ジャンクフードだけを食べ続けた10代の少年が視力と聴力を失う
先週末、内科医学論集(Annals of Internal Medicine)に発表された研究事例によると、イギリスの10代の少年が、過去10年間、ポテトチップ、フレンチフライ、白いパン、ソーセージだけを食べ続けた結果、失明し、聴力も一部失ったことが明らかとなった。
この17歳の少年(匿名)は、3年前、疲労を訴え病院を受診した。当初の診断結果では貧血とビタミンB12が欠乏していることが判明していたため、ビタミン注射を受け食事のアドバイスが行われた。彼の身長やBMI値は正常であり、医者はこの少年がそれ以上の栄養問題を抱えているとは疑わなかったという。
しかし彼が15歳になる頃、彼の視力と聴力が低下し始めた。現在17歳となったこの少年は、視力が完全に失われ、骨も脆い状態だという。そこでブリストル大学の研究者らが彼の事例を調査したところ、家族の病歴や、処方されている薬、麻薬、アルコール消費などの要因は関係していないと判断され、彼の貧しい食事が視神経を傷つけ失明につながったと結論付けた。
彼が発症した症状は、栄養視神経症(nutritional optic neuropathy)として知られており、極度の貧困や干ばつ、戦争状態にある国々でよく見られる。キューバでは、栄養失調が原因で、1990年代初頭、5万人以上に視神経症や末梢神経障害が蔓延した。
イギリスのこの17歳の少年をさらに診断した結果、彼はいまだにビタミンB12が欠乏しているほか、銅、セレン、ビタミンD、骨内の鉱物密度が低いままである。これら必須栄養素は、赤身の牛肉、鶏肉、青魚、葉野菜、乳製品、卵、ナッツ類、といった健康的なバランスの取れた食事から摂取することができる。
研究者らがこの少年と面談したところ、彼は近所のフィッシュ&チップスの店舗で毎日フレンチフライを食べていたことが判明。彼はまた、小学生の頃から、プリングルス(ポテトチップス)、白いパン、ハムとソーセージだけを食べて生きてきたという。彼によると、食べ物の特定の歯ざわりが好きではないためこうした偏食をしてきたという。研究者らは、彼のことを「回避・制限性食物摂取障害=avoidant-restrictive food intake disorder(AFRID)」と診断した。これは食べ物の味、歯ざわり、匂い、見た目に敏感であったり食べ物そのものに興味を持てない人たちに診断される症状で、比較的最近、診断されるようになった。この少年の場合がそうであるように、AFRIDの症状の患者は正常なBMI値である場合が多いため、問題を突き止めるのが難しいとされる。
栄養視神経症は、初期の段階で診断することができれば、回復することができる。しかしこの少年の場合は発見が遅すぎたため視覚が回復する見込みはない。10年間も塩、砂糖、高純度の炭水化物が詰まった加工食品を食べ続けた結果だという。
この研究を主導したデニス・アタン博士は、声明の中で、「私たちの視力は、生活の質、教育、就労、社会生活、精神衛生に大きな影響をもたらします。この事例は食事が視力と肉体的健康にもたらす影響を明らかにし、摂取カロリーやBMI値は、栄養状態を示す有効な指標ではないことを明らかにしました」と述べている。
アタン博士は論文の付属記事の中で、ビタミンB、鉄分、カルシウム、マグネシウム、銅を十分摂取しないことで、視神経症が引き起こされることを紹介している。また、「医者が患者の食事履歴を知らないことで、簡単に他の症状だと誤診してしまう」とも記している。
もちろん、食事内容に気をつけないといけないのは視力のためだけではない。米農務省は、全米の成人人口の約半数が、1つ以上の慢性疾患(糖尿病、肥満、心疾患等を含む)を抱えていると警鐘を鳴らしている。これら疾患は、往々にして貧しい食事と関係している。
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