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S&PがWeWorkの与信格付けをB-に格下げ:同社ジャンク債の価格急落を受けて

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予定していたIPOが無期延期となり、CEOも辞任しトラブル続きのWeWork。同社に対してSoftBankが来年4月に予定していた追加投資を増額する交渉を行なっていることは昨日ここで報じた。しかし、WeWorkの運転資金が来年4月までもつのか不確実な状況となっている。

 

IPOが予定通り実現できないということは、目論んでいた数十億ドルという追加資金調達が実行できないだけでなく、数十億の与信枠(クレジット・ライン)を使い続けることができないことも意味している。現在、1日に数百万ドルの単位で運転資金が減り続けている中、WeWorkは来年春先までもつかどうか微妙な状況であり、「(WeWorkは)新たな資金調達を行うための株式市場および債券市場から締め出されることになるかもしれない」とブルームバーグ紙は報じている

 

つまり、最悪の場合、WeWorkは残り数ヶ月で破産宣告することになる可能性がある。

 

ブルームバーグ紙のクレア・ボストン記者は、シェア・オフィス企業であるWeWorkにとって、かつて燦然と輝いていたバラ色の将来計画が突如瓦解してしまい、IPOが無期延期となり、カリスマ性を誇っていたノイマンCEOが辞任した今の状況は非常に厳しいと分析する。ノイマン前CEOの跡を継いだ2人の共同CEOであるセバスチャン・ガニンガム氏とアーティー・ミンソン氏にとって、非常に難しい舵取りが迫られている。数週間前まで470億ドルの企業バリュエーションがついた、世界で最も価値ある未公開企業であった同社であるが、突如、1セントたりとも利益を上げたことなく、日々数百万ドルの運転資金が減り続けている現実に直面している。

 

株式市場で資金調達のめどが立たない中、銀行ローンと個人投資家からの出資という資金調達の手段は残されている。WeWorkはゴールドマン・サックスとJPMorganと新規の30億ドルのローンについて協議中であると報じられていた。しかし、それも無事にIPOを達成することが条件となっている。そうすると、セバスチャン・ガニンガム氏とアーティー・ミンソン氏の両CEOに残された手段は、WeWorkの運営責任を最大の出資者であるSoftBankに移譲することだとブルームバーグ紙は報じている。

 

SoftBankは来年4月に行う予定の追加投資を増額することを検討中であると報じられている。

 

SoftBankがWeWorkと追加投資の増額を交渉中とFTが報道

 

それが事実であるとすれば、今後SoftBankがWeWorkの経営権を握ることも十分考えられる。そうする以外にSoftBankにとっても残された選択肢はない状況まで追い詰められるかもしれない。

 

しかしSoftBankのビジョンファンドに与信枠を提供しているゴールドマン・サックスがビジョンファンドへの貸出リスクを削減していることが報じられているように、WeWorkの問題を長引かせることは、SoftBankの経営にもリスクとしてのしかかってくる。

 

ゴールドマン・サックスがSoftBankのビジョンファンドへの貸出リスクを削減

 

 

SoftBankの存続そのものが危ぶまれる局面になる前に、SoftBankに出資している株主やその他の投資家、そしてSoftBankの社員たちは、どのタイミングでWeWork投資の「損切り」を孫社長に要求するのだろうか。すでにその進言を行なっている側近の幹部がいるかもしれない。

 

アナリストらが行なっている見積もりによると、今年6月30日時点でWeWorkには25億ドルの運転資金(キャッシュ)があった。現在のビジネス状況が続けば、来年半ばまでに現金が枯渇する計算になるという。

 

これら数字は、ノイマンの一度も黒字化したことのない成長物語に終わりを突きつけることになる。フィッチ・レーティングスが今年8月にWeWorkの社債を格下げした際、同社がまだ進出していない世界175都市で125万席を新たに創出する計画を立てたことで、同社は収益性よりも成長性を優先したとコメントした。この125万席というのは、現在同社がシェアオフィスで提供している数の2倍以上となる。

 

S&Pグローバル・レーティングは、来年だけでWeWorkが45億ドルを投じて72万5000席を創出する計画だったと見積もっている。

 

しかし新たな資金調達の目処が立たない中、この計画を実行に移すことは不可能である。むしろ、倒産前の事業縮小策として、現在抱えている商業不動産へのエクスポージャーを清算し始める必要に迫られるのも時間の問題だ。

 

WeWorkのビジネス・モデルそのものが存続の危機に直面しているとブルームバーグ紙は指摘する

 

WeWorkは120億ドル以上の資金を調達し、オフィススペースを借り、それをリノベーションして顧客企業に貸している。しかしこの戦略は危険な状況にある。同社は、将来にわたって470億ドルの家賃支払い義務を抱えている。同社が賃貸契約しているビルの平均契約年数は15年である。しかしこれまでに賃貸契約をしているテナント企業がWeWorkへ支払いをコミットしている賃料からの売上はたった40億ドルであり、賃貸契約期間の平均は15ヶ月である。

 

ブルームバーグのインテリジェンス・アナリストのジェフリー・ラングバウム氏は、長期の賃貸契約は「経済が後退する局面には不安材料だ」と言い、WeWorkは「黒字化するための明確な行程」を見出す必要があると、水曜に発表した報告書に記している。

 

さらにブルームバーグは、WeWorkにとって株式市場からの資金調達の道が一時的にせよ閉ざされた今、再びジャンク債市場で資金調達できるかもしれないと指摘している。しかし、WeWorkが発行するジャンク債に、投資家は高い利回りを要求することが当然予想される。現在発行済みのWeWorkの高利回り債(ジャンク債)の利回りは約9.8%である。これはジャンク債の平均である約5.7%をはるかに上回る利回りである。水曜の取引では、WeWorkのジャンク債は6月以来最低価格で取引されている。

 

そして本日木曜、WeWorkの運転資金が急速に減っていることを受けてジャンク債の価格が下落し、S&PがWeWorkの与信格付けをB-に格下げしたと発表した:

 

この格下げは、We Company(WeWorkの親会社)が同社の積極的な成長戦略を支援できるだけの資金調達能力があるかに対する不確実性が高まったこと、そしてそれにより流動性に対するプレッシャーが強まったことを反映したものである。

 

これら不確実性は、We CompanyのIPOに対する市場の受容度が低いこと、また同社のガバナンスが基準以下であると当社が認識していることも一部理由となっている。ガバナンスに関連した複数の疑問と、S-1ファイリングを行なった翌週における一連の変更が、年末までにIPOを成功裏に達成する見込みを弱体化させた。これにより、代替となる資金源を獲得することが不確実となった。

 

当初のファイリングが行われてからガバナンスにはいくつかの改善が見られるが、そうした変更が投資家心理を上向かせるかは不透明である。当社は、We Companyがこの先12ヶ月間、設備投資のための資金ニーズと流動性条項(liquidity covenant )を満たすことに苦慮するであろうことを確実視している。

 

現時点で、2020年に行われる予定の17億ドル以外に、SoftBankからの追加資本投入のいかなる可能性についても当社は織り込んでいない。(15億ドルは4月が出資期限となっており、2億ドルは2020年後半が出資期限となっている。)これらの不確実性の背後にあるのは、米国において益々高まっている景気後退リスク、ブレグジットに対する懸念、そして減速する中国経済を含む困難な市場環境である。(ロンドンも中国も、ともにWe Companyにとっての主要マーケットである。)

 

ネガティブな見通しとなったのは、We Companyの流動性ポジションと資本へのアクセスが脆弱化していることに関係している不確実性を暗示している。さらに、企業のリーダーシップとガバナンスに対する精査が行われた結果、同社のIPOに対する印象が悪化したことも関係している。さらに、同社が追加の調達資金がない中で、設備投資のニーズを満たすために出資することに苦労するであろうというリスクや、企業のトップが交代したことに伴うリスク、そして同社の将来の方向性に対してますます不確実性が高まっているというリスクも反映している。

 

 

WeWorkに残された時間はますます少なくなっている。ここまで問題が大きくなってもなお、WeWorkへの出資に名乗りをあげる投資家はいるだろうか?たとえ新たな経営陣が同社のバランスシートを整理し将来的にIPOが行える準備が整ったとしても、「市場はこの会社に対して非常に懐疑的になっている」と、Diamond Hill Capital Managementでジャンク債の投資家であるジョン・マクレイン氏は語る。

 

たとえWeWorkが失敗しても、それで全てが終わりではない。次に市場はSoftBankに何が起きるのかを注視している。

 

この先数ヶ月間、ノイマン前CEOが辞任したWeWorkがどのように企業運営されるのか、そしてSoftBankがどのような采配を振るうのか、市場が注目している。

 

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