スイス国立銀行が史上最高額となる940億ドル分の米国株を保有:第3四半期に多額の米国株を購入していたことが判明
2019年第3四半期、世界経済は減速を続け、それに対応するため世界各国の中央銀行は金利を引き下げ、量的緩和を継続・拡大させた。この結果、アメリカの株価指標は史上最高値を更新している。これはトランプ大統領による米中貿易戦争の緊張が緩和していると主張するツイートにつられて起きた株高でもある。
しかし中国側はトランプのツイートを否定する内容を発表している。以下は中国国営メディアの編集長によるツイートである。
Quite a lot of criticisms and complaints about China from President Trump in his latest speech, but hardly anything new. Similar statements of senior US officials have bored people. It seems this US administration really believes a lie repeated a thousand times becomes truth.
— Hu Xijin 胡锡进 (@HuXijin_GT) November 12, 2019
【訳】トランプ大統領が行なった最新のスピーチで、実に多くの対中批判と不満が行われたが、それのどれも目新しさはほとんどない。アメリカ政府の高官も似たような発言を行なっており人々を退屈させている。このアメリカ政権は、嘘も1000回続ければ真実になると本当に信じているようだ。
いずれにしても、トランプ大統領が、米中貿易交渉は順調に進んでおり、一部合意に至りそうだと発言するツイートを繰り返すたびに、そして企業による自社株買いが史上最高額を記録していることにより、アメリカの株式市場は史上最高値を更新し続けている。しかし、その裏で起きていたことは、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行が大量の紙幣を印刷し、その資金を使ってアメリカ株を大量購入していたということだ。
スイス国立銀行の意図は、株価指標を史上最高値まで高めることで、2016年のような経済回復が起きるよう市場の信頼を上昇させることであった。
アメリカ証券取引委員会(SEC)が発表した最新の13 Fによると、 スイス国立銀行が保有する米国株は史上最高を記録しており、第3四半期は前期から1.5%上昇し941億ドルにのぼっている。
注目すべきは、スイス国立銀行が紙幣を大量に刷り第3四半期に追加購入した株式の中には、アリババ(BABA)株が128万株、フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS)株が97万株、JDドット・コム(JD)株が62万8000株、ジュニパーネットワークス(JNPR)株が53万7000株、グローバル・ペイメンツ(GPN)株が47万2000株、そしてマイクロソフト(MSFT)株が25万7000株含まれているということだ。これらはいずれも第3四半期にスイス国立銀行が「追加購入」した株数であり、既に保有している株式はこれら数字に含まれていない。
一方、スイス国立銀行が売却した株式には、ファースト・データ(FDC)の185万株、オラクル(ORCL)の22万9000株、そしてアップル(AAPL)の18万8000株が含まれている。
ただし、スイス国立銀行が保有している株式の中で最大なのは、順にアップル(全ポートフォリオの中の3.65%)、マイクロソフト(同3.58%)、アマゾン(同2.55%)、フェースブック(同1.5%)、そしてグーグル(同1.34%)となっている。
スイス国立銀行が過去6年間に資産配分先に選んでいるものとしては、テクノロジー、ヘルスケア、そして消費財分野の株が大きな比重を占めている。
(グラフの引用元: https://whalewisdom.com/filer/swiss-national-bank)
スイス国立銀行は、単に紙幣を大量印刷することで多額の株式を購入し、株式市場全体の価格を押し上げ史上最高値へと導いている(日本株に連動するETFを「爆買い」している日銀と似ている)。
このスイス国立銀行の金融政策は、あたかもトランプ大統領による米中貿易戦争の緊張が緩和し一部合意に至りそうだとするツイートと連動しているかのように行われており、世界経済の減速が底を打ち回復しているかのような幻想を生み出している。しかし、トランプの楽観論ツイートやスイス国立銀行の米国株の爆買いが単なる「演出」であり実体経済を伴っていないことが判明するとき、真っ先に非難されるのは米中貿易戦争ということになる。
Photo via Swiss National Bank
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