【論説】ビル・ゲイツがワシントンポスト紙へ論説記事を投稿:「経済を再開するために我々に必要なイノベーションはこれだ」
今の所、米国はドイツの事例の後に続くことができる。(ドイツでは)陽性結果となった人には全員インタビューを実施し、彼らと接触した人には全員、誰か(政府関係者)がフォローアップを行うためのデータベースが構築されている。このアプローチは完璧なものからは程遠い。なぜなら、それは感染者たち自らが接触した人を正確に報告することに依存しており、接触した人全員をフォローアップするためには多くの職員が必要となるからである。しかし、これは現在全米で行われている場当たり的な接触者の追跡に比べると、かなり改善された方法である。
それよりもずっと優れた解決策というのは、より幅広い人たちが自主的にデジタル・ツールを導入することだ。例えば、ユーザが行った場所を記憶するのを支援するアプリが複数ある。もしあなたが陽性結果となった場合、自分の行動履歴を見返すことができるほか、あなたの接触履歴についてインタビューをしにきた職員とそれを共有することもできる。そして、ブルートゥースと人の耳には聞こえない音を発信することで、携帯電話がその近くにある他の携帯電話を探知(そして記録)することを可能にすることを提案する人たちもいる。もし誰かが陽性結果となった場合、彼らの携帯電話は(接近した履歴がある)他の携帯電話にメッセージを送信し、その携帯電話の所有者たちは検査を受けることができる。もしほとんどの人たちがこうしたアプリをインストールすることにした場合、ある程度の助けになるだろう。
当然、陽性結果が出た人であれば誰でも、すぐにどういった治療の選択肢があるのかを知りたいと思うだろう。しかし、現時点では、COVID-19に対する治療方法はない。人の体がウイルスに反応する仕方を変えることで効く、ハイドロキシクロロクイン(Hydroxychloroquine)は、多くの注目を集めている。我々の財団は、5月末までにCOVID-19に効果があるかどうかを示すことになる臨床試験に出資している。しかし、その効果はそれほど大きくないように見える。
しかしさらに効果が期待できるいくつかの候補が現れる兆しがある。その一つは、COVID-19から回復した患者から採血することが関わってくる。その血液にコロナウイルスや他の感染症がないことを確認したのち、血漿(そしてそれに含まれる抗体)を病気の人々に投与する方法である。いくつかの大手企業が、この方法が成功を収めるか見極めるために協力している。
別の種類の候補薬には、新型コロナウイルスに対して最も効果的である抗体を検知することが関わっており、それを研究所で製造することである。もしこの方法が成功しても、どれくらいの服用回数の薬が生産可能かはまだ不明である。1回の服用あたりどれくらいの抗体物質が必要であるか次第である。2021年、生産者は最低でも10万人分、もしくは多ければ数百万人分の薬を製造できるかもしれない。
今から1年後、もし人々がスタジアムで開かれるスポーツの試合やコンサートなどの大型のイベントに行くことができるようになっているとすれば、それは科学者たちが非常に効果のある治療方法を発見し、それのおかげで誰もが安心して再び外出できると感じられるようになっているからである。しかし残念ながら、私がこれまで目にしてきた証拠からすると、科学者たちは優れた治療法を発見する可能性は高いだろうが、患者が回復することを実質的に保証するものは何一つない。
こうした理由から、我々は4つ目の分野のイノベーション、つまりワクチンに投資する必要がある。ワクチンを開発するために必要な時間が1ヶ月追加されるたびに、それは経済が完全に通常に戻るまでその分延びることになる。
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