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NY連銀、今週起きたレポ取引の利率急上昇の原因を調査開始:潤沢な資金を持つ銀行はなぜ短期貸付を拒んだのか?

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先週日曜から起きたレポ取引の利率急上昇は、アメリカ金融市場にパニックを引き起こした。米国の銀行が短期に必要とする現金が枯渇しかかるという事態に、2008年の金融危機以来、レポ取引の利率が10%と急騰した。その詳細についてはここで報じている

アメリカ金融市場ではレポ取引の利率が急上昇しパニック状態:2008年金融危機以来の上昇

ニューヨーク連銀は、複数ある連銀の中で最もアメリカ金融市場の安定運営を任されている。しかしニューヨーク連銀ですら、なぜレポ取引の利率が急騰したのか把握できていない。

フィナンシャルタイムズ(FT)紙とのインタビューで、ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は、「アメリカの金融システムに亀裂があることが判明した先週の事態をフォローアップしており、なぜ余剰の資金を保有している銀行が、翌日返済資金市場に資金を貸し付けることを怠ったのか」ニューヨーク連銀は調査していると語った。

このジョン・ウィリアムズ氏は、今年初旬、前触れもなくニューヨーク連銀のマーケット・デスク責任者であるサイモン・ポッター氏を解任しているだけではなく、ニューヨーク連銀の『急落防止チーム(”Plunge Protection Team”)』で2番目に重要な人物である金融サービス部門トップのリチャード・ジーナ氏を解任している。言うまでもなく、ニューヨーク連銀のマーケット・デスク責任者というのは、世界で最も重大なトレーディング・デスクを任されているトレーダーだ。

ウィリアムズ氏は、特に潤沢な流動資産を保有している巨大銀行が短期資金を貸し付けることを躊躇したことを疑問に思っていると話す。「今日、我々が注目しなければいけないのは、(連銀が保有している)準備金のレベルというよりも、市場がどのように動いているのかということだ」と同氏は語る。

この発言に問題があるのは、ニューヨーク連銀が注意すべきなのは、まさに準備金のレベルであり、金融市場がどのように動いているかではないということだ。明らかに、アメリカの金融システムにはキャッシュが枯渇しており、約4000億ドルの追加準備金が必要である。だからレポ取引がフリーズした。その因果関係は明らかだ。しかし、たたき上げのエコノミストであるジョン・ウィリアムズ氏は、なぜ市場がスムーズに機能しなかったのか連銀が把握できていないことをこの発言で認めてしまっている。

今週、夜間のレポ取引運用で、連銀が投入できる資金以上の需要がある状態が数日続いたことから、昨日金曜、ニューヨーク連銀は、この先2週間3週間(10月10日まで毎日)にわたって最大900億ドル規模の資金投入を行うことを発表した。今月は四半期末となるため、特に流動資金の需要が逼迫することが予想されている。

これら追加資金の投入により、資金調達市場で発生しているキャッシュが足りない状態は緩和される見込みだが、このマーケットを混乱させた原因を生んだのは誰かという「犯人探し」が始まっている。

連銀の幹部たちは、彼らのせいではないと発言しており、銀行が果たした役割について注目していると語った。より正確に言うと、潤沢な流動資金を持つ大手銀行が、その役割を怠り、資金が不足している他の銀行に資金を貸し付けなかったことに注目しているという。

具体的に、連銀の幹部たちは、なぜ連銀にある商業銀行の口座からレポ取引市場へと資金が移動しなかったのかを調査していると、ニューヨーク連銀のウィリアムズ氏と同マーケット・グループのシニアVPローリ・ローガン氏は語った。

皮肉なことに、なぜ資金が移動しないかを把握することこそが連銀の役割である。ウィリアムズ氏がFT紙とのインタビューで認めてしまったように、連銀がその原因を把握できていないことは、今年初旬にニューヨーク連銀で最も経験豊かなトレーダー2名を彼が解任してしまったことと関係あるのではないかという疑念が生じる。また、連銀が、銀行間取引市場について我々が知る以上のことを把握できていないのはなぜかという疑問も生じる。

ローガン氏は、数少ない特定の銀行に集中して余剰資金が集まっていることを一つの可能性として指摘している:

「準備金は集中ており、各銀行が必要とする最低レベルの資金需要に対して、余剰準備金は集約されすぎている。そして重要な質問となるのは、この集約レベルが下がるにつれて、これら準備金がどのように再配分され、その再配分プロセスがいかにスムーズに行われるかということだ」とローガン氏は語った。

連銀の幹部たちは、今週、法人税の支払いと国債の決済が行われるために、金融市場である程度の資金需要が逼迫することを予測していた。ニューヨーク連銀は、短期貸付市場をモニタリングしながら、貸付可能な準備金の残高を特に注視していた。しかし、レポ取引の利率が、数分のうちに2.5%から10%へと急騰するとは予期していなかった。

ローガン氏は、レポ取引の利率が上昇すると、銀行は高い金利収入を獲得するために、連銀の口座に保有している余剰資金を引き出し、レポ取引市場で貸し付けるだろうというのが市場のメカニズムと思われていたと語る。しかし、実際は、銀行はレポ取引市場に参入することに恐怖を感じ、様子を伺うだけの状態となった。そのため、ニューヨーク連銀が銀行の代わりとなってキャッシュを市場に投入する必要に迫られている。

潤沢な資金を持っている大手銀行は、何をそんなに恐れているのだろうか?彼らが、潤沢な資産を、他の銀行に短期でしかも高金利で貸し付けることを躊躇する理由は何なのか?これら大手銀行は、ニューヨーク連銀ですら知らない何を知っているのだろうか?

ニューヨーク連銀の職員、マーガレット・マコーネル氏は、あらゆる危機「ブラック・スワン」を予測することを担当している人物として報じられているが、彼女ですら今週のレポ取引で起きたパニックは予測できなかったということになる。

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