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トランプ政権の主任補佐官らが香港ドルの米ドルペッグ制廃止を提案|ブルームバーグ通信が報道

トランプ政権の主任補佐官らが香港ドルの米ドルペッグ制廃止を提案|ブルームバーグ通信が報道

香港10ドル紙幣(Photo via Flickr)

 

国務省のポンペオ長官は、7月7日(火曜)、チャイナのSNSアプリTikTokを米国内で禁止する可能性があることをFOX Newsで発言し、それが日本でもニュースになっている。しかしこれと同じ日、TikTokよりも重大な対中制裁が米国政府内で検討されていることが明らかとなった。トランプ政権の複数の主任補佐官は、香港ドルの米ドルペッグ制を廃止すべきだと提案していると、この日の夜ブルームバーグ通信が報じた。ただし、政権内部ではこの制裁に対する根強い反対意見があるとも報じられている。

 

本件に詳しい複数の人物からの話として、香港の米ドルペッグ制を廃止するという考え(おそらく香港の銀行が米ドルを購入することに制限を加えるということ)は、ポンペオ長官の補佐官たちが幅広い議論を行う中で提案したとブルームバーグは報じている。しかし、この案はホワイトハウスの上層部まで格上げされて議論されていない。つまり、政権内部でまだそれほど深刻には検討されていないことを示唆している。

 

最近、チャイナ政府が国民に向かって株を購入するよう大号令をかけたことで、中国株は急上昇している。しかし中共政府が株の購入を国民に呼びかけた大きな理由の一つは、チャイナ国内から投資資金が大量に海外に流出しているためである。

 

チャイナに特化した株式ファンドは、11週連続で資金の純流出を記録している。

 

 

チャイナは、巨額の投資資金がチャイナ株から流出した後の「穴」を急速に埋める必要に迫られており、特に米ドルの流出を逆流させチャイナの株式市場に戻す必要がある。海外からのドル建ての投資資金を呼び戻す「呼水」として、チャイナは政府主導による株価の上昇を演出した。その目的は当然、チャイナ国内の株価の上昇に惹かれた海外(特にアメリカ)のデイ・トレーダーたち(リテール顧客)をおびき寄せるためである。

 

* * *

 

このように「ハリボテ」のチャイナ市場への制裁として、米国政府は香港の米ドルペッグ制の廃止を検討していることが報じられたわけだが、このような制裁はチャイナが被るダメージよりも、香港の銀行や米国そのものへのダメージの方が大きいと懸念する声がある。そのため、アメリカ政権内部で米ドルペッグ制の廃止案は根強い反対に遭っていると報じられている。

 

しかし、アメリカ政府が制裁を加えなくても香港の米ドルペッグ制が崩れる可能性が指摘されている。それは、香港の富裕層たち50万人が自分たちの資産を海外に避難しさえすれば、香港金融管理局(HKMA)の外貨準備金が容易に枯渇してしまうというものだ。このことをRabobankのリサーチ部門トップであるマイケル・エブリ氏が指摘している。外貨準備金が枯渇すれば、米ドルペッグ制を維持することは不可能になる。これまで何年にもわたって、海外から香港に資本が流入していたために、香港の米ドルペッグ制は安泰であった。しかしその資本の流れは、現在、逆流している。

 

米ドルペグ制の廃止という本格的な金融戦争をトランプ政権内部で議論していることがメディアにリークされたことには、もう一つの見方がある。それは、米国当局筋は積極的に香港を拠点にした銀行を制裁したいと考えているということだ。(特にHSBC。ポンペオ国務長官は、HSBCが「忠誠を示す」必要があると名指ししている。)

 

そしてこのブルームバーグのニュースが報じられた翌日水曜、長年香港から巨額の売り上げを得てきた世界的金融機関の株価は下落している。特に株価の下落が激しかったのはHSBCである。この日ロンドン市場でHSBC株は4.3%も下落(アメリカ市場では2.07%下落)し、6月11日以来、最大の下げ幅を記録している。(6月11日、北京政府関係者がHSBCは香港国安法を積極的に支援していないと名指ししたことで同銀行の株価は大幅に下落していた。)

 

HSBCと同様、英国を拠点に香港で活動している銀行で、HSBCにとって最大のライバルはスタンダードチャータード銀行である。同銀行の株価も、この日、米国市場では1.49%下落している。

 

香港の銀行は米中戦争の中で板挟みにあっており、Investecのアナリストであるイアン・ゴードン氏は、HSBC株を持っている「理由がなくなりつつある」と記している。HSBCは、組織改革として3万5000人の行員を解雇する計画を発表したが、米中間の金融戦争を生き残るためには人員削減だけでは十分ではないようだ。

 

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