ビル・ゲイツ氏が出資する企業が、全米で初めて遺伝子組み換えされた蚊を自然界に放出
米国内では初めて、遺伝子組み換えされた蚊が自然界に放出された。これは、デング熱、黄熱病、ジカウイルスなど、昆虫を媒介して広がる病気を撲滅するための実験の一環として行われた。雑誌「ネイチャー」が、5月3日(月曜)にこの放出に関する記事を掲載した。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団から出資を受けた英国を拠点とするバイオテクノロジー企業Oxitecは、フロリダ州モンロー郡にあるフロリダキーズ(フロリダの最南端の島々)の6箇所(カジョー・キー2箇所、ラムロッド・キー1箇所、そしてボカ・キー3箇所)で遺伝子組み換えが行われた蚊を放出したと語った。同社によると、これは「人に感染するほとんどすべての蚊媒介性疾患」の原因となっている「ネッタイシマカ」への対策の一環だという。
ネッタイシマカ種は、フロリダキーズに生息する蚊の約4%を占めており、デング熱、黄熱病、ジカウイルス、その他のヒト疾患の病原体を媒介する他、ペットや他の動物の命に関わる犬糸状虫(犬の心臓に寄生する糸状虫)やその他の病気を媒介することでも知られている。
今回の実験は、フロリダキーズ蚊コントロール地区(FKMCD)との共同で行われ、米国環境保護庁(EPA)、フロリダ州農業消費者サービス局(FDACS)、米国疾病管理予防センター(CDC)、および独立諮問委員会の承認を得ている。
今後約12週間にわたり、毎週出現する蚊は1万2,000匹以下に抑えられると予想されている。遺伝子組み換えされた蚊が放出されていない比較対象地域であるキーコロニービーチ、リトルトーチキー、サマーランドキーでは、蚊取り器が設置されモニタリングが行われる。今回の実験が成功すれば、年内に約2,000万匹の遺伝子組み換え蚊が追加で放出される予定。
フロリダキーズ蚊コントロール地区(FKMCD)の事務局長であるアンドレア・レアル氏はビデオ記者会見で次のように語っている:
10年ほど前、フロリダキーズではデング熱のアウトブレークの真っ只中にあったことがきっかけで、私たちはこの検討を始めました。私たちは、このパートナーシップ関係を進めること、そしてOxitecや地域の人々と協力していくことに非常に興奮しています。
Oxitecが放出する蚊は全てオスであり、そのためこれらの遺伝子組み換えが行われた蚊が人を刺すことはない。オスの蚊は、野生に生息するメスの蚊と交尾をし、それにより成虫になる前に死ぬよう設計された致死遺伝子を次の子の世代の蚊が受け継ぐことが期待されている。
QUARTZの報道よると、マレーシア、ブラジル、ケイマン諸島、そしてパナマで同様の実験がすでに行われており、これら地域での蚊の生息数は最大90%減少しているという。
しかしフロリダ州の地元住人からはこのプロジェクトに対して非難の声が上がっており、この実験へ同意するかの意思確認が行われず、住人たちは「蚊帳の外」に置かれたと語っている。
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