原油の価格競争はプーチン大統領の自作自演:アメリカのドル覇権を終焉に導くための意図的作戦
今回の株価暴落とそれに起因する金融危機は、新型コロナウィルスという「ブラック・スワン(予測不能な大惨事)」に加えて、原油価格の大暴落というもう一つの「ブラック・スワン」、つまり2羽のブラック・スワンが同時に発生したために起きていると説明する報道が少なくない。
しかしロシアとサウジアラビアの間で始まった原油の価格競争は、本当に「ブラック・スワン(予測不能な大惨事)」だったのだろうか?日本でも「米原油先物は続伸、ロシアVSサウジの行方は?(ロイター|東洋経済)」や、「[FT]サウジ、ロシアに仕掛ける原油の価格競争(日本経済新聞)」というような対立を煽る見出しが踊っているように、あたかもサウジとロシアが真顔で価格競争を行っていると報じるメディアが多い。しかしこれらはどれも本質を見逃している。
長年アメリカから厳しい経済制裁を受けているロシアは、近年、金(ゴールド)を買い増し、原油取引をドル建てからユーロ建てに変更するなど、米ドルからのデ・カップリングを進めていた。こうした「防御」の準備が進められていたということは、アメリカ経済に反撃を加える「攻撃」の計画をもロシアが練っていたと考えるのが自然だ。事実、昨年末、プーチン大統領は「ドル覇権はまもなく終わる」と予言していた。
主流メディアではあいかわらず「ロシアとサウジの価格競争」と報じている中、TheChicagoEconomist.comの執筆者V F氏は、これはロシアによる意図的な作戦であると指摘する。
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『プーチンの一針』
始まるカウントダウン
昨年9月、連銀(FRB)は、オーバーナイトの短期資金市場に表面化し始めた、あらたな制度上の問題について認めざるを得ない状況が発生した。この短期資金市場は2008年に破綻したシステムと同じであるが、今回は多少異なる問題が生じていた。米国政府による経済政策の後押しを受けて、金融市場では多額の借金が行われてきたため、短期金融市場は文字通りキャッシュ不足に陥ってしまったのだ。そして今週、また新たな金融市場の救済が始まった。最初は連銀から金融市場に750億ドルの資金が投入され、それが2019年末には1000億ドルへと増額され、それから5000億ドルになり、そして現在は無制限となっている。しかし根本の問題は一向に解決されているようには見えない。むしろ悪化しているようにすら見える。
2020年初頭、レポ取引市場の崩壊が加速し始める中、COVID-19によるパンデミックが我々の生活の中に忍び込み始めた。
1月中旬までに、このウィルスはチャイナを奈落の底に突き落とした。それと共に工場が一斉に閉鎖されたため、原油市場も道連れとなった。1月後半に、我々は最初に原油価格が60ドルから50ドルに下落するのを目撃した。それが2月末までに45ドルの底値を記録し、原油の産出量が減少に転じるだろうという期待のもと、多少の反発を繰り返しながら3月第1週に突入した。
2つのスーパー・パワー
ここで立ち返って、世界の状況を見てみよう。
米国は過去12年間、借金を積み重ねてきた。その一方で、ロシアは金(ゴールド)の最大の購入者であり、米国債の最大の売り手となっている。
Graph from Bloomberg
つまり、ロシアは自国の財源を強化してきた一方で、米国は国の債務対GDP比を2倍にし、連銀はバランスシートを95%も拡大して4兆ドルにし、米国の金融システムは過剰なレバレッジ(借金)により文字通りキャッシュ不足を引き起こしてしまった。そして米国は、9・11以来、経験したことのない集団ヒステリー状態に屈してしまった。
プーチンの登場
2020年3月6日、OPECはロシアに対して、原油価格を安定化するために協調減産を呼びかけた。誰もが、ロシアはこの呼びかけに応じて減産に合意し、原油価格は安定化するだろうと予想していた。
しかしプーチンには別の考えがあった。
これこそ、プーチンがホワイトハウスとの「チェス・ゲーム」を行う中で、米国の政権がいくつか交代するのを辛抱強く耐え忍びながら待ち望んでいた絶好の機会だった。プーチンは「ギャンビット(*)」の一手を打つ用意が整っていた。アメリカ人の強みであるその中核、つまり基軸通貨としての米ドルを攻撃するために、自らの資産の一部を積極的に犠牲にする用意ができていた。タイミングさえ正しければ、エネルギー市場はいつでも攻撃兵器の選択肢になる。(訳者注:日本人には、アメリカによる対日資産の凍結と石油の全面禁輸措置によって、ABCD包囲網が完成したことがすぐに連想されるだろう。)
(*)ギャンビット (Gambit) はチェスのオープニングにおける戦術の一つ。駒(通常はポーン1個)を先に損する代償に、駒の展開や陣形の優位を求めようとする定跡を言う。(出典)
ロシアとサウジアラビアは、1バレルあたり20ドルでも生産が可能である。一方、アメリカのシェール・オイルの生産コストは、平均で1バレルあたり46ドルである。つまり、サウジアラビアとロシアは、原油価格が30ドル以下でもしばらくの間は生きていけるのである。それと比較して、米国のエネルギー・セクターは、銀行とヘッジファンドがシェール石油企業にさらなる追加融資を積極的に行わなければ、30ドル以下の原油価格ではあっという間に破綻してしまう。しかしアメリカは不運なことに今キャッシュ不足に陥っている。
つまり、プーチンが3月6日OPECの協調減産という提案を拒否したことで世界に衝撃を与え、そしてサウジを罠にかけて原油の価格競争へと引き込んだ時、プーチンはアメリカの10年にわたる「全てがバブル」という膨れ上がった借金経済に、一針を突き刺した。これは、おそらく大恐慌以来アメリカが最も弱っていた瞬間を狙った、天才的な一手であった。世界第2位のスーパー・パワーの権力者となって以来、プーチンが待ちに待った瞬間であった。
ついに迎える大団円
今年、アメリカは大統領選挙の年である。そして(陰の)権力者たちは、ホワイトハウスを自分たちの手に取り戻そうと必死である。彼らは何を犠牲にしてでも、ホワイトハウスを操る力を取り戻そうとしている。ジョージ・ソロスやその他の金融資本家たちは、社会が混沌に陥るという絶好のチャンスをみすみす逃すような人たちではない。彼らは、国ごとに経済を崩壊させるべく連携している。
米国における都市封鎖は、グローバリストたちの本拠地であるロサンゼルス、ニューヨーク、そしてシカゴという全米3大都市で開始された。しかし今年、マイノリティー有権者たちがトランプ支持へとシフトし始めている。トランプ政権下では、マイノリティーの就職率が最高を記録し、またマイノリティーによる経営者数も米国史上、最高を記録している。もしトランプが、ニューディール政策以来、過半数のマイノリティー有権者からの票を獲得して当選する初の共和党の大統領になれば、ポピュリスト運動の流れは確固としたものになり、来世紀までこの流れは続くことになるだろう。
そしてこのウィルスと金融崩壊という出来事は、プーチンにとってだけではなく、ジョージ・ソロスや彼の国賊一味にとっても完璧な瞬間をもたらした。
アメリカは絶望的な状況である。集団ヒステリーの催眠にかかっていない我々は、ただ落ちついてこの国が燃え尽きるのを見守るしかない。
3月24日、執筆者V F
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