三菱UFJ銀行がSoftBankへの追加融資を拒否:SoftBankはWeWork救済策やニューマン氏への「退職金」を減額することを検討中
今週、Nikkei Asian Review紙は、SoftBankが複数の大手邦銀から3000億円(27億6000万ドル)の融資を受けるための協議を行なっていると報じた。
SoftBankが巨額の追加融資を必要としているのは、当然、破産寸前にまで追い込まれたWeWorkを救済するためである。今世紀最悪の投資とも言われるWeWorkへの救済策の一部として、SoftBankはWeWorkに対する持ち株比率を高めるために30億ドルの株式公開買い付けを実施しなければならず、さらに融資やその他の手段を利用して追加で33億ドルを出資する必要がある。(救済策の詳細はここで報じた通り。)
SoftBankは2兆円(190億ドル)以上の手元資金を保有していたが、WeWorkへの追加融資でその手元資金が下がってしまうため、それを一定レベル以上に維持するために銀行からの追加融資を希望していた。SoftBankへ融資を行なっているメイン・バンクのみずほ銀行やその他の邦銀にとっては、日本が超低金利の時代に収益を上げるまたとないチャンスとなっている。
しかしSoftBankは新たな問題に直面している。大手邦銀の多くが、すでにSoftBankに多額の融資を行なっており、さらに「SoftBankリスク」を取ることに慎重になっているということだ。これら大手邦銀は、SoftBankのビジョンファンドへも投資を行なっており、邦銀は「恥の上塗り」とならないよう慎重になっていると考えられる。WeWorkのIPOが白紙撤回されたことやUberのIPO後の株価が低迷したことで、これらベンチャー企業への出資者であるビジョンファンドも多額の損失を計上している。
そして日本最大の商業銀行であり3大メガバンクの一つである三菱UFJ銀行が、SoftBankへの追加融資を控えるとフィナンシャル・タイムズ(FT)紙が報じた。この追加融資は、SoftBankがWeWorkへ行う95億ドルの救済パッケージの原資として使われるはずだった。みずほ銀行および住友三井銀行から構成される銀行連合は、WeWorkの救済について暗黙の承認を行なっているが、SoftBankへ融資を行なっている銀行連合を構成する3番目の銀行である三菱UFJ銀行は、もし追加融資がWeWorkを救済するために使われるのであれば融資の要請を却下すると語った。
FT紙によると、住友三井銀行もまた、WeWorkの救済のためには融資を行いたくないが、SoftBankがどのように銀行からの融資で得た資金を使うかについて、銀行側にコントロールする権利がないことを認めた。(しかし三菱UFJ銀行は融資そのものを却下したのに対して、住友三井銀行はSoftBankがWeWorkの救済のために調達資金を使うと知りつつ、それでもなお融資を行なうことにするというのは腑に落ちない。)
アナリストらによると、こうした銀行による前例のない慎重な態度は、SoftBankへ融資を行なっている大手邦銀が孫社長による投資判断を信用していないことを意味し、強気の投資を繰り返す孫社長率いるSoftBankと邦銀との間の蜜月関係が岐路に立たされたことを示している可能性がある。また、大手邦銀がSoftBankを見放し始めたということは、次にSoftBankが追加資金を必要とする時、同社が助けを求めるのは銀行ではなく、直接、日銀に救済を求めることになる可能性を意味する。
最近、SoftBankが7044億円という巨額の四半期営業損失を計上したことや、WeWorkの企業バリュエーションが470億ドルから80億ドルもしくはそれ以下へと暴落したことにより、SoftBankが行なってきた投資先の企業評価の正当性が疑われ始め、大手邦銀の間で「確実に雰囲気が変わり」、SoftBankによる投資戦略に対して疑念が生じていると、SoftBankに近い銀行員の1人は語っている。
そして今週木曜、SoftBankの複数の幹部たちは、WeWorkの破産を避けるために行う救済策が「払い過ぎ」であることを認めたとブルームバーグが報じた。救済策パッケージの一部として30億ドル分のWeWork株の株式公開買付を行う提案をしていたが、その規模を縮小する検討を行なっていると報じられている。
社内の議論を知る複数の人物らによると、SoftBank内部で行われている議論の中心は、WeWorkの設立者、社員、そして投資家らから30億ドル分の株式を公開買い付けする案を減額することに関してだという。そして規模が真っ先に縮小されるのは、同社の共同設立者であるアダム・ニューマン氏から買い取る株式の金額になるだろうとブルームバーグに情報提供した人たちは語っている。
ニューマン氏に一度は約束された巨額の「退職金」が減額されることに異論を唱える人は少ないだろう。しかし、SoftBankが一度WeWorkの投資家たち、そしてニューマン氏と締結した合意を破棄できるかは不透明である。一度合意した内容を変更するとなると、今度はSoftBankに対してWeWorkの投資家やニューマン氏が訴訟を起こしかねず、泥仕合になる可能性が高い。そうなると、SoftBankによるWeWorkの救済そのものが危ぶまれる事態となる。
SoftBankとWeWorkの間で一度は合意した内容には、ニューマン氏が9億7000万ドル分のWeWork株をSoftBankに売却することが含まれている。ブルームバーグはこの詳細を次のように報じている:
SoftBankの内部で最近行われた議論の中で、数名の幹部らはニューマン氏への支払いが巨額すぎると発言したと、この社内の議論を知る複数の人物が語った。事業が混乱状態であるにもかかわらず、ニューマン氏には好条件の取引内容が与えられたことに関してWeWorkの社員たちが怒りを表明し、(SoftBankも)「買ってから後悔」しているという状況かもしれない。ニューマン氏、SoftBank、WeWorkのいずれの代理人もコメントすることを拒否している。
ニューマン氏は、SoftBankによるWeWork救済策を受け入れるための取引条件の一部として、同社の取締役会から退任しており、代わりにSoftBankの幹部であるマルセロ・クラウアー氏がWeWorkの会長職に任命されている。また、ニューマン氏へ支払われる「退職金」の一部に、コンサルティング費用として数百万ドルの支払いが含まれており、WeWorkの社員の間でもニューマン氏への「退職金」が巨額すぎると不満の声が上がっている。しか同社の全社員の19%にあたる2400人は、本日、WeWorkにより解雇された。
しかしブルームバーグが報じているように、SoftBankはまだ判断を下しておらず、当初の合意通りに30億ドル分の株式公開買付を行うことを選ぶ可能性がある。しかしそれを行うための資金として、日本の大手邦銀から全額の融資は得られないかもしれない。もしSoftBankがアダム・ニューマン氏への「退職金」をゼロにする判断を下せば、三菱UFJ銀行はSoftBankへの追加融資を承認するだろうか?
また、孫社長は、SoftBankがWeWorkへ約束した15億ドル分の新株予約権を破棄できるか弁護士団と相談したと語っている。しかし、弁護士団の答えは「否」だった。新株予約権を破棄する代わりに、孫社長は割安の価格でさらにWeWork株を購入する決断を下しており、SoftBankが保有しているWeWork株の一株あたりの平均コストを下げる戦略に出ている。
この先、大きな事業の拡大も利益の上昇も見込めないWeWorkに対して、すでに行った投資資金の回収を諦めるどころか、さらに株を買い増す判断を行った孫社長は、ベンチャー投資の賢者となるのか愚者となるのか。
これまでのところ、世界的に起きていたベンチャー投資バブルで最も愚かなのは、巨額のバリュエーションに踊らされた孫社長だけではなく、日本のマネーというのが、アメリカ国内の意見だ。日本のマネーは、ベンチャー投資でまた「ババ」をひかされたのだろうか?
今月19日、日本のニュース・アプリであるスマート・ニュースが、100億円の資金調達に成功したと報じられた。企業価値は120億ドルをつけたと報じられている。この資金調達を主導したのは日本郵政キャピタル株式会社とACA Investments。
ニュース統合アプリは数年前にブームとなったが、どれもユニコーン企業にはならず、閉鎖と合併を繰り返している。いまさらこの分野の企業に巨額の投資を行うことや、ベンチャー投資バブルが崩壊しかかっているこのタイミングで行うことには懐疑的な声が多い。
Japan is without doubt the dumbest money this bubble cycle https://t.co/uCduPdM461
— zerohedge (@zerohedge) November 18, 2019
【訳】今のバブル周期の中で、日本は間違いなく最も愚かなマネー(投資家)だ。
Photo via Bloomberg
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