中国企業が世界に保有する400億ドル分の資産を売却:過去10年で初の純減
中国のコングロマリットや投資グループは、これまで海外の企業、不動産、芸術品などを買いあさってきた。しかし、約10年前に中国企業が世界の舞台に躍り出て以来、初めて世界に保有する資産の売却額の合計が、購入額の合計を上回り、純減に転じたとファイナンシャル・タイムズ(FT)紙が報じた。
中国経済が減速する中、中国共産党は国内資本が海外に流出するのを抑え込もうとしている。海外資産の売却金額が購入を上回り純減に転じたというのは、国内資金が不足している表れでもある。しかし、中国政府は、いまだに2019年および2020年の経済成長が6%未満程度と発表している。
中国企業が海外に保有する資産を400億ドル分売却するというのは、これまで時点の金額であり、9月以降12月までの売却分は含まれていない。昨年1年間に中国企業が売却した海外資産は、合計350億ドルであった。
中国企業による米国内資産の売却金額は、今年これまでに260億ドルに急上昇している。昨年1年間、米国内で売却した資産の合計金額は80億ドルだった。米国資産を購入する中国企業に対しては、ますます審査が厳しくなっている。
Dealogicの2015年データによると、中国企業は1000億ドル分の海外資産を購入する一方で、海外の買い手に売却した海外資産はわずか100億ドルであった。しかし、FT紙がDealogicのデータを分析したところ、中国は少なくとも2009年以降、常に海外資産の購入金額の方が売却金額よりも多い純増であったことが明らかとなっている。
中国企業が保有する海外資産で今年売りに出されたものの多くは、2016年に購入されたものである。2016年は、中国企業による海外資産の購入金額がピークに達した年。この年、中国企業は2000億ドル以上の海外資産を購入しており、非常に高い負債レベルを抱え込んでいる。
「中国によるオフショア買収契約は漸増だった−−ただしそのうちのいくつかは企業論理が欠いた買収だった。そして現在、あまりに多額の借金により購入したもの、論理が欠けたもの、期待できる実際のシナジー効果が欠けた買収案件などが売却されている」とNatixisのアジア太平洋投資銀行部門のトップ、ラグ・ナライン氏は語った。
この中国企業による海外資産買収ブームで最も目立っていた2つの企業は、共産党政府の命により今では最も海外資産の売却を進めている企業になっている:
例えば、航空会社から金融会社まで持つ海航集団(HNAグループ)は、2016年にはヒルトンを、そして2017年にはドイツ銀行に対して数十億ドル規模の株式購入を行なったが、2017年後半に中国国内で資金の流動性危機が発生して以降、少なくとも200億ドル分の株式を売却している。また、今年初旬、海航集団はスイス航空のサービス企業であるGategroupをRRJ Capitalに14億ドルで売却している。(中略)
また複数の買収を行なっていた安邦保険集団(Anbang Insurance)は、2017年に政府の管理下に置かれ、同社が海外に保有していたポートフォリオ資産の多くを売却しており、複数のホテルを韓国のアセットマネジメント会社の未来アセットに58億ドルで先週、売却している。
中国人民銀行および他の経済当局がドル建ての準備金をかき集め、中国企業が抱えている負債を下げるために、数年前に中国共産党のトップが海外資産を売却する判断を通達している。しかし最近、地方の政府系金融企業が初めてデフォルトした。中国国内の金融機関の間では信用逼迫が起き始めており、最悪の事態を避けるために中国政府は必死でクレジットを市場に投入している。中国経済は砂上の楼閣のように一気に崩壊してしまう危険性が高まっているのは間違いない。
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