モラー特別検察官が主張したロシア政府介入の「証拠」を米裁判所が棄却
米地方裁判所は、ロシア政府が「徹底的かつ組織的に」2016年の大統領選挙の妨害を行なったというロバート・モラー特別検察官の仮説に対して、大きな痛手となる判断を下した。
ダブニュー・L・フリードリッヒ判事は今週、ロバート・モラー特別検察官が起訴したロシアの闇集団が「ロシア政府とはつながっておらず」、「一般市民による民間の行為でしかなかった」という判決を下した。
ロシア疑惑を2年間にわたって捜査したモラー特別捜査官だが、その捜査結果である「モラー報告書」には数々の不備と矛盾が指摘されている。本サイトでも先日、<「モラー報告書」そのものが、ロシアの選挙妨害がなかったことを示唆>で詳細を報告している。
モラー特別検察官チームは、2018年2月に、3つのロシア企業と13人のロシア国籍保持者を告訴していたが、モラー特別検察官らは訴えられたロシア人たちの数人が、自らを弁護するために実際に米国裁判所に出廷するとは想定していなかったようだ。
「モラー特別検察官を含めて誰も、これらロシア国籍の被疑者たちが自らを擁護するために法廷に出頭するとは想定していなかったと思う。むしろ、モラー特別検察官の捜査チームはPRのために告訴を行い、米政府の中で選挙妨害を既成事実として作り上げ、モラー・チームの世間体を取り繕う目的だったのではないか」–Powerline
このような意見が出てくるのには十分な理由がある。
モラー特別検察官は、Concord Management and Consulting, LLC社に対して、彼らはオンライン上で米国の活動家のふりをしてSNS上で政治的なコンテンツを投稿し、アメリカ人有権者の間で対立を生むきっかけをばらまくというプロパガンダを実行したと告発している。同社は、「故意かつ意図的に」2016年の米大統領選挙を妨害するために共謀したとして告発されている。
そうすることで、モラー特別検察官チームは、Concord社とロシア政府がつながっているよう見せかけ、それによりロシア政府による選挙妨害がロシア政府のトップから直々に下されたものであると示唆している。
しかし実際はそう単純ではない。
フリードリッヒ判事は次のように判決文に書いている:
「米政府自身(モラー特別検察官チーム:訳者追記)がこれら被疑者とロシア政府の関係をつなげるのは重大かつ先入観を抱かせるものである・・・結論として、裁判所は、容疑者たちによるかかる活動がロシア政府とつながっているとした公式な声明を発表したこと、またはその承認を行ったことは、米政府が規則57.7に違反したという判決を下す」。
先に紹介した<「モラー報告書」そのものが、ロシアの選挙妨害がなかったことを示唆>を報道しているジャーナリストのマテ氏は、この裁判所の判決について連続したツイートを発表している。
Federal judge has issued a significant rebuke of a core Mueller claim. Mueller claims that the IRA — a Russian troll farm — was the 2nd of “two principal interference operations” by Russian gov’t. But as judge notes, Mueller’s implied link between IRA & Russian gov’t was false: pic.twitter.com/UyzApdP5BH
— Aaron Maté (@aaronjmate) July 9, 2019
(訳)この判決は、モラー特別検察官だけではなく「ロシア政府による積極的な介入があった」とする主張そのものに対する非常に大きな一撃だ。判事が認めているように、IRA(ロシアの闇集団でSNS上で選挙妨害キャンペーンを実施したと言われているが、実際は選挙とは関係なく、小金を稼ぐためにクリック詐欺をしていた若者集団)は民間の組織であり、モラー特別検察官が主張するようなロシア政府とのつながりは証明されていない。
I point out this disconnect in my latest piece: Mueller says the social media operation was the 2nd major component of a “sweeping and systematic” Russian gov’t interference campaign — yet he never actually shows how it’s connected to the Russian gov’t. https://t.co/04tKUmNw4Q pic.twitter.com/dR9qZCFdXt
— Aaron Maté (@aaronjmate) July 9, 2019
(訳)私は、この(ロシア政府とIRAに)つながりがないことを自身の報道で指摘している:モラー特別検察官はSNSキャンペーンが「徹底的かつ組織的な」ロシア政府による選挙妨害の2つ目の主要構成物であると言っている。しかし彼はそれがどのようにロシア政府とつながっているのか示していない。
ワシントンDCの判事も支持しているこの矛盾は、モラー特別検察官が掲げる「徹底的かつ組織的な」ロシア政府による選挙妨害があったとする主張の信頼性に対して、新たな疑問を生む。もしモラー特別検察官が腹黒く、意図的に誤ってIRAとロシア政府とを関連づけようとしていたのであれば、他に彼は何について不正直であったのか?
I should clarify re: validity, above: given how disingenuous Mueller is overall — ignoring Steele dossier; obscuring how weak the official Papadopoulos predicate; omitting Kilimnik’s extensive State Dept ties & falsely hyping him as GRU indictment — this is only latest example. pic.twitter.com/vHWR7bF40O
— Aaron Maté (@aaronjmate) July 9, 2019
ジャーナリストのアーロン・マテ氏は、さらに次のように指摘する。
「ロシアの闇集団がロシア政府の指示で活動を行っていたのではないということは、判事だけが認識したのではない。モラー特別検察官チームの検察官が、それを認識している。5月28日の審理で、ジョナサン・クラヴィス検察官は「この報告書はロシア政府が‘この闇組織の活動’に参加していたとは言っていない」と発言している」。
I should clarify re: validity, above: given how disingenuous Mueller is overall — ignoring Steele dossier; obscuring how weak the official Papadopoulos predicate; omitting Kilimnik’s extensive State Dept ties & falsely hyping him as GRU indictment — this is only latest example. pic.twitter.com/vHWR7bF40O
— Aaron Maté (@aaronjmate) July 9, 2019
(訳)更新:ロシアの闇集団がロシア政府の指示で活動を行っていたのではないということは、判事だけが認識したのではない。モラー特別検察官チームの検察官が、それを認識している。5月28日の審理で、ジョナサン・クラヴィス検察官は「この報告書はロシア政府が ‘この闇組織の活動’に参加していたとは言っていない」と発言している。
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Facebookの広告部門VP、ロブ・ゴールドマン氏も、この2月にロシア人らが告訴された日、トランプ擁護の流れを後押しする重大な証言をツイッターで行った。彼が発信した一連のツイートの中で、おそらく最も重要なものはこれだろう。Facebook上でロシア人らが購入した広告の大多数は、大統領選挙の後に購入されたもので、しかもトランプ支持の内容ではなかった。さらにこれら広告は「アメリカ人を分断するための不和を撒き散らす」ようなもので、すでにアメリカ人自身が貧富の差や身分格差についてSNS上で広く議論しており、特に珍しい内容ではなかった。
The majority of the Russian ad spend happened AFTER the election. We shared that fact, but very few outlets have covered it because it doesn’t align with the main media narrative of Tump and the election. https://t.co/2dL8Kh0hof
— Rob Goldman (@robjective) February 17, 2018
(訳)ロシアによる広告の購入の大多数は、選挙の後に行われていた。我々はこの事実を伝えたが、それを報道したメディアはほとんどない。なぜなら、トランプと選挙に関する主要メディアのストーリーと合わないからだ。
ロシアによる(選挙妨害の)プロパガンダと間違った情報を伝えようとする活動の主な目的は、発言の自由やSNSといった我々の仕組みを利用することで、私たちアメリカ人を分断しようとすることにある。これはアメリカ人の間で恐怖と嫌悪をかき立てている。この分断活動は、驚くほど上手に機能している。我々の国は随分と分断されてしまっている。
このツイートを発信した直後、ゴールドマン氏は自身の発言を撤回している。彼はモラー特別検察官の絶対的な権威と捜査権限について疑問を呈するべきではなかったと発表している。ゴールドマン氏が、トランプを非難する民主党側や反トランプのキャンペーンを張っている主要メディアの圧力に屈したのだとしたら残念なことだ。
今月下旬にモラー特別検察官が米下院委員会で証言する予定だが、その場でモラー特別検察官はこの判決についてどう弁明するのか、厳しい立場に立たされているのは間違いない。彼が5月29日に開かれた唯一の記者発表で、「できれば連邦議会では証言したくない」と言っていた真意は、彼のレポートが矛盾だらけだからなのかもしれない。
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