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モルガン・スタンレーのストラテジスト「先週金曜の株価が最高値。この先は売りが続く」と予測

Michael Wilson

今週月曜、モルガン・スタンレー銀行の株式ストラテジストであるマイケル・ウィルソン氏が、新たな株式市場の予報を発表した。相場の弱気予測(bearish)で知られるウィルソン氏は、先週、株価を急騰させるきっかけとなった出来事を反芻しながら、楽観論者に冷や水をかけるようなネガティブ予測を行っている。

 

その出来事とは、当然、トランプ政権が金曜に発表した「第1段階(フェーズ1)」と呼ばれる米中貿易協議の合意についてだ。「(発表内容に)私たちはがっかりさせられたということは、読者諸君にとってほとんど驚きではないだろう」とウィルソン氏は言う。

 

この第1段階の貿易協議の合意については、週末にかけて多くの批判が行われているが、ウィルソン氏も同様に、「結局、現在適用されている関税を大幅に引き下げずして、どのように『ミニ・ディール(小さな合意)』が経済と収益という両方の成長曲線を、現在のマイナス状況から上向かせることができるのか私たちにはわからない」と批判している。ただし、ウィルソン氏は、「ファンダメンタルズ分析を重視する投資家達は、貿易協議が合意に至った場合の上げ相場に乗り遅れることを心配するあまり、今でも株を売れないでいる」という見解を以前から抱いており、現在でもその立場を崩していない。

 

さらにウィルソン氏は、先週の株価の動きと、2018年12月1日以降の株価の動きを比較している。先週は、「2日間にわたって世界の株価を極端に上昇させ、債券が売られた」。これと合わせて、「株式市場における周期性がより株価を主導するようになってきていることが顕著となった」。一方、2018年12月1日に行われた休戦協定では、当初、市場には楽観論が高まったが、それはすぐに悲観論へと変わり、リスク資産では価格が急激に下落した。

 

先週金曜の株価の動きは、前回の休戦協定、つまり2018年12月1日にアルゼンチンで行われたG20サミットの会場で発表された休戦協定の時に経験したことと驚くほど類似している。その発表が行われた後の最初の取引日である12月3日、株式市場が開けると株価は大きく上げて取引が始まった。しかし取引日が終わるにつれて株価は下落した。この後に起きたことは、以下のグラフが示す通りである。

 

 

さらにウィルソン氏は次のように分析している:

 

(私たちは)このいわゆる合意について多くの楽観論を聞いてきたが、前回も同じようなことを聞いていた。当時、在庫が高く積み上がり、利幅に対する継続した圧力があることを考えると、我々はさらなる追加関税を一時停止することが、実際には世界経済における活動の減退をもたらすのではないかと議論していた。現在も、それと同じことを私たちは議論している。

 

今のところ、市場は2019年10月と2018年12月の類似性を無視している。しかしウィルソン氏は、先週金曜、彼のクライアントと意見交換した際、話題のほとんどが、この新たに株価を主導するようになっている要因が継続するのかということだったと語っている。彼のクライアントの多くは、株式市場のそのような交代局面に対応するポジショニングを行っていない。実際、表面下で起きている交代局面により、アクティブ運用を行っている資産運用会社のほとんどが損失を被る結果となっている。というのも、アクティブ運用を行っている資産運用会社の多くが、そのような緊張がほぐれた場合に応じたポジショニングを取っていなかったためである。

 

ウィルソン氏は次のように説明している:

 

金曜、株式市場は大幅に反発したが、それはアクティブ運用でもパッシブ運用でも、ほとんどの株式ポートフォリオの相対的パフォーマンスに対して実際には損害をもたらすような種類の反発だった。値動きを文脈に置いて見てみると、MSCI全世界株式インデックス(All Country World Index)は1.37%上昇した一方、過剰評価で投資超過のS&P 500は1.09%しか上昇しなかった。さらに掘り下げて米国市場を分析すると、値上がりを期待する「強気な勢い(ロング・モメンタム)」の米国株は、「弱気な勢い(ショート・モメンタム)」の米国株のパフォーマンスを 2.68%も下回った。これは9月に起きた勢い(モメンタム)の破綻を連想させる。このようなパターンが続けば、多くのアクティブおよびパッシブ運用を行っている株式ストラテジストにとって随分辛い状況となる。これは、最終的にリスクをいとわない投資に対して重しとなると我々は見ている。

 

株式市場が強気相場になり株価が上昇する一方で、ほとんどのプロの投資家たちが運用パフォーマンスを上げることに苦しんでいるというのは皮肉である。

 

* * *

 

ウィルソン氏は、米中間の貿易協議が暫定的にでも休戦合意に至ったことは経済にとってそれほどプラスではないと考えている。というのも、「過去1年間に起きている経済停滞を引き起こしている主な要因は、貿易戦争である」と同氏は考えていないためである。ウィルソン氏は、世界経済が減速している背景には、3つの鍵となる要因があると分析している。その3つの要因とは、設備投資、在庫、そして雇用(人件費)である。

 

企業や投資家たちは、今年のビジネス成長が期待を裏切る結果になった原因として、米中間の貿易交渉で緊張が高まっていることを言い訳に使っているとウィルソン氏は見ている。その結果、現在、引き続きビジネス・サイクルを悪化させている要因にほとんど注意が払われていない。米中貿易交渉の行き着く先が予測できないため、多くの企業がそれを理由にして、従業員を通常のビジネス・サイクルよりも長く雇用し続けている。というのも、内容が充実した貿易協定の合意に至った場合には経済成長が大きく反発する可能性があり、そのビジネス機会を逸することを恐れているためである。株式市場が反発する場合を考えるあまり、株を売れず保有し続けているファンダメンタルズ分析を重視する投資家達と似た状況が企業でも起きている。

 

ウィルソン氏の弱気な市場予測はさらに続く:

 

金曜に行われた暫定合意では、今年我々が経験している減速する経済成長の軌道を変えるために必要な回復には至らず、失敗に終わるだろう。

 

しかし悪い予測ばかりではない。2018年とは異なり、今回はネガティブ要因を相殺するものがある。それは中央銀行による金融緩和策だ。しかし、それがあっても、企業収益がさらに落ち込んでいることなどから、企業が利益率を守るために残された手段は一つしかないとウィルソン氏は言う。それは人件費の削減である。

 

これが市場に意味することは何か?楽観論が徐々に消えゆく中、「先週金曜の株価はこの先数週間か1ヶ月という短期における最高値となる見込みであり、昨年12月に経験した状況と類似している。ただし、金利が当時よりも低く金融緩和策が取られていることを考えると、(株価の下落は)昨年ほど劇的なものにはならないだろう」とウィルソン氏は予測している。

 

マイケル・ウィルソン氏の市場解説については、以下のポッド・キャストで聴くことができる。

https://www.morganstanley.com/ideas/thoughts-on-the-market-wilson

 

 

Photo via CNBC

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