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オールドメディアが伝えない海外のニュース

ウクライナ政府で“ロシアの侵攻が始まって以来最大の大量辞任と汚職スキャンダル”——防衛副大臣2人を含む十数人の政府高官が相次ぎ辞任

ウクライナのゼレンスキー大統領(中央)Photo via Flickr.

ウクライナ政府は、1月24日(火曜)、大規模な汚職疑惑の中で複数の高官が辞任したことを認めた。これは、「ロシアの侵攻が始まって以来最大の大量辞任と汚職スキャンダル」と呼ばれている。BBCなど複数の西側メディアが同日報じた。

戦時下でウクライナの庶民が苦しんでいる中、ウクライナ政府の高官たちに対する賄賂、食糧購入のための援助資金の不正管理、横領、そして高級車を乗り回すなどといった疑惑へ捜査が広がりを見せている。するとウクライナの政治が大きく揺れ動き、十数人ほどの政府高官が立て続けに辞職した。

大統領府の最高顧問1人と4人の副大臣(このうち2人は国防関係者)、そして5人の知事がその職を追われた。辞任した知事の中には、最近ロシア軍が優勢と報道されているザポリジャー地方やケルソン地方など、激しい戦闘が続いている地域を監督する当局者も含まれている。

政府高官オレグ・ネムチノフ氏による発表に関して、BBCは今回辞任した当局者のリスト(以下)を掲載している:

  • 副検事総長 オレスキー・シモネンコ
  • 地域社会開発担当副大臣 イワン・ルケリウ
  • 地域社会開発担当副大臣 ヴャチェスラフ・ネゴダ
  • 社会政策担当副大臣 ヴィタリー・ムジチェンク
  • ドニプロペトロフスク、ザポリジヤ、キエフ(キーウ)、スミ、ケルソンの各知事。

また、別の報道では次のように伝えている(太字強調はBonaFidr):

国防省はすでに、軍の後方支援を担当していたヴャチェスラフ・シャポヴァロフ副大臣の辞任を発表していた。これは、軍がつり上げられた値段で食糧契約を結んでいたとの非難を受けてのこと。

この食糧契約に関する件では、シャポヴァロフは無名の不審な会社と契約を交わしたとして非難されている。国防副大臣としての彼の役割を考えると、彼の辞任が今回最も注目すべき重大なケースである。なぜなら、米国と欧州の納税者の血税から防衛支援金としてウクライナに提供された数十億ドルを監督することに、彼が少なからず関与していたことはほぼ間違いないからだ。

彼は軍用食糧を高値で購入する代わりに、請負業者からキックバックを得るという計画を立てていたようだ。

【訳(2段目のツイート)】国防副大臣のヴャチェスラフ・シャポヴァロフが食糧調達のスキャンダルで辞職した。

ウクライナ国防省は、これを「技術的なミス」として、今回のスキャンダルを大したことではないと軽視する態度を取っている。しかし、Politicoはこのスキャンダルの詳細を次のように報じている:

ウクライナのニュースサイトZN.UAの暴露記事で、先週、国防省が自国の軍隊のために高値の食糧を購入していたことが明らかになった。例えば、キエフの卵の平均価格が1個7フリヴニャ(約25円)程度であるのに対し、同省は1個17フリヴニャ(約60円)で卵を購入した。ZN.UAによると、2023年の兵士用の食糧調達の契約は131億6000万フリヴニャ(約465億円)にのぼる。

卵のような食料を、通常のレートより2~3倍高い値段でウクライナの国防省は調達していたと報道されている。シャポヴァロフ氏が辞任を発表した書簡には、「食糧サービスの調達に関する一連の告発キャンペーンが行われた結果、ウクライナ軍の安定供給にリスクとなってしまうのを避けるため」辞任すると記されている。

さらに、戦時中であるにもかかわらず贅沢な暮らしを告発されたウクライナ政府当局者の中には、ゼレンスキー政権副代表のキリュロ・ティモシェンコ氏もいる。西側の主要メディアが今週24日(火曜)に行った報道では、すでに事実であることが確認されている重要な詳細のいくつかが割愛されている。例えば、BBCは、「ティモシェンコは在任中にいくつかのスキャンダルに巻き込まれた。昨年10月には、ウクライナに人道目的で寄付された車を使用したことで非難された」とだけ記している。

しかし、ロシアの空爆により数千万人の世帯が停電に陥っているときに、豪華なライフスタイルを送っているウクライナの指導者たちに怒ったウクライナの地元メディアは、ティモシェンコ氏が高級スポーツカーで首都を出入りし、通常、月1万ドル~2万5000ドル(約120万円~300万円)もする複数の豪邸に出入りしていることを確認したと12月初旬から報じ始めている

以下は、昨年12月初旬にThe New Voice of Ukraineが発表した写真(米国のYahoo! Newsが再掲載)。ティモシェンコ氏が磨き上げられた新型ポルシェ「タイカン」のハンドルを握って頻繁にドライブする様子が写っている。また、彼が訪れているという豪邸の写真も掲載されている

新型ポルシェ「タイカン」を運転するキリュロ・ティモシェンコ氏
(Screenshot via Yahoo! News)

西側の主流メディアが、このウクライナの汚職に関連した大量辞任スキャンダルを正確には伝えず、偏向報道していることを示すもう一つの例として、AFP通信はこう記している:

ウクライナは、政治エリートも含め、長らく風土病的な汚職に悩まされてきた。しかし2月に始まったロシアによる全面戦争によって、汚職撲滅への努力は影を潜めている。

そしてティモシェンコ氏のような政権幹部は、戦争中であるにもかかわらず、高級スポーツカーでキエフ(キーウ)やオリガルヒの周辺を走り回っているのが何ヶ月にもわたって目撃されている。

さらに、AFPの報道には、こんな一文も記されている:

ウクライナの西側同盟諸国は、何十億ドルもの財政支援と軍事支援を提供してきたが、これら同盟諸国は、長年にわたって反腐敗改革を要求してきた。時には、援助の前提条件としてそれらを要求してきた。

「長年にわたって反腐敗改革を要求してきた」とされる同盟国の一つである米国政府から、昨年はウクライナ政府の財源に1000億ドルを超える防衛・対外援助が約束された。そして現在、ゼレンスキー政権の中枢からはこのようなメッセージが発表されている:

【訳(2段目のツイート)】ウクライナ大統領府副長官キリュロ・ティモシェンコ氏が、ゼレンスキー氏に辞表を提出したことを認めた。彼のインスタグラムの投稿で、彼は「毎日、毎分、善行を行う機会を与えてくれた」とZe(ゼレンスキー)に感謝し、家族やウクライナ政府関係者を含む多くの人に感謝している。

しかしゼレンスキー政権幹部の「悪行」は、高級車や豪邸での優雅な生活に止まらない。ウクライナ人が窮乏に苦しむ中、シモネンコ副検事総長が外国で豪華な休暇を過ごしていたことが非難されている。「シモネンコ副検事総長は、この冬スペインで休暇を過ごし、ウクライナの実業家が所有する車を使用したと報じられた後、彼は退任することとなった」。このスキャンダルを受けて、ウクライナ政府は現在、政府幹部が外国で休暇を過ごすことを禁止していると報じられている

政府関係者の辞任が相次ぐ直前、ヴァシル・ロジンスキーという別の高官が、大幅に値上げされた発電機の購入を「円滑に進める」ために賄賂を受け取ったとして非難されている。重要なのは、ロジンスキー氏はインフラ・地域開発担当副大臣として、欧米からの何十億ドルもの人道支援・インフラ開発援助の配分を直接監督する立場にあったことだ。

西側主流メディアの間で今の「不文律」が広まる前は、主流メディアも、ウクライナに関する昔からよく知られていた真実を報じていた。

以下は英ガーディアンが2015年2月6日に掲載した記事

「ヨーロッパで最も腐敗した国、ウクライナへようこそ」という見出し記事
Screenshot via The Guardian

そして再び、主流メディアは昔からよく知られてきたこの事実を認める報道を始めている。AFP通信は、今週1月24日付けの記事で次のように伝えている:

トランスペアレンシー・インターナショナルは、2021年の腐敗ランキングでウクライナを180カ国中122位とランク付けした。

(ちなみに、ウクライナは、ヨーロッパで2番目に最も腐敗した国。同ランキングによると、ヨーロッパで最も腐敗した国はロシアで136位。)

 

そして現在、汚職スキャンダルとその捜査が拡大するウクライナでは、国防大臣のオレクシィ・レズニコフが厳しい調査の対象となっていると報じられている

一方、自国内で大臣・副大臣を巻き込んだ大汚職スキャンダルのニュースが報じられる中、ゼレンスキー大統領は営業活動に忙しい。

【訳】ゼレンスキーは今日、(フロリダ州)ボカラトンで開かれた商工会議所の会合で、ブラックロック、JPモルガン、ゴールドマンサックスなどによるウクライナ支援に謝辞を述べた。また、ウクライナにエイブラムス戦車などの重火器を送ることは、米国企業にとって「大きなビジネス」チャンスであるとも述べている。

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