2019年、航空業界における倒産発生ペースが「史上最速」
英国の老舗旅行代理店トーマスクックが、先月、破産法の適用申請を行ったことは記憶に新しい。これにより、「欧州各地に滞在する多数の英観光客が足止めを余儀なくされる」と報じられていた。しかしこれはブレグジットに直面したイギリスだけの事象ではなく、世界の航空業界で発生している。ロイター紙は、世界の航空業界で発生している倒産発生件数のペースが史上最速であると報じている。同紙がその根拠として引用しているのはIBA(International Bureau of Aviation:国際航空事務局)が新たに発表した報告書。
一般的に、航空会社の倒産が増え始めるのは、経済が減速し始める直前や不況の真っ只中であることが多い。最近、インドのJet Airwaysや英国のトーマス・クック、そしてブラジルのAviancaと倒産が急増していることは、2020年の世界経済が災厄に見舞われることを示している。
「2019年における航空会社の倒産は、史上最速で増加している」とIBAはその報告書に記載しており、9月時点で17社の航空会社が破産宣告している。
夏の旅行シーズンのピークが過ぎ、航空会社は現在、積み重なった負債、収益率の悪化、目減りするキャッシュ、高騰する燃料費、ドル高、そして世界経済の混乱に苦しんでいる。これらマクロ経済要因は、体力のない弱小航空会社から真っ先に倒産に追い込んでいる。
「毎年、最終四半期になると北半球が冬を迎え、より多くの航空会社が破綻する傾向にある」とIBAのチーフ・エグゼクティブであるフィル・シーモア氏はロイター紙に語った。
シーモア氏は、特にドル高の状況が、新興国における航空会社に損害を与えていると語る。
その一方で、航空会社の破綻が続くことは、手持ちの現金が不足しているその他の航空会社にとって有利な状況を生み出す。というのも、大幅な値引き価格で新たに航空機を調達したり空港の発着枠を獲得することができるためであるとロイター紙は報じている。
今週、破綻した航空会社には、フランスのAigle Azur、XL Airways、Germania、Flybmi、そしてスロベニアのAdria航空などが含まれる。
ボーイング737 MAXが飛行停止となっている状況で、現金不足の航空会社は必死で代替機を探しており、積極的に倒産した航空会社の機体を獲得しようと試みている。
アイルランドのLCCであるRyanairは、まさにボーイング737 MAXが飛行停止になったために財政ストレスを抱えている航空会社である。同社は、その穴埋めのために、倒産したトーマス・クックがリースしていたエアバスA-320sの航空機を調達する決断を行った。
「トーマス・クックの倒産のような事態からチャンスが生まれている。当社は、来年の夏にはこれらエアバス機を(オーストリアの子会社)Lauda航空に投入することを多数のリース企業と交渉している」とRyanairグループのCEO、マイケル・オリアリー氏はロイター紙に語った。
世界の航空業界における株価指標を見ると、同業界は2018年初頭から下落傾向にある。
収益も2018年第1四半期をピークに下落している。
世界経済が年末に向けて減速していくことが見込まれている中、さらに多くの航空会社が破産法の適用申請を行うことが予想される。来年、世界中で景気減速が起き始めると、これら航空会社はどれほどのダメージを受けるのだろうか。
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