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ロンドン商業不動産市場が減速:WeWorkが入居する大型ビルの売買契約交渉が打ち切りに

London

商業不動産市場に不吉な兆候が起きている。大手シンガポール投資会社が、ロンドンのウォータールー駅近くにあるオフィス・ビル「Southbank Place」を8億5000万ポンド(約1000億円)で購入する契約交渉を打ち切ったとファイナンシャル・タイムズ(FT)紙が報じた。このオフィス・ビル「Southbank Place」は、WeWorkが提供しているシェア・オフィスの中でも世界最大規模を誇っている。

 

WeWorkがIPOの延期を発表した直後、この契約交渉は解消された。WeWorkは、資本調達のために同社が保有する事業やコーポレート・ジェット機の売却を進めている。IPOが無期延期となり、WeWorkは株式市場から調達できると見込んでいた30億ドルが霧散しただけでなく、IPOが無事に達成されることを条件に保証されていた60億ドルの与信枠も失っている。

 

S&PがWeWorkの与信格付けをB-に格下げ:同社ジャンク債の価格急落を受けて

 

 

しかし、この打ち切られた大型契約交渉は、最近ロンドンの商業不動産市場で頓挫した唯一の案件ではない

 

この契約交渉に詳しい情報源の人物は、ロンドンに特有のブレグジット関連の不確実性や、ローンの借り換え契約を解約することで発生する費用の問題も、契約交渉が不成立に終わった原因であると指摘している。このビルの資産管理会社は、今年初めに建設プロジェクトのローン借り換えを行なっていたが、売り手との間でその借り換え契約を解消する費用を誰が負担するのか問題となったようだ。イタリアのアグネリ家と関係があるこの売り手企業がビルを売りに出していたが、この契約交渉を解消したと報じられている。

 

しかし、WeWorkがIPOを無期限延期したことが、この契約交渉を解消することに全く影響を与えていないとは考えにくい。

 

WeWorkが入居するビルを購入する検討を行なっているところであれば、当然、WeWorkが470億ドル以上の賃料を支払う義務を抱えていることを考慮せざるを得ない。(WeWorkは、この先5年間だけでも100億ドルの賃料を支払う義務を抱えている。)そして同社は、キャッシュ不足に直面している。今後、もしWeWorkが家主に賃料が払えず、賃料の値下げ交渉する必要に迫られたり、最悪の場合、破産申告することになれば、ビルのオーナーは数百万ドル、もしくは数十億ドルの賃料未回収に襲われることになる。

 

Southbank Placeビルの中には、WeWorkが契約している28万スクエアーフィートの広さのシェア・オフィス・スペースが入っている。このシェア・オフィスには、HSBCなどの大手企業が入居している。HSBCは1000座席分をリース契約している。このビルには、ロイヤル・ダッチ・シェル社のロンドン本社も入居している。

 

FT紙が報じた価格で契約が成立していれば、今年ロンドン市場で成立した不動産売却契約の中で最大規模の案件の一つとなっていた。しかし現在、ロンドンの商業不動産市場は急速に売買成立件数が減少している。2019年前半、売買成立件数は昨年同期比で3分の1減少した。

 

WeWorkの海外展開戦略は積極的で、これまで世界110都市の528カ所にシェア・オフィスを開いている。そして英国は、WeWorkが展開している中でも最大市場の一つ。

 

WeWorkによる世界展開

 

Sources: CBInsights 

 

 

NY市、シカゴ、デンバー、ロンドン中心部、その他主要な都市部においてWeWorkは最大の不動産テナント企業となっている。

 

米国内における都市別WeWorkシェア・オフィス件数

Sources: CBInsights 

 

 

一方、FT紙による別の報道では、IPOを無期限延期することを発表して以降、WeWorkは新規に不動産契約を結ぶことを再開したと報じられている。しかし、以前と比べるとずっと緩やかなペースであると報じられている。

 

 

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