映画「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」とドラマ「チェルノブイリ」を合わせて見たい
門田隆将氏が上梓したノンフィクション作品「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 (角川文庫) 」ーーこれを原作とした映画「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」が2020年3月に全国の劇場で公開される。
この映画はタイトルからも想像できるように、2011年3月11日に、福島第一原発で事故が発生した時、現場では何が起きていたのか?というテーマに迫った作品。
ここで予告編が公開されている:
あらすじやキャストの紹介は、すでにインターネットにあふれているのでここでは割愛するとして、この映画が公開されると聞いてすぐに連想したのが、33年前にソビエト連邦のチェルノブイリで起きた原発事故を元に作られた海外ドラマだ。
今年5月、全米ではHBOが「1986年4月26日、チェルノブイリ原発で事故が発生した時、現場では何が起きていたのか?」をテーマにしたドラマ「チェルノブイリ」を放送している。このドラマ(全5話)が放送されると、全米では大きな話題となった。そして先週日曜、アメリカで開催されたエミー賞で、このドラマ「チェルノブイリ」は10部門を受賞している。
この話題のドラマが、ついに2019年9月25日(水)より日本でもBS10スターチャンネルが独占放送している。9月30日(月)には、吹き替え版が放送される。
BS10スターチャンネル 海外ドラマ『チェルノブイリ』(全5話)
【STAR2 字幕版】2019年9月25日(水)より 毎週水曜 よる11:00 ほか
【STAR3 吹替版】2019年9月30日(月)より 毎週月曜 よる10:00 ほか
【配信情報】「スターチャンネルEX」にて2019年9月26日(木)よりオンデマンド配信スタート
ドラマ「チェルノブイリ」について、日本語記事でも紹介している:
世界が認めた新傑作、ドラマ「チェルノブイリ」日本上陸 ─ 史上最悪の原発事故、衝撃のスリラー群像劇に
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超話題作「チェルノブイリ」冒頭10分間ノーカット映像が公開 ─ 史上最悪の原発事故が起こった瞬間、混乱の発電所内では
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日本語字幕のついた予告編がここで視聴できる:
https://www.youtube.com/watch?v=eHe4o3RKHy4
暗いテーマであることや、登場人物の名前がロシア語(ウクライナ語?)で覚えにくいという難しさはあるものの、是非とも見るべき作品となっている。
ニュースや歴史教科書からチェルノブイリの原発事故について知ってはいても、あの日、現場では何が起きていたのか?ということはあまりに知られていないということを、このドラマを見ると気づかされるはずだ。
特に核融合の仕組みなどの専門知識がない一般人にとっては、科学的な事故原因を真に理解することは難しい。国連が「チェルノブイリ・フォーラム・レポート(Cherynobyl Forum Report)(PDF)」を報告しており、専門知識がない一般人でもチェルノブイリの事故原因を理解できるのはこの報告書と言われている。HBOのドラマ「チェルノブイリ」は、この報告書にある科学的見地を無視して、ジャーナリストや歴史学者、反原発活動家の意見を取り入れていると指摘する批判もある。
ドラマ仕立てにするために脚色されている箇所があるということを頭の片隅に入れて、それでもなお、このドラマは一見する価値がある。
副主任エンジニアのアナトリー・ディアトロフ(左)
チェルノブイリ原発で副所長だったアレクサンダー・コバレンコ氏は、ドラマ「チェルノブイリ」が描く悪役とされる人物(副主任エンジニアのアナトリー・ディアトロフーー上の写真)は正しいが、英雄(事故処理を先導した科学者ヴァレリー・レガソフーー記事冒頭の写真)は間違っていると指摘している。ドラマの英雄的な主人公として描かれているヴァレリー・レガソフ氏は、当時モスクワ在住の化学者であり、核施設の専門家ではない。実際に事故処理を推進したのは他の核技術専門の科学者であり、その1人はエブゲニー・イグナテンコ氏だったと指摘する。また、事故当時の状況が、ドラマで描くよりも「ずっと悲惨」だったとも語っている。
ドラマの最後に、「事件のその後」を説明する字幕が流れる。その中で、ゴルバチョフ書記長は2006年に執筆した回顧録の中で次のように回想していることが紹介される。
チェルノブイリで起きたメルトダウンが・・・おそらくソビエト連邦が崩壊した真の原因だった。
Photos via HBO
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