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金融システムにとって“日本がおそらく世界最重要のリスク” ジム・グラント氏が警告——“日本の金利政策は冷戦末期のベルリンの壁 いずれ崩壊しなければいけない賞味期限切れの遺物”

ジム・グラント氏(Screenshot via CNBC)

日銀が国債市場のコントロールを失いつつあるとの観測が広まっている。1月20日付けの『現代ビジネス』は、<日本国債の売買が成立しない日銀の「現状維持」路線が、日本経済の将来に与えている「とんでもない影響」>という見出しで伝えている。しかし、米国の金融専門誌『Grant’s Interest Rate Observer』を創刊したジム・グラント氏は、日本経済だけでなく、「これは世界の金融システムに衝撃を与えるきっかけになると確信している」と、1月17日付けThe Market NZZのインタビュー記事の中で語った。

 

ジム・グラント氏は、米国の中央銀行にあたるFRBの議長候補として過去に名前が挙がったことがある人物。2012年の大統領選挙に立候補したロン・ポール下院議員が、バーナンキ連銀議長(当時)の後任として、その有力候補にグラント氏の名前を挙げた

以下はグラント氏のインタビュー記事を一部抜粋して翻訳したもの。

▼ 歴史的な観点から、(金融の世界で)現在最も重要な動きは何でしょうか?

昨今のあまりに多くのニュースの元になっている本質的な原動力というのは、世界中で実施されている金融体制がもたらした結果だということです。この体制は、人為的に抑制された低い金利というものを私たちにもたらし、その誤った金利の結果として、資本の不適正な配分が横行し、また投機の嵐をもたらしました。そうした中には、とても面白いものもあれば、それに乗ることができた賢い人たちにとっては、かなりの儲けになったものもあります。

(中略)

▼ 通常、FRBは金融システムや経済のどこかで「アクシデント」が起きるまで、金利を上げ続けます。今回も同じケースになるのでしょうか?

FRBはアクシデントが起きる可能性など信じていません。これまでのQE体制(量的緩和体制)が金融システムにもたらしたリスク、特にアメリカ企業におけるレバレッジの高さ、さらに言えば、例えばプライベートエクイティにおけるレバレッジの高さを彼らが理解しているとは思えません。もちろん、暗号通貨やSPAC(特別買収目的会社)スキームなど、すでに多くの投機(の手口)が金融システムから絞り出されているのは確かです。

▼ そのようなアクシデントはどこで起きる可能性があるのでしょうか?

日本が、おそらく世界で最も重要なリスクだと私は思います。報道、特に欧米の報道機関ではほとんど議論されていない話題の一つだからという理由で、日本が最もリスクが低いということにはなりません。ほとんどの場合、日本は後回しにされています。

日本のリスクとは次のようなものですーー日銀は毎営業日、黒田総裁のイールドカーブ金利抑制策を実施するために数百億ドル相当の円を支出しています。これを大局的に見ると次のようになりますーー英国で、(昨年)9月下旬に起きた負債主導の年金運用をめぐるちょっとした危機が起きた際、イングランド銀行は約50億ドルを支出しました。日銀はそれを朝飯前に(毎日)やっているということです。

▼ 日銀はすでに2016年秋に、債券市場への直接介入により10年物国債の利回りを目標範囲内に収めるイールドカーブ・コントロール政策を導入しています。なぜ今、日銀はその金融政策を変更する必要があるのでしょうか?

4月8日に任期を迎える黒田総裁は、イールドカーブ・コントロールは今後も続くと主張しています。しかし、私たちには、日本の金利政策は冷戦時代末期のベルリンの壁に似たものであって、遅かれ早かれ崩壊しなければならない賞味期限切れの遺物(時代錯誤のもの)です。

▼ しかしなぜ今なのですか?

今は何が違うかというと、マーケットが何かに気づいているということです。日銀はすでに10年物国債利回りの許容上限を昨年末の0.25%から0.5%に引き上げているから私はそう言っているのです。黒田総裁は、これは利回り抑制の恒久的な体制を成功させ、安定させるための手段に過ぎないと述べていました。しかし、市場は鎖につながれた非常に行儀の悪い犬のようなものです。この獣は、今まさにゼーゼーと喘ぎ、口角に泡を吹いている。日銀はこの獣を制御するために、これまで以上に鎖を強く引っ張り、強い締め付けを行っているのです。

▼ この獣がしまいには鎖をふりほどき脱走するだろうとあなたが考えるのは何故ですか?

日銀はインフレになるまで止めるつもりはないと黒田総裁は述べました。さて、全国消費者物価指数に先行する東京の消費者物価は、12月に予想の3.8%に対して4%に上昇しました。さらに、ユニクロをはじめとする企業のトップたちが大幅な賃上げを発表しています。このような趣旨の話、変化の兆し、そして前兆は他にも見受けられます。日銀の元総裁の中には、これはもう行き過ぎだ、結果は壊滅的なものになるだろうと意見を漏らしている人もいます。ですから、これは舞台裏にある莫大なリスクであり、世界はこのことにもっと注意を払わなければならないと思います。

▼ 日銀がイールドカーブ・コントロールを諦めた場合のリスクはどういったものになるでしょうか?

あなたがスイス人であろうと、アメリカ人、ドイツ人、日本人であろうと、誰にとってもリスクとなるのは、2つの点です。まず第1に、金利が抑制されているため、個人や企業のバランスシートはレバレッジが効いている状態にあり、金利上昇のショックで(そうした個人や企業は)トラブルに見舞われることになります。借金をしすぎた状態にある日本の企業の財務諸表には、問題が埋もれています。確かに、日本の企業はアメリカの企業ほど過剰な借入をする傾向にはありませんが、日本には多くの銀行預金スキームや仕組債があり、それに関するリスクも存在しています。例えば、5年間で利回りが0.75%の商品だったとしても、細かいフォントで書かれた「例外規定」には、もし金利があるレベル以上になった場合、この商品のデュレーション(期間)は10年に延びるというような注意書きがあります。この数字は私が今思いついたものですが、そのリスクというのは基本的にこのようなものです。

▼ それでは2つ目のリスクとはどういったものでしょうか?

日本人はフットワークの軽い国民です。日本人の純貯蓄額は膨大で、日本の資産のうちの約3兆ドルは日本以外の市場に投資され、またその半分は米国にあります。つまり、日本人は「ミセス・ワタナベ」(*)と言われるように、(より高い)利回りの機会を求めて世界中を探し回っているのです。ブルームバーグによると、日本が保有している外国株・債券を同国のGDPに占めるパーセンテージとして見た場合、アメリカ7.3%、フランス7.5%、オーストラリア8.3%、オランダ9.5%という内訳になるそうです。もし、突然、円建ての金利が魅力的なものになったらどうなるでしょうか?これら資金の多くは本国へ送金される可能性があり、その結果、今はまだ特定できないような市場のボラティリティが上昇することになります。つまり、ボラティリティが上昇するリスクは相当なものだということです。日本の金利構造が大きく変化する時期、つまり金利そして世界の債券保有者に提示されたリスクが大きく変化する時期が来ていると思います。

*「ミセス・ワタナベ(Mrs. Watanabe)」とは、日本における小規模な個人投資家を指す英語の俗語表現。「ジャパニーズ・ハウスワイフ(Japanese housewives)」とも呼ばれる。(参考:InvestingAnswers

(インタビュー記事の残りは省略。)

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