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ネット広告が避ける禁止用語をWSJが報道:ニュース記事をブラックリスト化

ネット広告が避ける禁止用語をWSJが報道:ニュース記事をブラックリスト化

ますます多くの企業が、ブラックリスト化されたキーワードを含むサイトに自社の広告が掲載されないように制限していることが、ウォール・ストリートジャーナル紙の報道で明らかとなった。

企業ブランドの保護に携わる企業Integral Ad Scienceは、特に広告主が避けるキーワードとして、「死、銃撃、殺人、銃、レイプ、爆発物、そしてトランプ」を挙げている。

多くの広告主と同じように、フィデリティー・インベストメンツは、議論を巻き起こすコンテンツのそばに自社のオンライン広告を掲載したくないと考えている。ボストンが拠点の同社は、避けるべきキーワードをまとめた長いブラックリストを作成している。

もしこれらブラックリストに掲載されているワードが一つでも記事のタイトルに含まれている場合、フィデリティは自社の広告を掲載しない。ウォール・ストリートジャーナル紙が今年初旬に確認した同社のリストには、「爆弾」「移民」「レイシズム」などを含む400以上のワードが含まれていた。また、「トランプ」も踏み込んではいけない禁止ワードとなっている。

近年、企業は自社のオンライン広告が、フェイク・ニュースやアダルト・コンテンツ、ヘイトやレイシズムを煽るコンテンツに掲載されることで非難にさらされている。こうした事態が起きてしまう原因は、広告代理店が読者やコンテンツをカテゴリー化する方法にある。その結果、広告主は、特定のキーワードを含む記事や特定のウェブサイトに自社広告を掲載することを制限するルールを設けるようになっている。

フィデリティのスポークスパーソンは、ウォール・ストリートジャーナル紙の取材に対して、「政治的な党派に関係なく、政治的な記事は当社のブランドに関係ない」と述べ、また、同社の価値観に合致しないその他のテーマについても広告掲載を避けていると語っている。

しかし広告業界においてブラックリストが存在するというニュースは新しいことではない。例えば、航空業界は航空機事故に関する記事に広告掲載することを避けている。最近のトレンドは、こうしたブラックリストが、これまで以上に複雑化、特定化し、非常に膨大なものになっていることだと広告業界の幹部たちは語っている。

広告掲載に関するブラックリスト化は、ニュース記事を報道するサイト運営者の売り上げを直撃しており、そのため真面目なニュースではなく、当たり障りないライフスタイル志向の記事を掲載するインセンティブが生まれる原因になっている。ニュース報道機関のいくつかは、ニュース記事を読んで読者が希望を抱くことを測定する技術を開発することに投資している。これにより、ニュース・サイトをブラックリスト化するのではなく、ニュース・サイトにも広告掲載する選択肢があることを、広告主に説得しようと試みている。

消費財メーカーのコルゲート・パルモリーブや、サンドイッチ・チェーンのSubway、そしてファストフードの巨人マクドナルドは、真面目なニュースに自社のデジタル広告を掲載することをある程度、禁止している多数ある企業の数社であると、これら企業の戦略に詳しい人物らは語っている。Wall Street Journal

ブラックリストの中には、非常に厳しい制限をかけているものがあり、ほとんど全ての政治系、真面目なニュース系のサイトに広告を掲載することを禁止している企業もある。

イギリスの報道機関であるガーディアン紙のコマーシャル・ディレクター、ニック・ヒューワット氏は、「長いキーワード・リストが利用されることで、パブリッシャーらは調査報道や真面目なジャーナリズム報道を行う代わりに、ライフスタイル系のコンテンツを掲載せざるを得ない状況になっている。これは、このような(広告主の)行動により、長期的にもたらされた結果である」と語る。ガーディアン紙は、広告主にお願いし、「ブレグジット」というような単語をブロックしてもらっていると同氏は語っている。Wall Street Journal

広告測定を行うDoubleVerify社によると、同社がサービス提供している177社の広告主では、1年前に比べてブラックリストを元に広告掲載をブロックしたケースが33%増加したという。また、ブロックした広告の総数は、2017年に比べて2倍以上に増加しているという。

一方、企業広告が安全なネットコンテンツにのみ掲載されるようサービス提供している先述のIntegral Ad Science社は、今年6月、同社と協力して広告キャンペーンを行なった広告主2637社のうち、1085社が「銃撃」というワードをブロックし、314社が「アイシス」をブロックし、207社が「ロシア」をブロックし、560社近くが「トランプ」というワードをブロックし、83社が「オバマ」をブロックしたという。

アメリカ国民の間でますます政治的な対立が深まる中、活動家たちの間では広告が新たな攻撃対象になっている。例えば、ツイッター上で活動しているSleeping Giantsは、右派系ニュース・サイトのブライトバート・ニュースに広告を掲載している数百社を名指しした。その結果、広告主である企業がこうしたニュース・サイトをブラックリスト化することに追い込んでいる。

コルゲート・パルモーティブは、ニュース・サイトにオンライン広告を掲載することをブロックしていると、同社の広告戦略に詳しい人物らが語っている。「通常、我が社のメディア・バイイングの目的は当社のメッセージが受け入れられやすい人々がいる場所に広告を流すことである」とコルゲートのスポークスパーソンはメールで回答している。同社は、「当社ブランドのポジティブで前向きなメッセージにより適合する機会」を探しているとも語っている。

Subwayは、最も真面目なニュース・サイトを含む7万件のサイトをブラックリスト化していると語っている。同社は、「当社の顧客がSubwayを購入したいと最も考える瞬間やポジティブな印象」に合わせたいと考えていると、同社のメディア・サービス・ディレクターであるメリッサ・サットン氏は語っている。

中古車販売業社のCarMaxは、自社ブランドを守るため、自動システムを利用することで、「災害」「極端な暴力」「炎上を煽る政治」といったカテゴリーに含まれるニュース記事に自社の広告が掲載されるのを防いでいると語っている。

マクドナルドは、米国内で広告枠を自動購入しているが、真面目なニュース・サイトはブロックしていると同社の広告戦略に詳しい人物は語っている。また、マクドナルド社のマーケティング・テクノロジー部門でシニアVPを務めているボブ・ラプジンスキー氏は、最近フランスのカンヌで開かれた広告会議の中で、「一度でも企業ブランドが毀損してしまうと、それを修復するのは容易ではない」と語っている。 Wall Street Journal

しかし、キーワードをブラックリスト化するだけでは、不適切なコンテンツに広告が掲載されてしまうことを防ぐことはできない。今年2月、AT&Tやネスレ、ディズニーは、YouTubeに自社広告を掲載することを停止する決定を下したとBloombergが報じている原因は、自社の広告が未成年の少女たちが不適切なにおわせぶりの行為をしているYouTube動画に掲載されていたためと報じられている。

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