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モラー特別検察官が連邦議会で7時間の証言:マイケル・ムーア監督もウンザリ

昨日、全米が注目する中で行われたモラー特別検察官の議会証言は、吉本興業岡本社長の記者会見(約5時間)を超す、7時間以上にわたるものだった。トランプ大統領の弾劾を目指している民主党の議員からは、「トランプ大統領の有罪は確実」という意見や「弾劾に向け前進した」という意見がある中、トランプ大統領を含めた共和党の議員だけでなくリベラル系メディアからも「ロシアゲート疑惑の終焉」という声が多く上がった。

2016年の大統領選挙でヒラリー候補を支援したことで知られるマイケル・ムーア監督は、モラー特別検察官の議会証言を見て次のツイートをしている。

(訳)肉体的に弱々しい老人が、事実を思い出すことができず、言いよどみ、基本的な質問にすら答えることを拒否している、、、私が2017年にすでに発言していたことを、今日モラー氏が確かなものにしてくれた−−全ての評論家、穏健主義者、そして説得力のないダサダサな民主党議員たちよ、あなたたちはアメリカ国民に対して尊敬さているロバート・モラーを信じよと語っていたが、これ以降は、だ・ま・れ。

このツイートから、マイケル・ムーア監督は2017年の時点ですでにロシアゲート疑惑が根拠なく、モラー特別検察官による捜査そのものが陰謀であると疑っていたことが伺える。昨日のしどろもどろの議会証言で、そのことが確実となったと彼のツイートは示唆している。

リベラル系の主要メディアの一つ、ABC Newsの政治コメンテーターであるテリー・モーガン氏も、出演していたテレビ番組の中で、「これで弾劾の可能性は終わった」と発言している。

トランプ大統領から名指しで「フェイクニュース」と言われ、レポーターの一人がホワイトハウスから一時出入り禁止を食らったCNNですら「モラー氏は、自分自身が作成した報告書を説明するのにベストな人物ではないということが、これまでの時点で明らかになっているようだ」とツイートしている:

* * *

2016年の大統領選挙期間中、トランプ陣営がロシア政府と共謀したという「ロシアゲート疑惑」。アメリカ版「もりかけ問題」と言われるこの疑惑は、元FBI長官のロバート・モラー特別検察官が22ヶ月間に渡り、3000万ドル(約33億円)もの税金を投じて捜査を行い、その結果を今年「モラー報告書」として一般公開した。

448ページにのぼる膨大な報告書は、トランプ陣営がロシア政府と共謀したという明らかな証拠はなかったと報告したが、「トランプ大統領の潔白を証明しているわけではない」、という曖昧な結論になっている。また、報告書には矛盾や創作の疑惑が多々指摘されている。(詳しくは『「モラー報告書」そのものが、ロシアの選挙妨害がなかったことを示唆』。

モラー特別捜査官は、司法省が4月18日に「モラー報告書」の簡略版を公表した後、記者会見で「議会証言はできればしたくない」、「この報告書以上のことを証言するつもりはない」と、非常に消極的な姿勢を見せていた。

こうした「煮え切らない」モラー報告書の発表を受けて、トランプ大統領の弾劾を目論む民主党議員らは、モラー特別検察官を議会で証言させ、弾劾のための「言質」を取ることが目的だったという背景がある。

そして、議会証言の動画を見てもわかるように、吉本興業の岡本社長ほどではないにしても、グダグダの議会証言だったというのが大方の見方だ。モラー特別検察官は小声で頻繁に言いよどみ、共和党議員からの都合の悪い質問はよく聞こえず、聞き返す場面が何度もあった。マイケル・ムーア監督が「弱々しい老人」とツイートしているのがまさに的を射ている。

彼の証言を見て「ワシントンにいる皆さん!彼には薬物テストが必要だ」と冗談を込めた皮肉ツイートが流れているほどだ。彼は痴呆症にかかっているのではないかというコメントすらある。

それほど、モラー特別検察官の受け答えは朦朧としたものだった。モラー特別検察官を応援する民主党側からも、「かつての鋭敏で雄弁なモラー特別検察官ではなかった」という声が聞こえる。

驚きだったのは、ロシアゲート疑惑の中枢にある存在のFusion GPSについて質問された時、モラー特別検察官は「よく知らない」と答えたことだ。Fusion GPS社は、クリントン陣営からの発注を受けて、MI6のスパイであるクリストファー・スティール氏を雇い、2016年の大統領選挙でトランプ候補についてウソの文書(通称、スティール・レポート)を作成したことがウォール・ストリートジャーナル紙でも報じられている。このスティール・レポートが、ロシアゲート疑惑のそもそものきっかけを生んだ。

リベラル系テレビ局NBCで政治を担当しているチャック・トッド氏は、次のように語っている:

「(弾劾の)材料については、民主党は希望していたものを手に入れた」

「世論については、これ(議会証言)は惨憺たる結果をもたらした」

字幕付きの動画(2分27秒の簡略版)がロイターのサイトで視聴できる。

字幕はないが証言の完全版はYouTubeに複数投稿されている。

しかし、同じ証言を見ていても、とにかくトランプ大統領を弾劾に追い込みたい民主党議員が見ている景色と、無理筋のロシア疑惑はこれで収束に向かうとする共和党議員が抱いた印象とは全く正反対であることは驚愕である。

「レーダー照射問題」で韓国側が主張する状況と、日本側が主張する状況が全く異なるのを想起させる。同じ事実を見ているはずなのに、そこから得られる印象や見解が正反対で、意見が真っ向からぶつかっている。そんな状況がアメリカの民主・共和両党の間で起きている。

丸一日にわたって行われたモラー特別検察官の議会証言を終えて、民主党議員らは「言質を取った」と言わんばかりに、モラー特別検察官は「トランプ大統領は潔白であるという判断はしていない」、「大統領の職を退任すれば訴追される」と必死だ。

しかしどんなにひいき目に見ても、議会証言で民主党議員らが行った質問はバイアスに満ち溢れたものだった。「モラー報告書」の矛盾点や、ロシアゲート疑惑のそもそものきっかけになった「スティール・レポート」については一切質問せず、「トランプ大統領による司法妨害があったのですね?」「トランプ大統領の潔白を証明したわけではないのですね?」と誘導尋問が続いた。とても真実を追求しようとする姿勢には見えない。

さらに、民主党議員らは質問を始める前に、モラー特別検察官に対して「あなたは偉大なる愛国者だ」や、「あなたに敬意を表します」とべた褒めしたのにも違和感があった。まるで北朝鮮の国民が金正恩をベタ褒めするかのような姿だ。トランプ大統領を弾劾したい民主党議員からすると、モラー特別捜査官は愛国者かつヒーローであるが、逆にロシア疑惑そのものが陰謀だとする共和党議員からすると、モラー特別捜査官はクーデターに加担している国賊者となる。しかし共和党議員からの都合の悪い質問には、ことごとく回答を拒否していたモラー特別検察官は、とてもヒーローには見えなかった。

昨日の議会証言では、それぞれの議員が持ち時間5分以内でモラー特別検察官に対して質問を行った。その中で最も決定的な質問をしたのはテキサス州選出のラットクリフ共和党議員だろう。

ラットクリフ議員は次のように質問を開始した:

あなたの報告書でも今日の証言でも、特別検察官チームは司法省の方針と原則に基づいてそれを守りながら捜査を行ったと言いました。捜査対象となった人物が、罪を犯しておらず無実であると最終的に結論づけられていない状況で、司法省のどの方針と原則が、その人が潔白ではないとする法的基準を規定しているのですか。

長官(訳者注:モラー特別検察官が元FBI長官だったため長官と呼んでいる)、どこにそんな文言が書かれているのですか。司法省の方針のどこにそれが書かれているのですか?ドナルド・トランプ以外に、司法省が捜査を行った人物の中で、彼らの無実が最終的に確定できないからという理由で潔白ではないと判断した事例を答えることができますか?

これに対し、モラー特別検察官は次のように答えた:

答えることができません。しかし、今回はユニークな状況なのです。

ラットクリフ議員は、さらにモラー特別検察官が存在しない司法省の基準をでっち上げたと糾弾した。

あなたが答えられない理由を教えてあげましょう。そんなものは存在しないからだ。特別検察官の任務の中に、あなたが最終的にドナルド・トランプの無実を決定するべきとか、特別検察官の報告書が彼の潔白を断定するべきとはどこにも書いていない。そんなことはどの文書にも書いていないし、あなたに与えられた任命責任にも含まれていないし、特別検察官の規制項目にも含まれていないし、司法省のOLCの見解にもない。司法省マニュアルにもないし、連邦検察原則にもない。どこにもそんな文言はない。なぜなら、敬意を持って言いますが、ドナルド・トランプが無実であるか、そして彼が潔白であるかを最終的に決定することは、特別検察官の任務ではないからです。なぜなら我々の司法制度では推定無罪が根幹となる原則だからです。

全員、誰もが、推定無罪であるという前提を与えられる権利がある。それは現職の大統領についても同じだ。なぜなら、推定無罪が適用されるため、検察官はそれを最終的に判断する必要が全くない。

長官、特別検察官としてあなたは認められていない証明責任を自ら課した。私はそんな責任が特別検察官にあるとはどこにも見つけられない。そしてあなたもそんな責任は司法省の方針のどこにも存在しないと言った。しかしあなたはそのような責任があるかのように報告書を書いた。

(特別検察官に対する規制には)捜査で到達した結論について機密報告書を書くようにと明瞭に述べている。そこには、到達していない結論、、、つまりまだ訴追されていない犯罪の可能性について報告書を書くようにとはどこにも述べていない。

アメリカ国民はこの報告書、、、報告書の第2巻が法律に基づいて承認されて書かれたものではないということを知る必要がある。これは、司法省には存在しない法的基準に基づいて書かれたものだ。

今朝の議会証言の議長に同意する。彼は、ドナルド・トランプが法の上に立つ存在ではないと言った。しかし、ドナルド・トランプは法律(が公正に適用されない)下の存在でもない。しかしこの報告書の第2巻は、彼を法律の下の存在に貶めている。

諦めの悪い一部の民主党議員らは、連邦議会が夏季休暇から開ける来月、再び大統領の弾劾について追求するつもりだという。日本でも「もりかけ問題」で有権者が野党に呆れ果てたように、アメリカ国民の間でも「民主党疲れ」が起きている。

Screenshot from C-SPAN’s YouTube channel

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