中国政府はいまだに政治犯や少数民族から臓器収奪を行っている:ガーディアン紙が報道
今月16日、ニューヨークタイムズ紙が、中国政府によるウイグル族への大規模弾圧を示す403ページにのぼる内部文書を報じた。日本でも各メディアが報じたため、既に見聞きした人も多いだろう。しかしこのスクープ報道の2日前に、イギリスのガーディアン紙が中国政府による臓器収奪のニュースを報じていた。ニューヨークタイムズ紙のスクープ記事に話題を奪われた感があるが、このガーディアン紙の記事も非常に重要である。
以下はニューヨークタイムズ紙によるスクープの内容を報じる産経新聞の記事:
米紙、中国のウイグル弾圧内部文書を報道 習主席「情け容赦は無用」
2019.11.18 10:06
17日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、中国当局による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒少数民族ウイグル族らに対する弾圧の実態が記載された中国政府の内部文書を入手したと伝えた。弾圧をめぐる中国政府の内部文書が大量に流出し外国メディアに報じられるのは異例。
同紙によると文書は24通で、全体で計403ページ。中国で一定の政治的立場にある関係者が匿名を条件に提供したとしている。
文書によれば、中国の習近平国家主席が2014年春に自治区での暴動発生を受けて現地を視察した際、非公開の場で当局者らに演説し、ウイグル族の取り締まりは「テロや分離主義との戦いだ」と位置づけ、「情け容赦は無用だ」と述べて弾圧を督励した。
また、中国政府がウイグル族らを強制収容し、テロ対策を目的に「職業訓練」を行っていると主張している施設では、実際には外部から隔絶された環境で徹底した思想教育が行われていることが文書から判明したとしている。
文書によれば、2017年以降、強制収容されたイスラム教徒少数民族は数十万人に上るという。
同紙によると、文書を提供した関係者は、ウイグル族の大量拘束や強制収容は「間違っている」との感慨から、習氏ら共産党指導部が責任を免れることのないよう公開することにしたと説明した。
中国では、本人が望まないのに非自主的に臓器の「ドナー提供」をさせる国内制度が、国際的に批判を浴びていた。中国政府はそうした制度を廃止すると発表したが、それから5年もたたないうちに、研究者は中国政府の発表が嘘であることをつきとめたとガーディアン紙が報じた。中国政府は中国国内で実施された臓器移植データを国際的な規制当局に提出しているが、そのデータを研究者が分析したところ、憂慮すべき事態の一端が垣間見える結果となったと先週発表した。
同研究によると、中国政府は国内で実施されている臓器移植の件数を「組織的に捏造」している可能性があるという。これにより、中国政府は、処刑された囚人やその他の人々から強制的に臓器を摘出し、裕福な中国人患者に対して臓器移植を今でも実施している懸念が改めて高まっている。
2015年、中国政府は、処刑された囚人の臓器を使って臓器移植をしないと公約した。それまで中国国内で実施されてきた臓器移植のほとんどは、こうした処刑された囚人の臓器が利用されていた。
しかしオーストラリア国立大学の博士課程の学生であるマシュー・ロバートソン氏が主導して行なった研究結果は、臓器ドナーに関して中国政府が提供したデータ・セットは、「それらデータが捏造されているという非常に説得力ある証拠」を示していると記している。この研究結果は、先週金曜、『BMC医療倫理ジャーナル(BMC Medical Ethics )』に掲載された。
それらデータ・セットに対して統計的科学捜査を実施したところ、研究者たちは、臓器移植されたと報告された臓器の数が、ほぼ完璧に二次方程式の解の公式と一致したことをつきとめた。
「明らかに収奪された臓器の数を注意深く調べると、その数はこの人工的な方程式に逐一、そして毎年、ほぼ完全に一致する。これら数字は、本当のドナー提供から得られる本当のデータのようには見えない。これらは、方程式を使ってはじき出された数である。単なる偶然でこのモデルに合致するデータとなったというのは想像し難い。そのため、これは欺くために意図的に行われたという可能性が高いことを示している」とロバートソン氏は語った。
この研究報告書は、中国の臓器移植産業があまりに不透明であり、臓器の提供元を追跡することが常に困難であると記している。以前と比べると、中国国内の臓器移植制度は多少、改善はされているが、提供される一部の臓器はどこからもたらされるのか、いまだにその出所が隠蔽されている。
私の見解では、中国は、過去何年にもわたって行われていた囚人のみを使った臓器移植制度でも、政府官僚が約束する曇りのない自由意志によるドナー提供制度でもなく、複雑なハイブリッドの移植プログラムを行っている。入手可能な証拠はそれを示している。つまり、多額の謝礼金によりインセンティブ付けされた自由意志によるドナーと共に、「国民ドナー」と記されている自由意志ではないドナーが併存している。
この研究では、2010年〜2018年にかけて自由意志によってドナー提供された、病院単位の臓器について調査を行なった。そのデータは2つの情報源から提供されており、一つは『中国臓器移植応答システム(China Organ Transplant Response System: COTRS)』、もう一つは『赤十字社』である。
全ての臓器移植は、移植される臓器の出所を含む詳細情報と併せて、このシステム(COTRS)に報告されている(はずである)。そして中国赤十字社は、全ての臓器提供を検証することが義務付けられている。つまり、これら2つのデータベースを比較し、矛盾を探し出すことでなんらかの知見が得られるはずである。
通常、これらのデータは一般公開されていないが、情報がリークされる場合がある。COTRSのデータは2014年と2017年に公表された。中国赤十字社からのデータは、4つのウェブサイト上でかつて公開されていたが、そのうちの3つのウェブサイトは最近閉鎖されている。
何十年間にもわたって、北京政府は、宗教的少数派を含む国内の少数民族たちから臓器収奪を行なっていると非難されてきた。6月に開かれた裁判で、北京政府は法輪功の信者たちを何十年にもわたって臓器の主な収奪先としていたことが判明している。また、その法廷では、ウイグル族に対して大々的な医療検査が実施されており、彼らを「臓器バンク」にしていることも言及されている。
ニューヨークタイムズ紙に中国共産党の内部文書を提供した人物は、「習氏ら共産党指導部が責任を免れることのないよう公開することにした」と語っている。それと同様に、中国共産党が罰せられることなく、非人道的な「臓器バンク」を構築し続けることがないよう、そして中国政府にこれまでの責任を負わせるためにも、今回のような研究結果は非常に重要である。
(冒頭の写真はイメージ画像。)
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