サンフランシスコの中国領事館に逃げ込んでいた研究者をFBIが逮捕
FBIに査証詐欺で起訴されていた人民解放軍・空軍軍医大学所属の研究者タン・ジュアン(Tang Juan)被告人(37歳)が、昨晩FBIに逮捕された。拘置所の記録で明らかになったと、カリフォルニア州サクラメントの地元メディアThe Sacramento Beeなど複数のメディアが報じた。
FBIによる面接を受けた直後、タン被告人はサンフランシスコのチャイナ領事館に逃げ込み、外交特権を使って逮捕されることを逃れていると今週報じられていた。
研究者交流プログラムの一環としてJ-1ビザ(非移民ビザ)を使って昨年12月27日に訪米し、カリフォルニア大学デービス校で客員研究者として勤務していたタン被告人は、現在、サクラメント郡刑務所で勾留されているとオンラインの勾留記録が記していると報じられている。
連邦裁判所に提出された資料によると、カリフォルニア大学デービス校でガン研究の客員研究者として数ヶ月勤務していた今年の6月20日、FBIの捜査員らは捜索令状をもってタン被告人のデービスあるアパートを訪れ、彼女が人民解放軍の軍人であることを偽ってビザ申請したのではないかと職務質問を行っていた。その後、6月中にタン被告人はデービス校から姿を消していた。
彼女の他に、今週、米司法省は経歴を偽って米国の研究所に潜り込んだとして3人のチャイナ国籍の研究者を新たに逮捕したと発表していた。そして今週木曜、司法省は、タン被告人が「サンフランシスコにあるチャイナの領事館で現在かくまわれている、司法からの逃亡者である」と発表していた。
アメリカ政府当局は、許可なく領事館に立ち入る権限はない。そのため、今週金曜、タン被告人が逮捕されたのは彼女が自ら出頭したためであるかについては現時点では明らかになっていない。勾留記録によると、FBIは彼女を昨晩(木曜夜から金曜にかけて)逮捕し、金曜朝の時点で彼女の逮捕手続きはまだ処理中となっていた。
今週公開された刑事告訴状によると、彼女は詐欺、および査証、許可証、その他文書の不正利用の罪でサクラメント連邦裁判所に起訴されている。有罪となった場合、最大10年の懲役刑と25万ドルの罰金刑が科される。
タン被告人は、7月27日(月曜)の午後2時にオンライン動画を使って初出廷する見込み。
タン被告人の他に最近逮捕された3人の研究者は以下の通り:
- シン・ワン(Xin Wang):カリフォルニア大学サンフランシスコ校で研究を行うため、2019年3月26日に米国に入国した研究者。彼はチャイナに向けてロサンゼルス国際空港から出国しようとした6月7日に逮捕されている。(同被告人の詳細はここで報じた。)
- チェン・ソン(Chen Song):スタンフォード大学で脳の病気について研究するため、2019年11月に米国に入国。査証の申請書の中で、彼女は人民解放軍を2011年に退役したと記し、チャイナ国内の病院で神経科医として勤務していると記入していた。検察はこれが虚偽申告であり、人民解放軍の現役の軍人であるにもかかわらずそれを偽って米国の査証を申請し入国したと発表している。押収された彼女のパソコンからは、ニューヨークにあるチャイナの領事館に宛てたメールが見つかっており、その中で(米国への査証申請書の中で)病院勤務と記したことは「見せかけのもの」と自ら認める説明を行なっている。彼女は7月18日に逮捕された。
- カイカイ・ジャオ(Kaikai Zhao):人工知能(AI)をインディアナ大学大学院で学ぶために2018年6月に査証を申請した。従軍歴は一切ないと申告していたが、ジャオ被告人が人民解放軍国防大学に通学していた証拠が見つかる。同大学の学生は全員、現役の軍人。同被告人は7月18日に逮捕された。
チャイナ外交部の汪文斌(Wang Wenbin)報道官は、今週木曜、定例記者会見の場で、チャイナの研究者たちが米国で逮捕されていることを記者から質問されると、アメリカ政府は「政治迫害」を行なっていると非難するコメントを発表している。
しかし、汪報道官は、サンフランシスコの領事館員たちが意図的にタン被告人をかくまっているかについては明言を避けており、次のように語っていた:
我々は、米国内にいるチャイナの学者や学生たちを、米国が制限し、ちょっかいを出し、弾圧を加えるためにいかなる言い訳を弄することを止めるよう強く要請する。
【関連記事】
FBIは新たに3人の中国籍の「研究者」を逮捕|司法省は現在も全米25都市以上で人民解放軍所属の研究者と疑われる人物らを捜査中
BonaFidrをフォローチャイナの人民解放軍将校で科学者の男性をロサンゼルス国際空港で逮捕|カリフォルニア大学サンフランシスコ校の実験室の情報を盗むよう命令されたと取り調べ中に供述