米国立衛生研究所はチャイナからの要請で初期の新型コロナウイルス遺伝子配列情報をデータベースから削除——そこには変異を遂げた「後」のウイルスの方が「初期」のものよりもコウモリ由来の天然ウイルスに類似しているという謎が存在していた
米国のインフルエンザ・ウイルス研究の第一人者であるジェシー・ブルーム教授は、コロナウイルスの初期のゲノム配列がチャイナからの要請により世界的データベースから消去されていたことを発見したと6月22日(火曜)に発表した。翌23日(水曜)に英国のテレグラフ紙もこの発見を報じた。
シアトルにあるフレッドハッチンソンがん研究センターで勤務するジェシー・ブルーム教授は、武漢大学が実施した1件の研究プロジェクトを発見した。このプロジェクトで、武漢大学は、2020年1月に発生したCOVID-19感染症の陽性例34件と、2月上旬に発生した16例についてゲノム配列を解析した。研究者たちは「ナノポア・シーケンシング」と呼ばれる技術を用いてSARS-CoV-2の感染を診断することについて調べた。
武漢大学の研究者たちが行なったこの調査結果は、昨年3月にプレプリント(査読前の原稿)として掲載され、同年6月には査読を受けている。それと同時に、彼らの調査過程で得られたウイルスのゲノム配列情報は、米国政府が国立衛生研究所(NIH)内部で維持管理している「シーケンスリードデータベース(SRA)」にアップロードされた。しかしこのゲノム配列情報は、SRAの職員が削除要請を受けなければ不可能な手順で削除されたとテレグラフは報じている。
ブルーム教授は、彼が発見したこの事実をツイッターに連続投稿している。
But when I went to Sequence Read Archive, I found entire project was gone! (Note that as detailed below, this does *not* imply malfeasance by NIH. Sequence Read Archive policy allows submitters to delete by e-mail request.) (3/n) pic.twitter.com/fEzOaVYZLZ
— Bloom Lab (@jbloom_lab) June 22, 2021
【訳】具体的に言うと、国立衛生研究所(NIH)は「シーケンスリードデータベース(SRA)」を維持管理している。そこには、世界中の科学者たちが、他の科学者たちが分析できるようにディープシーケンシングデータを預け入れる。https://peerj.com/articles/9255 は、2020年3月31日時点でデータベースに掲載されている#SARSCoV2 の全データをリスト化していることに私は注目した。ほとんどが武漢大学による1件のプロジェクトから。(2/n)
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しかし、私が「シーケンスリードデータベース(SRA)」に行ってみると、プロジェクトが丸ごと無くなっているのを発見した。(以下で詳細を説明している通り、これはNIHが不正行為を働いたと言うことでは*ない*。「シーケンスリードデータベース(SRA)」のポリシーは、(データを)提出した人物がeメールで要請すれば削除することを許可している。)(3/n)
テレグラフ紙は次のように報じている:
クラウドストレージから復元され、プレプリントとして掲載されたこの(ゲノム)配列は、専門家の間では、この1年以上の間、COVID-19の起源に関する「最も重要なデータ」と評されている。
復元されたこれらデータは、パンデミックの発生源をめぐる「自然発生説」も「研究所流出説」のどちらも裏付けるものではないと科学者たちは述べている。しかし、このデータは、従来考えられていたよりも早く武漢でこのウイルスが流行していたことを示唆しており、もしかするとSARS-CoV-2の起源についての答えを導き出すことができる可能性がある——今回のパンデミックを終わらせるのに役立つだけでなく、次のパンデミックを防ぐことになる可能性がある「答え」である。
また、これらのゲノム配列が見つかったことは、チャイナが隠し持っている流行初期のデータがさらに存在することを示唆しており、調査団がこれを回収できる可能性がある。
(太字強調はBonaFidr)
ブルーム教授は、さらに興味深いことをツイートしている。
Therefore, we’d expect the first #SARSCoV2 sequences would be more similar to bat coronaviruses, and as #SARSCoV2 continued to evolve it would become more divergent from these ancestors. But that is *not* the case! (8/n)
— Bloom Lab (@jbloom_lab) June 22, 2021
【訳】ここで、他の初期の#SARSCoV2のゲノム配列に関する科学的な謎を説明するために、背景を説明する必要がある。武漢で#SARSCoV2が出現した経緯(人獣共通感染症か実験室での事故か)は不明だが、ずっと遡った祖先がコウモリ由来のコロナウイルスであることは誰もが認めている。(7/n)
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したがって、最初の#SARSCoV2のゲノム配列は、コウモリ由来のコロナウイルスにより類似しており、#SARSCoV2が進化していくにつれて、これらの祖先との乖離が大きくなっていくだろうと考えられる。しかし、実際にはそうでは*ない*のだ!(8/n)
(太字強調はBonaFidr)
Same result if we use other bat coronaviruses like RpYN06 or RmYN02. To see this, go to https://t.co/4qZbDRjFvw for an interactive plot that allows you to select the bat coronavirus outgroup and mouse over points for strain details. (11/n)
— Bloom Lab (@jbloom_lab) June 22, 2021
【訳】この難問は、コウモリ・コロナウイルスRaTG13の外集団(アウトグループ)と初期の#SARSCoV2の採取日との相対的な差異をプロットすることで簡単にわかる。武漢から最初に報告されたウイルス(左端の青い点)が、RaTG13に最も近いウイルスではないことがわかる。(10/n)
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RpYN06やRmYN02などの他のコウモリ・コロナウイルスを用いても同じ結果となる。これを見るには、https://jbloom.github.io/SARS-CoV-2_PRJNA612766/deltadist.htmlを訪問されたし・・・インタラクティブに描画でき、コウモリ・コロナウイルスの外集団(アウトグループ)を選択し、点にマウスのポインタを乗せることで(ウイルスの)株の詳細を見ることができる。 (11/n)
(太字強調はBonaFidr)
There are also broader implications. First, fact this dataset was deleted should make us skeptical that all other relevant early Wuhan sequences have been shared. We already know many labs in China ordered to destroy early samples: https://t.co/3Uol5gdwON (16/n) pic.twitter.com/ajtm8SxfVu
— Bloom Lab (@jbloom_lab) June 22, 2021
【訳】両方の祖先は、#SARSCoV2が12月に華南海鮮市場で発生するよりも前に武漢で広まっていたことを示唆しており、これは2020年初頭のチャイナからのニュース記事を含む他の多くの証拠によって裏付けられている(このスレッドの最初のツイートにリンクされている私の論文の序論を参照)。(15/n)
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また、より広い意味合いもある。まず、このデータセットが削除されたという事実は、初期の武漢における関連する他のゲノム配列がすべて共有されたということについて疑うべきだということを意味している。チャイナの多くの研究所が初期のサンプルを廃棄するように命令されたことを私たちはすでに知っている:https://scmp.com/news/china/society/article/3084635/china-confirms-unauthorised-labs-were-told-destroy-early (16/n)
(太字強調はBonaFidr)
テレグラフの取材に、国立衛生研究所(NIH)はこれら初期のゲノム配列のデータをそのデータベースから削除したことを認めた。国立衛生研究所(NIH)は、「提出された研究者のデータ撤回要求を検討した」後、それを削除したという。
さらに国立衛生研究所(NIH)の広報担当者は次のように語っている:
この(データ削除の)リクエストを行なった人物は、配列情報が更新され、別のデータベースに提出されており、バージョン管理の問題を避けるためにSRAからデータを削除してほしいと言ってきた。(データを)提出した研究者たちは、そのデータの権利を保持しており、データの撤回を要請することができる。
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また、ジェシー・ブルーム教授の調査とは別に、6月24日(木曜)、英国のケント大学の科学者たちは新たな研究結果を発表し、2019年12月に華南海鮮卸売市場と関係した感染ケースが報告されるよりも前に、新型コロナウイルス(武漢ウイルス)は2019年11月またはその数週間前の10月中にすでに武漢市内で広がっていた可能性が最も高いと結論付けている。
ブルーム教授の調査とケント大学の科学者たちの研究は共に、2019年11月中旬に武漢ウイルス研究所で少なくとも3人の研究員たちがCOVID-19のような症状で入院したという、米国諜報機関が入手した情報を裏付けるものとなっている。
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一方、下院議会少数党のスティーブ・スカリス院内幹事(ルイジアナ州選出・共和党)は、下院の民主党議員たちがパンデミックの起源に関する公聴会を開催しないことを非難しており、下院で少数党の共和党が主導する公聴会に公衆衛生当局者たちを出席させることは召喚状がなければほぼ不可能であると語っている。
スカリス院内幹事は、6月24日(木曜)に出演したFOXニュースの番組で次のように語っている:
この件に関して、下院のペロシ議長は一度も公聴会を開いていません。私たち全員が真実を知りたいと思うべきことに基本的な答えを探す代わりに、彼ら(民主党)はチャイナのために隠蔽しようとしているように思えます。
私たちはこのことについて答えを見つけようとすべきです。私たち(共和党)はその答えを得ようとしています。しかし、彼ら(民主党)が公聴会を開くことを許可しなければ、その答えを得ることは困難です。なぜなら、これら(公衆衛生当局の)関係者が参加しないからです。
こうした理由から、私たち(共和党)は来週、独自の公聴会を開くことにしました。私たちは多くの証人を呼んでいます。尊敬されている優秀な科学者や医学者に来てもらって、この問題にさらに光を当ててもらいたいと思っています。・・・
率直に言って、ペロシ議長、彼らは召喚権限を持っている。彼らには召喚権限があるのだから、武漢研究所の科学者たちと連絡を取っていた人を全員、召喚するべきだ。
チャイナは確かに率直ではない。チャイナ共産党は証拠を隠しているし、もしかするとすでに証拠を隠滅しているかもしれない。
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