SoftBankのビジョンファンド2は閉鎖の可能性が高まってきた:WeWorkの暴落が引き金
SoftBankグループの孫社長は、同社のビジョンファンド2に出資してくれる新たな投資家を探すことができず非常に困難な状況に直面している。それもこれも、最初のビジョンファンドが出資したWeWorkの企業価値が暴落し、その煽りで他の主要な出資先のバリュエーションが下落しているためだ。複数の情報源とされる人物がロイター紙に語った。
孫社長に対してアドバイスを進言している主要人物らは、ビジョンファンド2を中止するよう孫社長に強く勧めているという。SoftBankの社内の議論を知る2名の人物がロイター紙に語った。
SoftBankグループは、380億ドルの資金をビジョンファンド2にコミットしている。しかし、SoftBank以外に巨額の投資をコミットしているところは皆無であると情報源である人物らは語った。
先月、WeWorkの企業バリュエーションが大暴落したことが、孫社長の評判を著しく傷つけることになった。ロイター紙は、この先、数期にわたってビジョンファンドは多額の評価損を計上するだろうと報じている。
SoftBankのビジョンファンドは、WeWorkに100億ドル近くをつぎ込んでいる。そのうちの一部は、2019年第1四半期にWeWorkの企業評価が470億ドルをつけた際に同社に出資されている。しかしWeWorkのIPO申請が撤回され、現在の企業価値は100億〜120億ドル程度と見積もられている(フィナンシャル・タイムズ紙は30億ドルと見積もっている)。
ここでも報じたように、孫社長がIT系スタートアップ企業へ高いリスクを取って巨額を投資してきた中で、スタートアップ企業を評価する際の重要なバリュエーション指標を見逃してきた事実は否定できない。
さらに孫社長が犯してしまった失敗は、今年初旬にSoftBankグループの株式55億株を自社株買いするという発表を行ったことだ。当時、WeWorkやUber、Sprintの企業価値が大きく上昇したことで、孫社長はSoftBankの株式を自社株買いする決定を下した。
直近の46取引日において、SoftBankの株価は30%も急落している。ついに株式市場も、孫社長とビジョンファンドが大きな賭けに失敗してしまったことに気が付いてしまった。
今後、世界経済におけるマクロ指標が引き続き悪化を続けるならば、孫社長のビジョン・ファンド2は早急に閉鎖される可能性がある。
ここでも報じたように、世界のIPO市場やM&A市場は減速している。
また、今週はアメリカの一流VCらが緊急会議を開き、シリコンバレーのユニコーン企業らに対してこの先1年間はIPOを実施しないよう警告していることはここで報じた通りである。
ロイター紙は、最初のビジョンファンドが970億ドルの資金を調達していたと記している。この金額は、2018年に米国のVC業界全体が調達した金額よりも大きい。SoftBankのビジョンファンドがどれほど巨額なものであるかがわかるだろう。
ビジョンファンドはUber、Slack、WeWorkなどに投資を行ってきたが、これらスタートアップ企業の企業バリュエーションは今年ことごとく暴落している。これはITスタートアップ企業への投資熱が冷めている、つまり「波」が去ってしまったことを示す警告となっている。そして重要なバリュエーション指標を見逃してきた孫社長は、波が去った後になってその抱えた巨大リスクをヘッジしていないことが露呈してきている。
今年7月、Apple、Microsoft、そしてイギリスのスタンダードチャータード銀行が、ビジョンファンド2へ出資をコミットすることを示唆していた。しかしそれから3ヶ月がたち、ビジョンファンドの出資先企業の市場価額が帳簿価格を大きく下回る中、これら大手企業がいまだにコミットしているかは不明である:
「これら大手企業が、ビジョンファンド2に関する資金調達について・・・出資計画を延期するというのは非常にありえることだと思う」と、シリコンバレーを拠点にしたManhattan Venture Partnersのアンドレア・ラマリ・ワルン氏は言う。
孫社長が高リスクを取ってITスタートアップ企業へ大金を投資し続けた結果、最初のビジョンファンドへ出資した投資家たちは巨額の損失を被る可能性が待ち受けている。こうした状況でビジョンファンド2へ出資者が集まらないのは当然と言えるだろう。SoftBank以外に主要な出資者が集まっていないという報道からも、ビジョンファンド2はすでに死に体であると言えるかもしれない。
中央銀行が量的緩和を通して大量の資金を市場に投入している間は、資金調達を行う人たちは皆、天才と呼ばれる。しかし一旦、市中に流れ込んだ資金(free money)が逃げ始めると、天才は道化に変わる。
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