欧州は米ドルへの依存度を下げるべき=訪中を終えたマクロン大統領が語る——「私たちはジャングルの中にいて2頭の大きなゾウがどんどん神経質になっている状態」
世界中で米ドル離れが加速する中、フランスのマクロン大統領もまた欧州は米ドルへの依存度を下げる必要があると語った。Politicoが4月9日(日曜)に報じた。
Politicoによると、3日間の公式訪問の一環として、チャイナの習近平国家主席と約6時間過ごしたマクロン大統領は、フランスが第3次世界大戦とは一切の関わり合いになることを望んでいないことを明確にした。さらに、欧州が「第三の超大国」となるためには、おそらくフランスが主導することになる「戦略的自律」を欧州は採用しなければならないとマクロン大統領は強調した。
マクロン大統領は、フランスのエアフォース・ワンにあたるCOTAM Unitéの中で記者団と懇談した際、現在ヨーロッパが直面している「大きなリスク」は、「私たちの危機ではない(他国の)危機に巻き込まれ、欧州が戦略的自律を築くことができなくなることだ」と語った。
マクロン大統領が米国への依存を減らすことを示唆したのは、これが初めてではない。昨年11月、マクロン大統領は、ロシアとチャイナという大国の利害と戦争の脅威について議論しながら、「単一の世界秩序」を呼びかけた。
マクロン大統領は次のように語っている:
私たちはジャングルの中にいて、2頭の大きなゾウがどんどん神経質になっている状態です。
もし、彼らが非常に神経を高ぶらせて戦争を始めたら、ジャングルの他の地域にとって大きな問題になります。トラやサルなど、他の多くの動物たちの協力が必要です。
■ 習近平も同意
マクロンによる「戦略的自律」の概念は、習近平と中国共産党によって「熱狂的に支持された」という。「西洋は衰退し、チャイナは勃興する」という考えをこれまでずっと重視してきた習近平と中国共産党は、大西洋をはさんだ米国と欧州の関係を弱体化させることはこの傾向を加速させると考えている。
さらにマクロン大統領は次のように語っている:
パラドックス(逆説)なのは、パニックに陥ってしまい、自分たちはアメリカの追従者に過ぎないと思い込んでしまうことです。
ヨーロッパ人が答えるべき質問は…台湾に関する(危機を)加速させることが我々の利益になるのか?いや、違う。もっと悪いことは、私たちヨーロッパ人がこのテーマに関して追従者にならなければいけないと考え、米国の意図やチャイナの過剰反応から私たちがどのように行動すべきかの指示(キュー)を得なければならないと考えることです。
Politico:
広州からパリに戻る彼の便が出発した数時間後、チャイナは自国の領土と主張しながらも、米国が武装して守ることを約束している台湾(自治が行われている島)の周辺で大規模な軍事演習を開始した。
この演習は、台湾の蔡英文総統が10日間にわたって中米諸国を外交訪問し、カリフォルニア州を通過中に共和党のケビン・マッカーシー下院議長との会談を行ったことに反発したもの。マクロンの考えをよく知る人たちは、少なくとも彼がチャイナの領空から出るまで、中国政府が「台湾包囲網」の模擬演習を開始するのを待ったことに喜んだと語った。
大統領に同行したフランス政府関係者によると、マクロン大統領のこうした従順な発言は、彼が習近平と台湾について「激しく」話し合った後のことだという。
それとは対照的に、マクロン大統領に同行した欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、先週木曜に北京で行われた会談で地域の安定が重要であることを強調し、習近平に「現状を変えるために武力を行使するという脅迫は容認できない」と伝えたという。
これに対し習近平は、台湾について中国共産党に影響を与えられると考える者は思い違いをしていると反発し、次のように語ったという。
欧州ではウクライナの危機を解決できない。台湾について、「気をつけろ、お前たちが何か悪いことをしたら我々がそこにかけつける」ということを、どうやって信用できるだろうか?もし本当に緊張を高めたいのであれば、まさにそれがその方法だ。
Gavekal Dragonomicsの地政学アナリストであるYanmei Xie氏は、次のように分析している:
ヨーロッパは、チャイナが地域覇権を握るような世界を受け入れようとする傾向が強い。欧州の指導者の中には、そのような世界秩序はヨーロッパにとってより有利となる可能性があると考えている。
先週木曜に習近平がフォン・デア・ライエンとマクロンと行った3者会談で、習近平は2つの事柄に腹を立てたという:
「習近平はウクライナ紛争の責任を負わされたことに目に見えて苛立っていた。そして彼は、最近モスクワを訪問したことについてそれは大したことではないという態度をとった」と、会談の場に同席したある関係者は語っている。「彼は明らかに米国に激怒し、台湾のこと、台湾総統が米国を通過し、そして外交政策上の問題がヨーロッパ人によって提起されたこと(という事実)に非常に気分を害していた。
この会談の中で、マクロンとフォン・デア・ライエンは台湾について同様の路線をとった、とこの人物は言う。しかし、マクロンはその後、チャイナの指導者と4時間以上過ごし、そのほとんどは通訳者しか同席していなかった。そして記者たちと話すときの彼の口調は、フォン・デア・ライエンよりもはるかに融和的だった。
■ 米ドルを捨てる時が来た?
マクロン大統領は、欧州は武器やエネルギーを米国に依存しすぎており、今後は自分たち独自の防衛産業の強化に注力する必要があると示唆した。
しかし、最も注目すべきは、「米ドルの治外法権」に対する欧州の依存度を下げる必要があると彼が提案したことだろう。中露ともに、米ドルからの離脱に挑戦している。
「もし2つの超大国の緊張が高まれば……戦略的自律を賄う時間もリソースもなく、属国になってしまうだろう」とマクロン大統領は語っている。
Politico:
ロシア、チャイナ、イラン、その他の国々は、近年、米国の経済制裁を受けており、支配的なドル建ての世界金融システムへのアクセスを拒否されている。欧州の一部では、米国政府によるドルの「武器化」に不満の声が上がっている。これにより、欧州企業はビジネスを諦め、第三国との関係を断ち切るか、さもなければ不利な二次的制裁に直面することを強いられている。
胸に「French Tech」と刺繍されたパーカーを着て、A330型機の客室に座っていたマクロンは、すでに欧州の「戦略的自律に関するイデオロギー的戦いに勝利した」と豪語した。
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このPoliticoの記事の末尾には、次のような興味深い脚注が記されている(太字強調はBonaFidr):
BonaFidrをフォローフランスや他の多くのヨーロッパ諸国ではよくあることだが、「エリゼ宮」と呼ばれるフランス大統領府は、このインタビューを許可する条件として、この記事に掲載する大統領の発言の引用をすべて彼らがチェックし「校正」することを要求した。これはPOLITICOの編集基準や方針に反するものだが、私たちはフランス大統領と直接話すために、この条件に同意した。POLITICOは、読者を欺くことはできないと主張し、大統領が発言していないことは掲載しないと主張した。この記事の引用はすべて大統領が実際に発言したものだが、大統領が台湾や欧州の戦略的自律についてさらに露骨に語ったインタビューの一部は、エリゼ宮によって削除された。