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米アップルと共同でApple Cardを発行するゴールドマン、顧客をカモにしてきた評判が拭えずリテール・バンキング事業Marcusが低迷

Marcus

投資銀行の雄ゴールドマン・サックスが、Marcusブランドで展開しているリテール・バンキング事業であるが、CEOデービッド・ソロモン氏が期待したほど順調にビジネスが成長しているとは言えない。Marcusは、消費者向けローンや当座預金口座などの金融サービスを提供している。

 

3年前から展開しているMarcusは、これまでに13億ドルの損失を計上している「金食い虫」事業となっていると、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が先月報じた。ゴールドマン・サックスは、アップル社と共同でクレジットカードを発行しており、リテール・バンキング事業のMarcusブランドがある程度は浸透してきているものの、一般的なアメリカ人はゴールドマン・サックスを信用していない。ゴールドマンが犯してしまった見込違いやその他の要因により、同行のMarcus事業が揺らいでいるとWSJ紙は報じている。

 

ゴールドマン・サックスは、WeWorkとSoftBankに関するエクスポージャーを密かに清算していることはここでも報じていた

 

ゴールドマン・サックスは、今年5月、すでに追加の銀行を協調融資に参加させることに成功しており、これにより自らが抱えるエクスポージャーを削減している。しかしさらに特筆すべきなのは、同行は今現在、これまでに参加している金融機関に加えてさらに他の銀行もこの協調融資に募っていることである。

 

元々この協調融資に参加している10行にも、与信枠を増額するよう誘っているようだが、そのうちの1行は興味がないと、情報源である人物はブルームバーグ紙に語っている。他の金融機関が興味を持つように、ゴールドマン・サックスはビジョンファンドへの与信枠を細分化し、1口5000万ドルという小口にして販売するオファーを提示していると、事情に詳しい1人の人物は語っている。さらに、この状況が進むと、まもなくしてゴールドマン・サックスは与信枠を1口1000ドルにまで細分化し、同銀行のリテール部門であるMarcusのプラットフォーム上で小売し始める可能性がある。

 

* * *

 

ゴールドマン・サックスが初期に犯した失敗の一つは、Marcusの消費者ローン顧客から、延滞債務を回収する借金取り立てチームを編成しなかったことだ。この失敗により、リテール事業を開始してから数年間の債務不履行率が、想定以上に高くなってしまった。

 

その後、ゴールドマン・サックスはこのビジネス・モデルが維持できないと気付き、借金取り立てチームを編成する決定を下した。しかし、顧客よりも自分たちの利益を優先する「アグレッシブな銀行」という、既に不名誉な評判のあるゴールドマン・サックスにとって、消費者ローン顧客から延滞債務を取り立てる部署を創設することが、その評判をさらに低めることになるのではないかという懸念がある。

 

また、リテール事業Marcusは、消費者向け無担保ローン事業から撤退している。その理由は、無担保ローンを借りている顧客が「景気後退の際に最初に債務不履行に陥る」ため。

 

一方、Marcusが提供しているような種類のローンは、景気後退の際に最初に債務不履行に陥る。そしてそれらローンは、住宅ローンのように担保に裏支えされていない。ゴールドマンは、予想より多額の損失が重なった結果、今年、消費者向け貸付業務から撤退したと、本件に詳しい複数の人物が語った。

 

しかし、ゴールドマン・サックスは、同行のオンライン・プラットフォーム上で、500億ドルの預金を集めた事実を喧伝している。ここで集められた資金は、同行にとって低コストで調達できた追加資金である。100億ドルの預金が集まるごとに、ゴールドマン・サックスにとって年間1億ドルの資金調達コストが削減になると、同行は語っている。しかし、2014年当時、NYハンプトンで同行の重役向けに行われたMarcusの事業コンセプト説明会で描いていた期待を裏切る結果となっている。

 

当時、ゴールドマン・サックスの経営幹部たちは、トレーディング業務からの売上が伸び悩んでいたため、競合先であるバンク・オブ・アメリカを出し抜くために、新規ビジネスで売上を伸ばすことが最善策であるという結論に至っていた。しかし、蓋を開けてみると、消費者たちはゴールドマン・サックスが始めたリテール金融サービスに大きな魅力を感じなかった。

 

ゴールドマン・サックスにとって初のクレジット・カードApple Cardを発行するプロジェクトでも、アップル社は、ゴールドマン・サックスの「吸血鬼」という悪名高いイメージに顧客が怯えるのではないかという不安から、同行の関与を最小限に抑えるよう、クレジットカードのマーケティング戦略を展開するのに苦労していた。

 

アップル社が、カリフォルニア州クッパチーノの壇上で同社のクレジットーカードについて発表した際、気の利いた説明を行った:「銀行ではなく、アップルがデザインした(Designed by Apple, not a bank)」と。ソロモンCEOと他のゴールドマンの幹部たちも会場でこの発表を見ていた。このセリフは、アップル社がこのクレジットカードを宣伝する広告の中でも再び利用された。

 

WSJが、ゴールドマンに対する「最後の冷たいあしらい」と説明している例として、アップル社は、Marcusの幹部たちがクレジットカードの市場投入プロジェクトを監視することを禁止したと報じている。

 

最後の冷たいあしらいとして、Marcusの幹部たちは、8月のクレジットカード投入を目前に控えた数日間、アップル社の指令センターがある(ニューヨークの)トライベッカ地区にあるロフトに足を運ぶことを許されなかった。

 

これまでのところ、ゴールドマン・サックスが初めて発行したクレジットカード事業は、同行のリソースを大きく食いつぶしており、その他の消費者向け融資プロジェクトを延期せざるを得ない状況になっている。

 

ゴールドマンは、大雑把に見積もって3億ドルをApple Cardを構築するために使ったが、それ以上に、Apple Cardは同行のリソースを浪費させる元凶となっていた。

 

今年の春に行われた初期テストで、セキュリティー上の脆弱性が明らかとなった際、ゴールドマン・サックスはパッチを当てるために数千人の社内エンジニアを再配置して対応したと、本件に詳しい複数の人物が語った。

 

また、ゴールドマン・サックスの株価は2014年〜2015年のレベルから抜け出せないでいる。

 

ゴールドマン・サックスの消費者向け事業が軌道に乗っていない一つの理由は、おそらく、ゴールドマン・サックスがその資産運用事業の顧客たちをどのように扱っているか、リテールの投資家たちが知っているからかもしれない。

 

とある資産家の人物は、彼の経験を次のようにWSJ紙に語っている:

 

ゴールドマンは、過去5年間、私の資産を運用させてくれと激しく営業をかけてきている。彼らは、スターウォーズの映画のプレミア上映会に招待してくれた。私の資産の年間運用手数料1%を払うだけの価値あることだ(訳者注:これは皮肉)。私の新たな資産運用会社として、ゴールドマンは、We(WeWorkの親会社)がIPOしていた場合、470億ドルという非常に低いバリュエーションの段階で、私の資産でWeの株式を大量に購入していただろうか?(訳者注:これも皮肉)ゴールドマンは、(IPOによる)短期の引受業務手数料(1億3000万ドル)と、彼らの資産運用事業の顧客たちにとっての受託者としてのサービス業の、どちらを重視するだろうか?もしくは、彼らは単に愚かなだけだろうか?私は、仕事終わりにジャージー・シティー(ゴールドマンの本社ビルがある場所)にあるひどいラウンジを複数軒回り、CEOであるデービッド・ソロモン氏(通称DJ D-Sol)を探しに行ったことがある。ソロモン氏はひどいDJであると同時に、ひどい受託者だ。

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