場合、また未承認のアプリを使って同サービスを利用した場合にも、アカウントが禁止される可能性がある。– Fast Company
シリコンバレーの大手IT企業は、交通手段サービス、宿泊サービス、通信サービスなどを提供することを通じて得られるユーザ情報を元に、個人を格付けする「社会与信システム」を急速に構築している。そしてそうしたデータが蓄積されるにつれ、こうしたIT企業はサービスをより厳しく制限するようにもなっているほか、保険料のような月額料金にも反映されるようになっている。これは、IT企業が、人々の行動を制限する力を持ちつつあることを意味している。
中国では、2020年までに、国民の通院履歴、学歴、銀行履歴、そしてインターネットの使用履歴などを分析して、個人の社会信用度をリアルタイムで格付けする制度を全国民に導入する予定であると報じられている。
中国では既に一部の国民の社会信用度を格付けする運用が始まっており、今年7月、信用度の低い256万人に対し、航空チケットを購入することを制限し、また9万人に対して高速鉄道のチケットを購入することを制限したと報じられている(以下のツイート)。
China restricted 2.56 million discredited entities from purchasing plane tickets, and 90,000 entities from buying high-speed rail tickets in July: NDRC #socialcredit pic.twitter.com/4zAwJ7hrBn
— Global Times (@globaltimesnews) August 16, 2019
監視社会である中国と、日本やアメリカなど自由主義経済圏の違いは、国民が、国や企業に監視・格付けされていると知っているか否か、という点に尽きるのかもしれない。
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