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経済不況の兆候を無視して株価が上昇を続ける要因:企業による自社株買いが史上最大レベルに

Goldman Sacks

今週、ゴールドマンサックスの主任株式ストラテジストであるデービッド・コスティン氏がCNBCに出演し、米中貿易戦争という不安定材料が重くのしかかる市場において、今後の展望についてコメントした。その中で、株式市場がいまだに上昇を続けている要因は、過去10年、量的緩和を行ってきた連銀(Fed)の財政政策と、企業による自社株買いが大きいと指摘する。しかし、この株価を押し上げてきた要因の一つである自社株買いの勢いは、弱まってきていると警鐘を鳴らしている。

 

この動画の1分40秒からコスティン氏は自社株買いのトレンドについて語っている:

 

Tariffs and trade are the number one topic in my conversations: David Kostin from CNBC.

 

しかしコスティン氏の発言を真っ向から否定するデータが、Bank of America(通称バンカメ)から発表されている。バンカメのジル・カーリー・ホール氏は、最新の報告書の中で「企業による自社株買いに関する週間データは、2009年以降記録されている中で最大レベルにまで加速している」と記している。特にIT企業による自社株買いが、このトレンドを5週連続で主導していると報告している。バンカメは、すでに今年初め、IT企業が自社株買いを強力に実施することは各社にとってメリットになるだろうと予測していた。

 

自社株買いの勢いが急速に高まっている結果、年初来で自社株買いが行われた総額は、前年比25%増となっている。第3四半期から今週までに行われた自社株買いの総額は、前年比39%増であり、通常の季節周期性よりも高い数値となっている。実際、通常であれば9月後半にかけて自社株買いの勢いは低下し、その後の決算発表シーズンに至るまでの6週間で再び上昇に転じる。

 

つまり、CNBCに出演したゴールドマンサックスのコスティン氏が「自社株買いの勢いは弱まってきている」とは全く逆のことが市場では起きている。

 

それではなぜ、自社株買いが過去最大レベルにまで高まっているのだろうか?株価が史上最高値をつけている強気市場で、自社株を大量に購入することは非合理な企業行動のように見える。株価が高値のところで買い戻しているのだから。しかし企業は、裏の意図なくそんなことをするほど愚かではない。実際に企業による自社株買いの原資を提供しているのは、これら企業が発行する社債を購入している投資家だ。今年9月の1ヶ月間で世界の企業が発行した社債が、総額4340億ドルと過去最大を記録した。これは2017年3月に、当時の史上最高額を記録した時より50億ドルも記録を更新している。

 

これら社債を発行することで得られた調達資金を、企業は自社株買いの原資に当てているのだ。二つのPMI購買担当者景況指数(米国のISM製造業景気指数とISM非製造業景気指数)は、米国経済が不況に向かっていることを示しているにも関わらず、今週、株価が上昇している理由はこの史上最大レベルの自社株買いのためである。

 

次に疑問となるのは、企業が闇雲に(株価に関係なく)自社株買いを行なっている中、誰が株を売っているのかということだ。その答えは、自社株買いを行なっている企業のCEOやCFO、役員など内部の人間たちだ。ベンチャーキャピタル(VC)やアーリーステージで株式投資を行なった投資家達もこの売り手に含まれている。

 

彼らインサイダーが9月中旬までに売却した株式の合計は、190億ドルにのぼる。これを年率換算すると、260億ドル規模となる。これは、2000年以降、企業内役員や投資家などのインサイダーが行なった自社株の売却金額として過去最大である。2000年に最初のドットコム・バブルが最高潮に達したとき、IT企業の幹部達は370億ドル分の自社株を売却していた。2019年の自社株売却金額は、2017年に記録した250億ドルを超えると見込まれており、これは金融危機以降、最高額である。

 

政治の世界ではフェイク・ニュースが横行していることが世間でも知れ渡るようになっているが、金融ニュースの世界でも、ゴールドマンサックスの主任株式ストラテジストのようにフェイク・ニュースを触れ回る人たちがいることを一般投資家達は心しておかなければいけない。

 

Screenshot via CNBC

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